田代まさしの事件で思い出す、三田佳子次男のこと。クスリにハマる有名人に「やすらぎの郷」はあるか
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 田代まさしが逮捕された。

クスリ絡みでは、4回目の逮捕だ。ほんの3ヶ月前には「バリバラ」(Eテレ)の「教えてマーシー先生」と題された回に出演、薬物依存の怖さを語っていた。今回の件で、それをまた身をもって示したことになる。

 その1年前、同様にその怖さを知らしめたのが高橋祐也、いわゆる三田佳子次男である。最近、脅迫の容疑でも逮捕されたが、クスリでの逮捕はやはり計4回。田代と違うのは初犯が18歳と早く、そこには二世タレントという境遇が関係していると考えられるところだ。

 何せ、母親の三田佳子はバブル期の日本で長者番付「俳・テレビタレント」部門のトップに君臨し続けた人。高校生の次男にも毎月50万円もの小遣いを与えるなど、常人離れした子育てがその非行を招いたと批判された。

 とはいえ、彼女が子供とのふれあいをしていなかったわけではない。91年に「週刊明星」でインタビューした際、こんな話をしてくれたものだ。

「最近ね、下のチビが将棋を始めたんですよ。いえ、べつに『チビ』って呼んでるわけじゃないですけどね(笑)。

名前を出すのもアレかなと思って。で、その子が『ママ、将棋できるか』って言うから、困ったな、ああいうの好きじゃないんだよなーと思いつつ、でもいいや、コミュニケーションだからって、相手になってるんですけど、駒の動きがよくわかんないでしょ」

 当時、次男は11歳。「ママはもう、天才的にダメだね」と笑っていたというが、この7年後、不祥事で名前が出ることになるわけだ。

 ただ、この取材で何より印象的だったのは、三田本人の多忙ぶりである。インタビューは2時間の予定だったが、前の仕事が押したとかで、1時間半くらい待たされた。しかも、到着後はメイクや撮影があり、実質15分ほどで5頁もの記事を作るハメに。

それでも、不思議と腹が立たなかったのは、いかにも大女優然とした彼女の天然キャラのおかげだが、やや心配にもなった。すなわち、こういうちょっと抜けた感じの人がこんなに多忙で、家庭のことなどちゃんとやっていけるのだろうか、と。

 それゆえ、次男の不祥事にはむしろ、やっぱりなという感想を抱かされたものだ。NHKの要職を務めた、三田の夫ともども、子育てについては行き届かないところもあったのだろう。実際、祖父母や家政婦に任せていた部分も大きかったようだ。

 ちなみに、親子関係のカウンセラーによれば、有名人の二世の場合、幼少期のコミュニケーション不足が生じやすく、親が「家にいられない罪悪感」を「お金で償う」ような姿勢をとりがちだという。

それが子供の「何かに依存しやすい」性格につながるのだそうで、三田と次男はその典型にも見える。たまに将棋をやる程度では、不足を補えなかったのかもしれない。

 では、高橋や田代のような人が回復するのは難しいのだろうか。精神科医の斎藤環は、田代がクスリで捕まる間隔が徐々に長くなってきていることから「治療は成果を挙げている。次はやめられるかもね」とツイートした。じつは、高橋の捕まる間隔についても同じことがいえる。

そういう意味で、治療や服役には一定の効果がありそうだ。要はいかに、クスリをやれる環境から隔離するか、だろう。

 そのあたりを最近、フィクションのかたちで浮き彫りにしたのが、ドラマ「やすらぎの刻~道」である。世間から隔絶された場所で、かつて活躍した芸能人が集う老人ホーム・やすらぎの郷が、クスリで失敗した元・人気歌舞伎役者の若者を引き取り、更生させるエピソードが紹介されたのだ。

 このホームで働くスタッフも前科者ばかりで、彼らは若者にクスリと過去の栄光を忘れさせるべく、恋人を含めた世間との連絡を遮断させたうえで徹底的にしごく。ホームの住人で元・女優の祖母が小遣いを内緒で与えようとしても許さず、若者も素直にその方針に従っていくのである。

 折りしも、高橋が脅迫容疑で逮捕された時期と重なっていて、現実との違いにしみじみとさせられた。そういえば、このシリーズの前作「やすらぎの郷」に弁護士役で出演していた橋爪遼も一昨年、覚醒剤で逮捕されている。ちょうどドラマが放送中だったため、収録済みのシーンがカットされるなどした。

 橋爪にせよ、高橋や田代にせよ、このホームみたいな場や体制があれば、クスリを断ちやすくなるだろうが、これはあくまでドラマの話だ。一度クスリにハマった人がそこから抜け出すには、現実はもっと苛酷というほかない。

 そんななか、三田は「卒母」を宣言。次男が来月、40歳になることを思えば、それもわかるし、批判の声も少ない。女優としては映画「人間失格」で見せた、女とクスリで身を持ち崩した主人公を最後に癒し甘えさせる老女の役が絶品だった。見事に、スキャンダルを肥やしにしているのだ。

 橋爪の父・橋爪功も現在「やすらぎの刻~道」の主役のひとりを元気いっぱいに演じている。それぞれ、自分のやれることを頑張るしかないのである。

 そして今回、田代に対しては思いのほか、世間は優しい気がする。たとえば、傍聴人ライターの高橋ユキは「立ち直りの代表者」として扱われる「プレッシャー」を指摘。それでなくとも、一度知った魅惑を毎日我慢し続けるのは大変な苦行のはずだ。

 クスリに限らず、自分のなかの依存的なものをなだめながら生きていくのは容易ではない。人は良くも悪くも、快楽を死ぬまで追い求める生き物なのだから。