第5回は、1990年発売の「AIR JORDAN 5」。
大胆なデザインで人気を博したAJ4の後継機種として登場。このモデルではファッションライクなデザインアレンジがさらに進み、リフレクター素材のタンやジャンプマンロゴ入りのクリアソールなどが目を引く。黒ベースを中心に、全米で圧倒的な人気を獲得した。
スピード感あふれるデザインで
ブレイクの決定だとなったモデル写真を拡大 1990年に発売されたオリジナルのハイカット。アッパーサイドにはクリアプラスチック製のベンチレーションネットを採用。全米でのAJ5の人気は日本にも飛び火した
アメリカではAJ4が起死回生のヒットを記録したことで、一時シリーズ存続の危機を迎えていたAJは見事復活を果たした。前作が黒人層を中心にストリートでブレイクしたことから、このAJ5はよりブラックカルチャーを意識したデザインに仕上げられている。例えば、暗闇で光るリフレクター素材のタンは、クラブに通う黒人たちにとって一種のステイタスシンボルに。
レギュラーのオリジナルカラーは、白×赤、白×パープル、白×赤(ナンバリング)、黒×銀の4色だが、中でも黒は断トツの人気を獲得。一時はデッドストックに10万円以上のプレ値がついた。また、そうした当時の人気を反映して、'99年から始まった復刻でも、まずは黒ベースからリリースが始まっている。
なお、このモデルを履いた’89-90シーズンのMJは、レギュラーシーズンで得点王とスティール王を獲得。チームはプレイオフにも進出したが、カンファレンスファイナルでデトロイト・ピストンズに敗れ、念願のファイナル進出は叶わなかった。
ロゴ類の変更のほか、レトロでは
シルエットが若干ファット

AJは'97年からジョーダン・ブランドの製品になったため、それ以降にリリースされた復刻版はナイキロゴをジャンプマンロゴに置き換える変更が行われている。'99年発売のレトロは、ロゴも含めてオリジナルとまったく同じ内容だったが、その後のモデルでは徐々にナイキからジャンプマンロゴへの移行が行われた。

まずジャンプマンロゴの入った「シュータン」では、'99年版のレトロでロゴ周りの縁取りが大きく、タンの上側にまで達しているのが特徴的な変化。「シューレースストッパー」は、オリジナルと'99レトロで型押しされていたディテールが、'06年にジャンプマンロゴのプリントに。また面白いのがタン裏の「AIR JORDANロゴ」で、オリジナルでは上下逆さまに縫い付けられている。「インソール」は'99年の段階で、NIKE AIRロゴからジャンプマンにシフトしているのが見受けられる。
'99年に初復刻。以降、現在まで派生モデルは無数に存在

オリジナルカラー4色のうち、黒×銀と白×黒×赤は'99年に復刻。オリジナルと全く同じ仕様で復刻されたのはこの2色のみで、これ以降のモデルはヒールロゴなどが変更されている。'99年から'00年にかけての復刻では、仕様に若干の変更を加えたレトロプラスが登場。
インスパイアされた最初のモデル

ティンカー・ハットフィールドは、スピード感あふれるMJ(マイケル・ジョーダン)のプレースタイルをシューズデザインに反映させるため、第二次世界大戦で活躍した戦闘機「ムスタング」をデザインモチーフに選んだ。シューズの先端は戦闘機のノーズアート風に仕上げられており、ギザギザ模様はサメの歯をイメージしている。MJとスパイク・リーが共演したCFでは、「IS IT THE SHOES(これはシューズなのか)?」というキャッチフレーズが使われた。
*参考文献『スニーカーJack Premium「まるごと1冊エアジョーダン23周年』(小社刊)