これまでは33歳で上場を果たした携帯向け交流ゲームサイト運営会社、グリー(東京・港)の田中良和社長が最年少だった。
村上氏は2011年12月7日、マザーズに上場したときは25歳。最年少で上場会社の社長になったとして話題を集めたが、わずか10カ月で東証1部にスピード昇格。これまた最年少社長の記録を塗り替える。
最年少上場の記録を次々と更新する、いわばゴールドメダリストである村上氏は、東証1部上場の御祝儀をたっぷりと手にする。
リブセンスは10月1日、1部上場に際して48万6600株の株式を売り出す。売出価格は1株3709円。村上氏は保有している208万1800株(発行済み株式の60.34%)のうちから40万7500株を放出して、しめて15億1141万7500円也がフトコロに入る。これぞ株式売り出しの醍醐味。
村上太一氏は86年10月27日、東京で生まれた。経営者だった両祖父にあこがれ、子供の頃から社長になることを意識していた。早稲田大学高等学院在学中から起業のための準備を始め、簿記検定2級を取得したほか、情報処理技術者試験にも合格。05年4月、早稲田大学政治経済学部経済学科に入学した。
大学1年生の時に、同大学の「ベンチャー起業家育成基礎講座」が実施したビジネスプランコンテストで優勝した。学生・教職員によるベンチャー企業の立ち上げを支援する目的で01年に設立された早稲田大学インキュベーション推進室が、このコンテストを主催した。
アントレプレナー(起業家)としてお墨付きを早稲田大学から得た彼は、翌06年2月、リブセンスを設立。4月からアルバイト情報を掲載するウェブサイト「ジョブセンス」を開設した。19歳の学生起業家の誕生である。社名のリブセンスは直訳すると「生きる意味」となる。
●『リブセンス』常識破りの経営術
リブセンスは、あまたあるネット広告会社の常識を覆した点がユニークだ。
ネットの求人広告は、求人する側が広告料を支払って広告を掲載する。広告を取るための営業力や運営するサイトの集客力が重要だった。
村上氏はこの常識を打ち破り、成果報酬型にした。採用された場合には祝い金を出す。働く側のメリットだ。一方、企業側には採用することを決めた段階で、初めて費用が発生する。求人が成功して採用に至るまでは、雇い主側には経費がかからない。求人する側にも働く側にもメリットがある、新しい発想の需要を創造したわけだ。
成果報酬型のビジネスモデルが評価され東証マザーズから東証1部へと指定替えになった。アルバイトの求人からスタートして、正社員、派遣それぞれの分野の求人広告を手がけてきた。そして、その後、不動産の賃貸や中古車販売のサイトにも進出した。
同社は東証マザーズに上場した効果で急成長。
当然のことながら会社の規模は小さいので、市場では東証1部上場で弾みがついて大化けするといつ期待が膨らむ。しかし、ネット広告でも、成果報酬型を導入する企業がほかにも登場しており、激戦模様だ。サバイバルレースを勝ち抜く保証はどこにもない。
ネットバブルの00年。東証マザーズなどの新興市場に新しいビジネスモデルを引っさげたベンチャー企業が、続々上場した。その中で大成功したのは楽天だった。半面、ITビジネスには限界がある(企業規模が小さい。売上高はメーカーの10分の1以下になる)ためM&A(合併・買収)に走り、それに失敗して消え去った起業家たちが数多く出た。
人気先行、株価先行のリブセンスはどういうコースを辿るのだろうか。
(文=編集部)