皆さんこんにちは! 茨城県でヨガのインストラクターの傍ら、新米猟師をしているNozomiです! 私の拙い文章を通して少しでも“狩猟”に興味のある方、すでに“狩猟”に携わっている方、そして何より“いのち”と向き合っている方のお役に立てれば幸いです。
さて前回は、ジビエを食べる為に知って頂きたいことや、美味しい食べ方、各部位調理法や伝統レシピについお伝えさせて頂きましたね。
2017年、千葉県にて一人の男性が銃刀法違反の容疑で現行犯逮捕されました。なんと、彼のポケット入っていたのは、刃体8.4センチメートルの“カッターナイフ”でした。えっ! カッターで!? 狩猟をしている方はもちろん、狩猟とは程遠い世界に住んでいる貴方!! 貴方のカバンやペンケースの中に刃物は入っていませんか? この知識知らないと貴方も捕まってしまうかもしれません。
狩猟をするにあたって必要な道具というものは沢山あります。狩猟には銃猟・罠猟・網猟とありますが、それぞれ必要な道具が変わって来ますね。もちろん獲物によっても変わります。ですが、どんな方法で何を狩るとしても、必ず必要になる道具が一つだけあります。それが“刃物”です。獲物の止め刺しから血抜き、解体まで刃物は必要になりますし、それ以外にも色々な使い道があります。例えば私は罠猟をメインに行っていますので、罠の設置後に安全装置になっている紙テープを切ったり、罠の設置を知らせる標識を取り付ける為の紐を切ったりと、獲物が捕れなくてもガンガン使います。近年アウトドアを趣味とされる方も増えてきて、趣味系の雑誌やサイトでブッシュクラフトやサバイバル術などを紹介される記事を目にすることも増えてきました。
「銃砲刀剣類所持等取締法」という法律をご存知ですか?
略して銃刀法。銃や刀剣の所持を取り締まる法律です。狩猟をされている方や、興味をお持ちの方でしたら、「銃」の取り締まりの厳しさはご存知かと思います。でも包丁とかナイフって銃と違ってお店で買えちゃうし、警察の許可や免許も必要ないし、身分証明書すら無くても買えちゃいます。簡単に持ててしまう物だからこそ、取り扱いを知らないと大変な事に……。
でも、そもそも「刀剣類」とは何なのでしょうか。銃刀法の第二条には次のように記載されています。
『この法律において「刀剣類」とは、刃渡り十五センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り五・五センチメートル以上の剣、あいくち並びに四十五度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ(刃渡り五・五センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であつてみねの先端部が丸みを帯び、かつ、みねの上における切先から直線で一センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して六十度以上の角度で交わるものを除く。)をいう。』
この条件に当てはまるものがいわゆる「刀剣類」となり、銃と同じで許可なく所持することはできません。
◆刃渡り十五センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた

刀とは皆さんのよく知る時代劇で出てくる刃の反ったアレです。やりとなぎなたは長い棒の先に刃がついているものですね。ちなみに反りのある刃の刃渡りの図り方ですが、刃そのものの長さではなく、切っ先から峰の根本までを直線で結んだ距離を図ります。一度刀身から離れて再び根本で着地するので「刃渡り」と言うそうです。(刃渡りや刃体※写真及びイラスト)
◆刃渡り五・五センチメートル以上の剣

剣もみなさんが想像する形のもので大体正解です。まっすぐで両側に刃がついている鋼質性の刃物で、先端が鋭く尖っていて殺傷力が高いものです。ダガーナイフなどもここに該当します。え? 5.5センチ以上はダメって? 5.5センチは意外と短いですね……(; ・`д・´)
◆あいくち並びに四十五度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ

あいくちとは任侠映画等で出てくるいわゆる「ドス」です。刀に似ていますが刃渡りが短く、鍔(つば)がついてない等、人目につかないよう隠し持つ為の形状をしています。暗殺道具として使われていました。
以上の「刀剣類」は許可なく所持することができません。所持した時点で(お家に置いておくだけでも)銃刀法違反です。しかしながら気を付けて頂きたい点は、インターネットでは無許可で気軽に買えちゃうものもあるみたいです……。怖いですね。そして例えば、もし蔵からおじいちゃんの日本刀なんかが出てきちゃった場合には速やかに最寄りの警察署へ連絡してくださいね。間違っても、いきなり交番や警察署に持って行っちゃだめですよ!
上記の定義から外れて「刃物」となるものは自由に買えますので、眺めるなり料理につかうなり、お好きに使いましょう。え? 外に持ち出したいって?(=゚ω゚) そうですよね、家の中ではキャンプも狩猟もできませんからね。例えばハサミやカッターなどの「刀剣類」以外の「刃物」だとしても、持ち運びたいとなったらさらに勉強が必要になります。一緒に学んでいきましょう。
【「刀剣類」に該当しない刃物でも、理由なく携帯したらアウトォ!】銃刀法第二十二条に以下のような記載があります。
えっ……。言い回し……むつかしい……(ノД`)・゜・。
一気に説明すると訳がわからなくなるので、ポイントで分けていきましょう。
上記の二十二条でポイントとなるのは、
①「業務その他正当な理由による場合」とは?②「内閣府令で定めるところにより計った刃体の長さが6cmを超える刃物」って?
③「携帯してはならない」って?
の3点でしょうか。一つずつ理解して行きましょう!
①業務その他正当な理由って?
まず気になるのが「業務」と言う言葉ですが、お仕事の意味ではありません! 刑法上の業務とは「社会生活上、何度も繰り返して行われる事項」の意味ですので、お仕事で無くても普段から行っている行為であれば業務になりますので安心してください。交通事故なんかで「業務上過失致傷」なんて言うアレと同じですね。では正当な理由とは何でしょうか。これは「客観的に見てそれを持っているのが自然な場合」と取れます。
例えば、
〇買った包丁やナイフなどの刃物を自宅へ持ち帰る
〇修理や刃研ぎ等の為にメーカーや販売店へ持っていく
〇釣りやキャンプで使うための行き帰り
〇ナイフメーカーが入荷の為に販売店へ運ぶ
〇料理人が店へ自分の包丁を持って出勤
などが正当な理由と言われています。逆に「護身用に持ち歩く」「ファッション」などは正当な理由にはなりません。職質されてカッターやナイフなんて出てきちゃった日にはあわてて「護身用」とか、うっかり言っちゃいそうですが、それを言ったら最後でっせ……!
②刃体の長さが6cmを超える刃物とは?
刃体の長さは刃渡りとは少し図り方が異なりますので要注意! 刃物の種類によって図り方は多少異なりますが、基本的に「切っ先」から「柄部(握り)の切っ先に最も近い点」までの距離で図ります。
③携帯とは
警視庁のサイトにこのような記述がありました! 「自宅又は居室以外の場所で刃物を手に持ち、あるいは身体に帯びる等して、これを直ちに使用し得る状態で身辺に置くことをいい、かつ、その状態が多少継続することをいうとされています。」
つまり、手に持ったり腰に下げたりして、すぐに使える状態で持ち歩く事を携帯と言います。ここで気をつけなければいけないのが、自動車です。アウトドアで刃物を使う方の多くが、自動車で移動をしていると思います。もちろん刃物も他のアウトドアグッズと一緒に車の中に積んでいきますよね。助手席やダッシュボードにそのまま置いている方、いませんか? これは「直ちに使用しうる状態」と判断される可能性が非常に高いです。また、帰宅後に車から下ろすのを忘れてそのままにしていると、①の正当な理由からも外れてしまいます。なんでも車に積んだままにしている人は今一度よく確認しましょう。携帯と見なされない為の対策でよく聞くのは「刃物を鍵付きのケースに収納し、直ちに仕様出来ない状態で持ち運ぶ」というものになります。過去の事例として、職人さんが車の中に積んでいた“鍵なし”道具箱の中から出てきた刃物が、すぐに使える状態で携帯していたと見なされてしまったケースがあります……(; ・`д・´)
ここまで見てきたとおり、刀剣類に該当しない「刃物」であっても、なかなか厳しい規制があることが分かりました。
そういえば冒頭で出てきた千葉県の男性のケースですがカッターの刃体の長さが“8.4センチ”でしたね……。
【『軽犯罪法違反』でペンチやニッパ、そこら辺の棒でもアウトォ!? 録音&録画で己を守ろう!】実は銃刀法の規制を完全にクリアしてもまだ気をつけなければならない事があります。それが「軽犯罪法」です。いくつもの軽微な犯罪について定めた法律ですが、その中に刃物に関する条文があります……!
「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者は、これを拘留又は科料に処する」この法律、刃物の形状や長さに規定が無いばかりか、規制の対象そのものもだいぶあやふやになっています。刃物や鉄棒は当たり前、野球のバット(!?)や催涙スプレー、空き瓶やそのへんの棒でも該当してしまいます。「正当な理由」の部分は銃刀法に準じた解釈が出来ますが、「隠して携帯」の部分は判例を見るに「隠す意図があったかどうか」が重視されているようです。それじゃあ隠す意図があったかどうかは、どうやって判断するのよ……?(;´・ω・) これは、現場の警察官次第と言うことになります。もちろん勾留中の取り調べや裁判などで「隠す意図が無かった」と証明できれば無罪になりますが、最終的に無罪になっても逮捕・裁判となれば社会的、経済的なダメージは計り知れません。もはや、刃物の長さとか関係無しに、現場の警察官次第でどうにでもなってしまうという事です……!(ぞっ…) 過去の事例を調べてみたところ、車に積んでいたハサミやペンチ、カッターナイフ、子供と遊ぶ為の野球バットやコスプレのおもちゃの剣などでも軽犯罪法違反の疑いをかけられる危険があるようです。

そもそも、今まで書いてきた「銃刀法」「軽犯罪法」のややこしい条文や判例を、全ての現場警察官が熟知しているとは限りません。私が調べた限りでも、いくつもの誤認逮捕が過去にあったようです。こちらが正しい運用をしていても、間違った知識で逮捕されてはたまったものではありませんし、いずれ無罪となろうとも、「銃刀法違反で逮捕!」なんて報道されちゃった日には、もう……。己を守るのは正しい知識と映像証拠しかありません。もし万が一、職質されたときに何かの間違いで不穏な空気が流れてしまったら、すぐにそのやり取りを携帯で録音もしくは録画しましょう!
刃物は確かに、扱い方によって危険な物かもしれません。ですが、それ以上に便利な道具です。ロマンだってあります。刃物が危険なのは「正しい使い方」していないから。今回は難しい法律の話ばっかりになってしまいましたが、そういった法律がある以上、正しく運用するためには必要な知識だと思います。正しい使い方を学び、安全にそして便利に刃物を使って頂けたらと思います!
ちなみに銃刀法違反で有罪判決が下されると……
① 2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処される(刃物所持の場合)
② もちろん前科がつく
<銃刀法違反に関する最近のニュース(2019年Nozomi調べ)>
2016年 新潟県、忍者マニアの男性、車の中から手裏剣が見つかり銃刀法違反で逮捕
2017年 千葉県、8.4センチメートルのカッターナイフ1本を携帯した男を現行犯逮捕
2017年 岡山県、車内のダッシュボードからはさみを入れていた男性、銃刀法違反で現行犯逮捕(はさみの長さが7.5センチだったことから後に釈放)
2018年 岡山県、車の助手席に果物ナイフを入れたかばんを置いていた男性に銃刀法違反で有罪判決。「夕食を刻んで食べるつもりだった」
2019年 兵庫県、区役所で大根切った男性を銃刀法違反の容疑で現行犯逮捕
【終わりに】
今回は、ナイフや銃刀法について気を付けて頂きたいことを、法律を絡めてまとめさせて頂きました。DIYや釣りやキャンプが流行っているので、他人ごとではありませんね……。残念ながら、私なりに一生懸命調べ理解し記事にいたしましたが、私は法律家でも弁護士でもありません。そして法律は改正されていくものですし、その解釈は時と場合によっても変わってきます。先月まではセーフでも、今日からアウトォ! なんてことも……。今回の内容はあくまで2019年Nozomi調べなのでご注意です。大切な事は随時アンテナを張り、必要な知識と対処法をしっかりと身に着け、隙を作らない事です。
次回は今年1年の振り返りと来年の抱負についてお伝えさせて頂きたいと思います。この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。