昔ながらの銭湯へ行くと、今でも「ケロリン」と書かれた黄色い桶を見かけることがある。大ヒット映画『テルマエ・ロマエ』に登場したこともあり、再び脚光を浴びているようだ。
この黄色い桶を見ると、ロゴの上には「頭痛・生理痛・歯痛」と書かれている。そう、ケロリンとは内外薬品が製造・販売する非ピリン系鎮痛薬なのだ。アスピリンと、胃を保護する桂皮などを配合した粉末状の散剤で、大正時代に誕生した歴史の古い医薬品である。痛みが早くケロッと治るということからこの名がつけられたとされる。
実際のパッケージも桶のように黄色いイメージがあるが、そうではない。スタンダードな製品は白ベースにオレンジで頭痛や歯痛に悩む男女のイラストが描かれている。レトロな雰囲気を味わえるデザインだが、近年は錠剤やチュアブルタイプのものが登場するなど、進化を続けているようだ。
ケロリン桶が生まれたきっかけこうした医薬品がなぜ銭湯のシンボルマークとなったのかといえば、桶を広告媒体として活用したことが大きい。東京オリンピックが開催されようとしていたころ、銭湯では木桶からプラスチック製に切り替えようとしていた。このタイミングでケロリン桶を全国へと拡散し、知名度を急速に高めることとなった。
昭和30年代にはCMソングも登場。作詞は『ちいさい秋みつけた』、『リンゴの唄』などの作者であるサトウ ハチロー、作曲は国民栄誉賞を授与され、『東京ブギウギ』をはじめとする名曲を作り、歌謡史に名を残した服部良一が手掛けている。
昭和の時代にはおなじみの存在だったケロリン桶だが、銭湯の数が減った現代ではお目にかかる機会が少なくなっているように感じるのではないだろうか。しかし、銭湯だけでなく、温泉やゴルフ場などにも置かれているし、桶そのものが一般にも販売されている。人気アニメ『ケロロ軍曹』とのコラボレーションや、湯桶ストラップなどの関連アイテムも展開中。いまもなお、多くの人に愛されているようだ。
今回取り上げたケロリン桶については、雑誌『一個人』2月号「お風呂の教科書。」特集でも雑学を紹介している。