■「フィジーク」で活躍する久野圭一さんに聞く!
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今回話を伺ったのは、「フィジーク」で活躍する久野圭一さん。さわやかな笑顔の裏に恐るべき筋肉をまとう。

 関東地方も梅雨に突入。夏を直前に控えたこの時期になると、毎年のように雑誌やバラエティ番組で「○○しながらできるダイエット!」や「1日たった3分でできるポッコリお腹対策」などといったお手軽ダイエットを見かけるようになる。

 しかし、ボディメイクスペシャリストの久野圭一さんは、「そういった類いのダイエットやエクササイズの効果はごく少量。意味がないとは言いませんが、効率はかなり悪い」と語る。そう、お手軽なトレーニングの成果はたかが知れているのだ。

 久野さんは、完全個室パーソナルトレーニングジム「KEY FIT EBISU TOKYO」の代表。そして、肉体の美しさを競う「フィジーク」という競技で活躍するトップアスリートでもある。ボディビルダーやフィジーカーに“減量“のイメージはないかもしれないが、たくましい筋肉を付けるのと同じくらいに減量は重要で困難な作業。言うなれば、減量の達人であり、その道のプロなのだ。

■残念ながら、「腹筋」ではお腹の脂肪は落ちない

 さて、きっと多くの読者が夏を前にして悩んでいるのが、ぽっこりお腹であろう。そこで早速、久野さんにぽっこりお腹を撃退するためのトレーニング法を伝授してもらう。ちなみに、この手の企画によくあるのが「腹筋」を鍛えるエクササイズ。

事実、お腹周りが気になってきた人は、とにかく腹筋を始めてみる人は多いはず。しかし、久野さんいわく「腹筋だけをしていてもお腹はへこまない」という。

「これは実験結果からも明らかになっています。腹筋を定期的に継続してやっていたグループとしなかったグループとでほとんど差異がなかったのです。お腹周りの脂肪が少ない人が腹筋をがんばれば、うっすらと筋が見えてくることはあっても、腹部の脂肪が直接落ちるわけではない」

 つまり、部分痩せは諦めたほうがよさそうだ。ぽっこりお腹が気になり始めた人が、必死になって腹筋に励んでも“思うような”効果は得られないようだ。

■それでもお腹を引き締めるには

「純粋にウエストサイズを減らすなら、体全体の体脂肪を落とすほうが賢明でしょう。ダイエットの原則は、“消費カロリーが摂取カロリーを上回ること”。腹筋を鍛えることでも消費カロリーを増やすことができますが、効果は限定的。もっと大きな筋肉を鍛え、消費カロリーを増やしたほうが効率的です」

 ベルトの上に鎮座するぽっこりお腹を撃退するには、体脂肪を落とす、要するに、普通にダイエットをすることが近道ということになる。

 ダイエット特集といえば、根強い人気を持つのが有酸素運動をすること。これを読んでいる人にも一生懸命ランニングしている人は多いのではないだろうか。

「有酸素運動も脂肪燃焼には効果がありますが、こちらも効率は低め。ボディビルダーもフィジーカーが減量するときには、有酸素運動をしない人が多いです。もちろんする人もいますが、減量の基本は筋トレと食事制限。一般の方もこれをダブルで行えば、見違えるような効果を得ることができますよ」

 急がばまわれということで、久野さんにはダイエットにおいて両輪となる、筋トレと食事の方法について伝授してもらうおう。まずは、筋トレからだ。
一口に「筋トレ」といっても、腕立て伏せやスクワット、背筋など種類は多種多様。やる気にみなぎった人であっても「一体何をすればいいんだ……」と思うはずだ。

「僕がおすすめするのは、“ベーシック6”です。これは筋トレのなかでも、多くのトレーニー(トレーニングに励む人)から支持されるメニュー。大きな筋肉を重点的に鍛えることができるので、消費カロリーはアップしますし、1度の動作で多くの筋肉が連動するので、とても効率的です」

■王道の“6”エクササイズ

 まず、大前提としてこれから教えてもらうメニューは、すべて“ジムで行うこと”を前提としている。いわゆる“ながらトレーニング”や、自宅で行うものとは、効率が段違いだからである。

「自重で行う筋トレも効果がないわけではありません。

ですが、重量のコントロールができないのがネック。しかも、『何kgまで挙がるようになった』などと自分の成長も実感しづらいです」

 では、気になる6つのエクササイズを紹介してもらおう。

【1】スクワット

腹を割りたきゃ「ベーシック6」だ。マッチョトレーナーの教え
スクワット①
腹を割りたきゃ「ベーシック6」だ。マッチョトレーナーの教え
スクワット②

◯スクワットのコツ

「スクワットをする際、(猫背のように)腰が丸まらないようにしましょう。上半身は反りもせず、丸まりもしない姿勢でキープ。そして、内側からお腹にしっかりと力を入れます。そして、お尻を後ろに出しながら、バーベルの重さを感じ取りつつしゃがんでいく。このとき、膝は開くイメージで。(スキーで減速するときの八の字型のように)膝が内側に入らないように注意しましょう。膝が前に出てしまう人もいますが、足の長さによって変わってくるので特に気にする必要はありません」

【2】ルーマニアンデッドリフト

腹を割りたきゃ「ベーシック6」だ。マッチョトレーナーの教え
ルーマニアンデッドリフト①
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ルーマニアンデッドリフト②

◯ルーマニアンデッドリフトのコツ

「一般的には、デッドリフトがメジャー。しかし、デッドリフトとスクワットでは鍛えられる筋肉にかぶりも多いので、ここではルーマニアンデッドリフトにしています。

 気をつけるポイントは、上半身は完璧に直立体勢でキープすること。そして、バーベルを下げるときには上半身を前に倒すというよりも、お尻を後ろに傾けるように。

上半身を倒そうとすると腰に負担が集中してしまうだけでなく、本来鍛えたい背中ではなく足へ負荷が逃げてしまう。また、倒れそうになる上半身を支える際に背中や腰の筋肉が鍛えられるからです。お尻は後ろに出すときは、後ろにある壁を押し出すようなイメージだとやりやすいです」

【3】ベンチプレス

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ベンチプレス①
腹を割りたきゃ「ベーシック6」だ。マッチョトレーナーの教え
ベンチプレス② 

◯ベンチプレスのコツ

「背中や背骨を反らせる、というより胸を反らせるイメージ。胸を起こす、みぞおちを上にあげる感覚で。手の幅は、バーベルにある2本めの81cmラインに中指をかけるように。おすすめは中指ですが、一人ひとりに個体差があるのでしっくり来る指でOK。バーベルを下げるときは、肩を軸にしたときに肘の角度が45度より少し上に来るポイントで。この角度で下ろすと胸の一番高いところになるのが多いですが、これも個人差があるので、実際にやってみて胸に効いている場所で大丈夫です」

【4】ショルダープレス

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ショルダープレス①
腹を割りたきゃ「ベーシック6」だ。マッチョトレーナーの教え
ショルダープレス②

 

 

 

 

 

◯ショルダープレスのコツ

「ショルダープレスは、バーベルやスミスマシンでやる方もいますが、肩の後ろに下げると首を痛める可能性が。反対に、胸側に下げると動作がベンチプレスっぽくなり、本来は肩の筋肉へかけるべき負荷が逃げてしまう。

 トレーニング中は、背もたれには頭をつけないほうがいいですね。これもベンチプレスっぽくなるからです。ダンベルでやる際には、腕や肘が前に出やすいのですが、耳の真横に下ろすよう意識しましょう。

ショルダープレスをやっている方で、肩に効いていないと思っている人は、こうなってしまっているパターンが多いですね」

【5】チンニング(懸垂)

腹を割りたきゃ「ベーシック6」だ。マッチョトレーナーの教え
チンニング①
腹を割りたきゃ「ベーシック6」だ。マッチョトレーナーの教え
チンニング②

◯チンニングのコツ

「いわゆる懸垂です。初心者の方がチンニングをすると、かなりの確率で足が前に行きます。言い方を変えると、足を上げた反動で体を持ち上げようとするケースが多いのですが、これでは背中が丸まってしまいます。本来背中に効かせたいメニューなので、足を前へ持ってこようとせず、背中で体を持ち上げるように意識しましょう。腕の幅は自由ですが、広すぎると力が出にくく効率が下がります。体を持ち上げたときに腕が90度になる角度を意識しましょう」

【6】ディップス

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ディップス①
腹を割りたきゃ「ベーシック6」だ。マッチョトレーナーの教え
ディップス②

◯ディップスのコツ

「主に胸を鍛えるためのメニューです。コツは、背中を丸めること。背中を反る方もいますが、それでは胸の筋肉を思うように使えません。下を向き、背中を丸めて沈んでいくようにしましょう。沈むとき、肘を曲げるというより、肩の付け根の関節を曲げるイメージで。すると、胸に効果的に効かせることができます。ディップス中の足はクロスしておきましょう」

■「ベーシック6」は手軽にできる

「ベーシック6」、いかがだったろうか。

 なかには、初めて耳にするトレーニングもあるかもしれない。しかし一般的なフィットネスジムに行けば機材はそろっている。心配ならトレーニーがいるジムに行けば優しく教えてくれる。また、 ディップスなどは、オフィスや会社にあるイスでも代用可能だ。

 5~6のチンニングとディップスは、自分の体重を支えるため、当初は満足行く回数ができないかもしれない。そんな人は、まずできる回数から始めるといいそうだ。

 また、バーベルやダンベルを使う種目がメインなので、ハードルの高さを感じるかもしれない。だが、「バーベル・ダンベル=重い」というイメージもあるが、重量を調整できることもメリットの一つ。ボディビルの大会に参加する人たちも最初は初心者だ。加えて、ジムでトレーニングしている人たちは、いい意味で他人に関心がない。軽い重量でトレーニングしていても何も思われないから安心してトレーニングに励めばよいのだ。

 さて、気になるのが重量だ。また、回数は一般的には「10回×3セット」と言われるが、一体どれくらいやればいいのか。次回、その辺りの細かな点にフォーカスしていこう。 

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