NBAのスーパースター、マイケル・ジョーダンのシグニチャーモデルとして生まれた〈AIR JORDAN〉。誕生から30年を超え、その背景や物語を知らずにファッションアイテムの一つとして楽しむ世代も増えてきた。
そんな「マイケル・ジョーダンを知らない世代」のためのエアジョーダン基礎講座として、今なお続くナンバリングを順に振り返りながら、歴史を紐解いていきたい。

第8回は、1993年発売の「AIR JORDAN 8」。
AJ6から採用されたスケルトンフレームを持つ最後のモデル。AJ7譲りのハラチフィットに加え、アッパーにクロスストラップを装備することでサポート性を向上させている。このモデルを履いてMJ(マイケル・ジョーダン)はNBA3連覇を達成するが、その後にショックな出来事が…。

 

スリーピートの立役者となった
'90年代ハイテク最終進化モデル
日本での不人気、強盗殺人、そして引退…悲劇に見舞われた8代目...の画像はこちら >>
写真を拡大 1993年発売のオリジナル。前作に続きワーナーとのコラボプロモーションが行われ、AJ8ではマービン・ザ・マーシャンがメインキャラクターに据えられた。AJ8とともにMJ第1期黄金時代が終焉

 '93年当時に考えうるハイテクをすべて盛り込んだ、とも言えるのがAJ8だ。アッパーには当時ストリートバスケ用として人気を集めていた〈エアレイド〉のテクノロジーを応用したクロスストラップを装備。シューズの外側はストラップがサポートし、内側はハラチでフィットさせるという手法を採用している。

さらに、アウトソールの中央部を大胆に削ぎ落とすことで軽量化も実現している。

日本での不人気、強盗殺人、そして引退…悲劇に見舞われた8代目【エアジョーダン秘史(8)】
写真を拡大 ハラチインナーやヒールサイド、アウトソールの一部にはアバンギャルドなパターンがプリントされている。また、AJ8では久しぶりにBOXのデザインが変更になり、上箱はジャンプマンとAJロゴの組み合わせ、下箱はグレー一色に。

 また、AJ7ではアフリカをイメージしたデザインパターンが使われたが、このAJ8は派手な幾何学パターンをインナーなどに採用。パイル地のタンにジャンプマンロゴを刺繍し、ヒールサイドにもグラフィティー柄を入れるなど、デザイン的にはストリートカルチャーを意識したものになっている。

 ちなみにAJ7の登場とともに最高潮に達した日本のスニーカーブームは、このモデルが登場する頃に終息。オリジナルが発売された当時、日本でのAJ8の人気はイマイチ盛り上がらなかった。また、その過度なハイテクぶりも敬遠される一因となったようだ。

 

 一方、このモデルを履いたMJは、'92-93シーズンのNBAファイナルで親友のチャールズ・バークレイ率いるフェニックス・サンズを下し、スリーピート(3連覇。スリーとリピートを組み合わせた造語)を達成。

しかし、そのシーズンオフに父親が強盗殺人に巻き込まれたこともあって、一時バスケットから身を引くことを決める。

 

ストラップはトップグレード・バッシュにふさわしい仕様に
日本での不人気、強盗殺人、そして引退…悲劇に見舞われた8代目【エアジョーダン秘史(8)】
写真を拡大 1993年発売のオリジナルと、2007年に復刻されたレトロを比較。

 特徴的なクロスストラップは、エアレイドがナイロンベルトにベルクロをつけただけのものだったのに対し、AJ8ではレザー+ベルクロ仕様にアップグレードされている。AJ7ではヒールカウンターに入っていた23のナンバリングは、クロスストラップの中央に刺繍で入る。アッパー表面にはベンチレーションホールが設けられているが、シューレース部分のほとんどがストラップで覆われてしまうため、通気性は良いとは言えない。

 歴代最小、わずか3色しか作られなかったオリジナルカラー
日本での不人気、強盗殺人、そして引退…悲劇に見舞われた8代目【エアジョーダン秘史(8)】
写真を拡大 '02~'03年にかけて最初の復刻が果たされ、'07以降へと続く。

 オリジナルカラーは黒×アクアブルー(オールスターカラー)、白×赤、そして黒×白(ブルズカラー)の3色しかリリースされなかった。これは歴代AJの中でも最も少ないカラーバリエーションだ。最初の復刻は、'02~'03年にかけてで、白×赤のみが復刻。その後、'07年の2度目の復刻時に、残りの2色、黒×アクアブルーと黒×白が初復刻された。

また、'02年にはAJ6と同じようにミッドカットの丈を詰めたローカットがデビュー。さらに、トレッキングブーツ風のAJ8Bも企画されたが、これは製品化されずドロップされている。

*参考文献『スニーカーJack Premium「まるごと1冊エアジョーダン23周年』(小社刊)

 
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