玉木雄一郎、松本人志、三浦瑠麗……。ドツボにはまった連中にとって、コンプライアンスとは何を意味するのか? 瑠麗曰く「細かな事実に関しても、人間は記憶が修正されがちです」。

もはや自虐ネタしか残されていないのか。新刊『自民党の大罪』(祥伝社新書)で平成元年以降、30年以上かけて、自民党が腐っていった過程を描写した適菜収氏の「だから何度も言ったのに」第75回。





 



■やる気、元気、タマキン!



 私は当初、石破茂が自民党総裁に選ばれるとは思っていなかった。日米地位協定の改定に言及し、自民党のいかがわしい改憲案を批判してきた石破には、敵が多すぎるだろうと。それならば、アメリカにとっては使いやすい裏に菅義偉がいる小泉進次郎になるのではないかと。



 実際、総裁就任後、石破は身動きが取れなくなっているようにも見える。総裁選で言っていたことも、撤回したのか撤回させられたのか、手の平返しの数々。



 健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一本化する時期を見直す可能性について「あるだろう」と発言していたが、「法に定められたスケジュールで進めていく」と転換。「選択的夫婦別姓制度」の導入については、「やらない理由がわからない」から「必要な検討を行っていきたい」にトーンダウンした。



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 では石破が言及することが多い憲法と防衛問題についてはどうか。



 石破は著書『保守政治家 わが政策、わが天命』で、戦力不保持をうたった9条2項を削除した上で、現在の自衛隊を「国防軍」に改め憲法に明記すべきと述べている。



一方、党内(特に安倍晋三周辺一味)は、9条1項(戦争放棄)、2項(戦力の不保持と交戦権の否認)を残しながら、3項を新たに設け、自衛隊の存在を明記すると支離滅裂なことを言ってきた。

戦力の不保持をうたった後に戦力の保持を書き込む。整合性のカケラもない。アホにも限度があるが、これでは憲法は確実に空洞化する。



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 自民党は総選挙で大敗。「改憲勢力」の議席数は衆院の3分の2の議席を下回った。しかも、総選挙の結果を受けた委員長人事で、枝野幸男が憲法審査会長になった。石破がこの流れを想定していたとは思えないが、結果的に日本は破局を逃れることができた。自民党内のカルト勢力や裏金議員の力も少しずつ落ちてきた。



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 石破が早急にやらなければならないのは、「自民党内のいかれた勢力による改憲」の阻止と、国会における憲法論議である。





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 改憲勢力と言えば、怪しい動きを見せてきた国民民主党の玉木雄一郎。元グラドルとの不倫が発覚し、「タマキのタマキンが暴走」と騒ぎになった。「政党の品質保証」という過去のブログ記事も、味わい深い。

以下、引用する。



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「政党とは何か。」



同じ政治理念、政策を共有する集団ということでしょうが、私は、それ以前に、一定のクオリティ(品質)を満たした人の集団であるべきだと思います。



これは、弁護士や会計士などのように一定の資格試験をクリアーすることを条件にするというよりも、



「絶対に、不正をしない。」



「絶対に、不倫をしない。」



などというように、そもそも政治家として有権者信頼に耐えうる集団であることを、自信をもって約束できる集団であるべきだと思います。



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 素晴らしい。存在そのものがコント。



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 総裁選の結果を受け、統一教会系の「世界日報」は、「玉木氏は若者を一層覚醒させよ」などと書いていた。「国民民主党は20~30代の得票率トップを獲得。政治リテラシー・国民の政治参加の意欲向上に寄与できるか注目だ」とのこと。今回の件でうっかり投票してしまった若者も少しは覚醒すると思う。





■飛んで火に入る三浦瑠麗



 玉木だけではない。危機管理ができない連中の化けの皮がはがれてきた。「ダウンタウン」の松本人志は、「週刊文春」に掲載された、女性に性的な行為を強要したとする記事で名誉を毀損されたとして、発行元の文藝春秋などに対し5億5000万円の損害賠償や記事の訂正による名誉回復を求める裁判を起こしていたが、勝ち目がないと思ったのか、取り下げて、復帰すると言い出した。

意味不明。「直接の物的証拠ないと確認」(松本)したというなら、裁判を続ければいいだけの話。



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 元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は松本の異常性を指摘する(「ENCOUNT」)。



 《裁判が始まると、松本氏側は「告発女性の身元を明かせ」と繰り返し要求した。3月に提出された主張書面では、女性の「氏名」「住所」「生年月日」、さらには「携帯電話番号」「LINEアカウント」「容姿が分かる写真」まで明かすように要求。文春側がこれに反発して裁判は空転した》



 《その後、さらなる松本氏側の行動として報じられたのが、告発女性への「出廷妨害工作」だった。7月11日発売の週刊文春は、松本氏側の弁護士が探偵を使って性被害を訴えている女性らを尾行。さらに女性側の弁護士に対して「女性を出廷させないように」と要求し、拒否されると「女性との不倫の記事を止めることができる」と脅迫まがいの発言をしたなどと報じられた》



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 弁護士の伊藤和子は《筆者も弁護士として申し上げると、通常、勝訴の見込みがある事件ではこのような終結はしません。早々に撤退し、ダメージコントロールをはかったように見受けられました》と述べている。



 《週刊文春との訴訟が決着したからと言って、問題は解決したとは言えないでしょう。訴訟は松本氏側が一方的に文春を訴えたもので、文春が訴え取り下げに同意したからと言って、被害告発があった事実がなくなるわけではありません。いわば、問題は訴訟前の振出しに戻っただけであり、性加害報道を受けて、当人、所属事務所、関連企業がどのような対応をすべきなのか、と言う点は、これからの課題として残ります。

むしろ、問題をあいまいにすることは許されないというべきではないでしょうか》



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弁護士の渡辺輝人は《松本人志が対文春の訴訟取り下げ。文春側に立証責任があるのに、松本人志側が「和解(話し合いによる解決)にすら持ち込めなかった」というのが妥当な評価だろう。この人物を二度とマスコミに出演させるべきではない》とSNSに投稿。



 普通に考えれば誰もがそう思うよね。しかし、思考回路がおかしい人たちは、問題が解決したと思い込み、芸能界復帰などと言い出している。



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 新しい情報も出てきた。元アイドルの遠藤舞が「直の友人が松本氏らからホテルで性被害を受けています」とSNSに投稿。さらに遠藤は「私も女性であり、セクハラや性被害を受けてきましたが美人局や冤罪は許さないという考えの持ち主です」と述べていた。



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 すでに何をやっていた人なのかもわからなくなり、「あの人は今」状態の三浦瑠麗が、この件について、《裁判が終結してよかったと思います。お疲れさまでした。松本さんがやりたかったお笑いを、そして今後のご活動を心より応援しております》とコメント。懲りないねえ。



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 笑ったのが瑠麗が吉本興業でコンプライアンス研修を担当したという話。「だからこそ、自分は大丈夫だという思い込みは、危険です」だって。瑠麗も「自分は大丈夫」と思い込んでいたんだろうね。どう考えても、「コンプラ研修」を受けなければならない側。



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 瑠麗の夫(当時)で投資会社「トライベイキャピタル」の代表の三浦清志は、業務上横領の疑いで逮捕されたが、瑠麗は「私としてはまったく夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ない」と関与を否定。しかし、「FRIDAY」がトライベイの内部文書を入手し、瑠麗が代表のシンクタンク山猫総合研究所との間でコンサル契約が結ばれていたことを明らかにした。



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 「大喪の礼」を読めずに安倍の国葬を語り、「ワシントン・ポスト」と「ワシントン・タイムズ」を間違えながら統一教会をウルトラ擁護してきた瑠麗。コンプライアンスが徹底される社会だったら、真っ先に消える存在だよね。





 文:適菜収



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