『シャーロック』
関西テレビ/毎週月曜 よる9時
“犯罪捜査コンサルタントの誉獅子雄(ディーン・フジオカ)と、精神科医の若宮潤一(岩田剛典/J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)の二人が、タッグを組み、様々な殺人事件を解決していく。あくまでも警察組織の人間ではない、でも類まれな人間観察力を持つ誉が次々に事件を解決していく様子は爽快そのもの。”
いいミステリードラマに出会うのは難しいとしみじみ思う。殺人事件を扱うことになるので、ある程度の慎重さは求められるミステリー。そのうえ、大概の作品において変わり者だと評される主人公を探すのも一苦労。笑いと神妙さのミックスという方程式はなかなか解きづらい。ただこの秋のドラマでは、先述の条件をクリアした作品『シャーロック』を毎週楽しみにして観ていた。久々に出会うことができた、気の合うミステリーの登場だ。
何が面白いかといえば、私はディーン・フジオカさんの存在に尽きる。この作品の原作は、世界中に数知れないファンを持つ『シャーロック・ホームズ』。
その揶揄と称賛の波の中にするっと溶け込んでいるのが、ディーンさん。先週放送の第9話にも、その(良い意味で)素っ頓狂ぶりが現れていた。
舞台はとあるレストランで起きた殺人事件。誉たち4人が初めて店を訪れたその日、二番手のシェフが殺されていた。なんとかその事実を隠そうと、シェフらが営業を続けるものの、違和感は誉にバレてしまう。本日のメニューの用紙が不自然に二枚重ねになっていた、パティシエがじゃがいもの皮をむいていた……と、重箱の隅を突きまくる推理を重ねていく。
「俺はこの店がオープンをした直後に何か異常事態があったと考える。おそらく、この店の終焉を予感させるような事件だ」
まず昨今のドラマでも見かけない強引な物語がドラマの中に流れてゆく。そしてこの放送では、レストランから舞台が動くことはなかった。それでもディーンさんによる、あの威風堂々とした雰囲気の演技が全てを解決していた。
ディーンさんが古典文学を演じるのはこれが3作品めにあたる。私が2018年で一番面白かったと原稿を書かせてもらった『モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-(略称・モンクリ)』。そして『レ・ミゼラブル 終わりなき旅路』(ともにフジテレビ系)。そして今作。特にそのスタートを切った『モンクリ』は原作の映像化や、分かりづらい設定にスタート前からモヤった。
それがスタートすると、奇怪なストーリーに惹かれていく。結婚式の途中、冤罪により拷問を受けた主人公の柴門暖(ディーン)。なんとか地獄を脱出して、日本に戻り、別人となって復讐劇を開始するという、またこれも強引さが感じられる展開だった。その強引さを訴求力に変換させていたのがディーンさんだ。
彼は私がバラエティ番組で見る限り、キンプリの平野さんと互角勝負の天然さんである。
確か昔『櫻井・有吉 THE夜会』(TBS系)でのこと。ご本人希望の火鍋を食べるために食レポロケに行ったのだが、本人のこだわりが強くなかなか理想の火鍋に辿りつかない。普通なら自分のために用意してくれた料理だと多少不味くても、ほくほく食べるところを彼は一切妥協しない。
「これ(つけダレ)の中に入ってるソース、(調味料)分けて持ってこられる?」
と言い、店の中でまさかのオリジナルソースを調合する。ただご本人は至っては真剣そのもの。この姿から私のディーンさんに対する見解が変わった。いや、好きになった。
そして『モンクリ』から約一年を経て、彼は名探偵となって帰ってきてくれた。番宣での純真無垢な姿も、周囲を巻き込んでいく演技も見ていて飽きない。さらにドラマの主題歌も彼が歌っていることも、ここまでくると納得なのである。普通、俳優さんが主題歌を歌うと滑ることが多い。
今夜放送の『シャーロック』は最終回へ近づいていく。誉が、単純な事件の連打に飽き始めているかもしれない。ディーンさんの演技の波に揺られていられるのは、あとわずか。