自民党“裏票田崩壊”の決定的証拠 ーー暴排条例後の裏票田が参...の画像はこちら >>



    ■序章

     日本の保守政治を半世紀にわたり支えてきた巨大な岩盤が、音を立てて崩れ始めている。



     その震源地は、公共事業と娯楽産業を結ぶ“見えざるネットワーク”ーー長年、自民党の票田として機能してきた非公式経済圏だ。



     今回明らかになったのは、2025年参院選で起きた衝撃的な事実だ。



     組織犯罪プロキシ(OCP)ーーつまり暴排条例の影響を色濃く受ける地域の指標ーーと自民党得票率との正の相関は、統計的に有意な形で減少し続けている。一方で、同じOCPと参政党得票率の相関は、事前予測をも凌駕する“異常値”を記録。



     この数字は、単なる票の移動ではない。



     保守層の政治的DNAそのものが、参政党の右派ポピュリズムへと書き換えられつつあることを意味している。





    ■“安定”が“裏切り”に変わる瞬間

     かつて自民党が握っていたのは、道路や橋といった目に見える公共事業と、夜のネオン街に広がる目に見えない経済の二重支配だった。だが、長年の暴排条例がその非公式ネットワークを骨抜きにし、さらにインボイス制度や外国人労働者受け入れといったグローバル化政策、そこにコロナ対策が追い打ちをかけた。



     その結果、地方の“古参支持層”は政治的孤児となり、そこに参政党が鋭く入り込んだのだ。





    ■選挙データが突きつける“保守再編の現場”

     2025年参院選の公式市区町村別開票結果をもとに重回帰分析を再実行したところ、OCPと参政党の結びつきは予測以上の急上昇を見せた。もはやこれは偶然ではない。



     数十年単位で維持されてきた保守層の忠誠が、たった数年で塗り替えられたという政治史的事件なのだ。





    ■今後の日本保守政治は“分裂国家”化へ

     この流れが止まらなければ、次の国政選挙では保守票は完全に二分され、自民党は“与党ブランド”を失いかねない。

    参政党の掲げるナショナリズムが地方の現場で根を張れば、中央政界は右派同士の内戦状態へ突入する可能性すらある。



     もはやこれは、単なる政党間競争ではない。保守陣営の内臓を食い破る“自己崩壊”の序曲である。





    第2章 分析の理論的枠組みと方法論— “票田の地殻変動”を数値で暴く —



    ■理論的爆心地:インサイダーの凋落と“裏切られた”保守層

     今回の分析の背骨にあるのは、リンベックとスノーワーが提唱した「インサイダー・アウトサイダー理論」の政治的応用だ。



     長年、自民党は地方の建設業界や娯楽産業を「インサイダー」として抱き込み、公共事業という蜜を滴らせ続けてきた。だが、暴力団対策法の強化とグローバル化の冷たい波が、その蜜壺を叩き割った。



     かつての“特権階級”は一夜にして「アウトサイダー」へと転落。



     政治的孤児となった彼らの前に、参政党がナショナリズムという旗を掲げて現れた瞬間ーーその吸引力は、単なる政策論を超えたアイデンティティの奪還運動として機能した。





    ■データの狙撃精度

     本研究では、日本全国の全1,741市区町村を対象に、2022年参院選・2024年衆院選・2025年参院選の3時点での票の動きを追跡する。



     中心に据える武器は、組織犯罪プロキシ(OCP)ーー暴排条例後もなお産業構造に刻まれた“裏のDNA”をあぶり出す指標だ。



     OCPは、経済センサス2021のデータから「建設業」+「娯楽業」の従業者割合を特化係数として算出し、標準化したもの。犯罪そのものを測るのではないが、かつて非公式経済の中枢にいた地域の残影を精密に描き出す。



     さらに、所得水準・人口密度・高齢化率・財政力といった社会経済指標を制御変数として投入し、“言い逃れ”の余地を徹底的に潰した。





    第3章 分析結果:保守票“離反”の定量的証拠(2025年改訂版)— 数字が暴く“牙城崩壊”の加速度 —



    ■統計が告げる“参政党ショック”

     2025年の実測データを突きつけると、政治地図の塗り替えが予想以上のスピードで進行していることが明らかになった。



     参政党の市区町村平均得票率は、2022年の3.8%から2024年の7.5%へ倍増。そして2025年には12.1%へと跳ね上がり、最大値は31.5%に達した。これは、単なる勢いではなく、地方票田の一部が丸ごと陥落した証拠である。



     一方、自民党の平均得票率は、2022年の34.5%から2025年には28.2%まで下落。牙城はまだ残るが、明らかに侵食が始まっている。



    (表1)







    (表2)







     自民党:OCPとの正の相関はまだ残るが、係数は1.15 → 0.85 → 0.62と確実に低下。かつての票田は、静かに離反を始めている。



     参政党:2022年の0.45は、2024年に0.95と倍増。そして2025年には1.58という、予測をはるかに超える“異常値”を叩き出した。これはOCP票田の重心が完全に移動しつつある証拠だ。





    第4章 考察:確定した政治的“離婚劇”の力学— 保守陣営の中枢が裂ける瞬間 —



    ■自民党の裏票田が“略奪の草原”に変わった日

     第3章の計量分析は、もはや机上の推測ではない。OCPが示す票田で、有権者の忠誠が構造的にシフトしたことを突きつける決定的証拠だ。



     かつて自民党の“金城湯池”とされた地域は、今や参政党など右派ポピュリストにとっての最も効率的な狩場へと変貌した。ここはもはや守るべき砦ではなく、奪い取るべき肥沃な草原である。この転換は、次の国政選挙に向けて戦略・資源配分の全面的な再設計を迫るだろう。





    ■数字の背後に潜む“置き去りの民”

     OCPがなぜここまで強く機能するのか——それは単なる産業構造ではない。その背後には、長年のクライアンテリズムの中で形成された社会的アイデンティティが横たわっている。



     建設業者、娯楽産業の熟練労働者、地域商店主——彼らは自民党の利益誘導ネットワークの恩恵を享受してきたが、近年のグローバル化政策、インボイス制度、外国人労働者受け入れ拡大、コロナ対策の四重打撃で経済的にも文化的にも切り捨てられた。



     その空白に参政党が入り込み、「日本人ファースト」のナショナリズム、反メディア・反政府の煽動、零細事業者への経済ポピュリズムを武器に、不満と疎外感を一気に政治的支持へ転換させたのである。





    ■保守陣営の“死の選択”

     自民党は今、二つの地獄の門の前に立たされている。



     失った基盤を奪還すべく右傾化するが、都市部の無党派や穏健層を失うリスクを背負う道。



     票田を参政党に明け渡し、新たな連合を構築する道。





     いずれにせよ、保守陣営は内部競争という名の内戦に突入する。



     一方の参政党は、もはや一過性の抗議政党ではない。地理的に集中した強固な基盤を築き、日本の右派政治を多極化させる永久プレーヤーとして舞台に居座る可能性が高い。





    ■限界と次の一手

     本分析は相関を示すにとどまり、因果の断定はしない。しかし、すでに高OCPスコア地域という“戦場マップ”は完成している。



     次のフェーズは明確だ。現場に赴き、建設業者、商店主、政治活動家に話を聞き、数字に血肉を与えることだ。それによって、この政治地殻変動の全貌が初めて立体的に浮かび上がるだろう。





    第5章 結論:不可逆的な地殻変動



     2025年参院選の公式データが証明したのは、日本の保守政治がすでに不可逆の分裂フェーズに入ったという事実だ。



     OCPで代理される伝統的票田は、自民党から参政党へと有意かつ加速的に移動。これは単なる“票の移動”ではなく、旧来の利益誘導システムから疎外された人々が、新しい政治的アイデンティティを求めてポピュリズムに流れ込む、構造的な歴史的転換点だ。



     この分裂は、一時的な現象では終わらない。

    今後の選挙戦、そして政策論争のルールそのものを塗り替える。



     日本はすでに、保守再編という名の政治大地震の震央に立っているのである。





    文:林直人

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