
廃棄物処理大手の大栄環境<9336>は、M&Aによる事業エリアの拡大を促進する。
すでに子会社41社中、25社をM&Aによって傘下に収めており、これまでもM&Aとオーガニック(内部の経営資源)の両輪で成長してきたが、今後3年間(2026年3月期~2028年3月期)は100億円を投じ、M&Aを一層積極化する。
2028年3月期に売上高1000億円を目指しており、このうちの100億円分はこうした新規のM&Aで稼ぎ出す計画だ。
関東エリアを中心に最終処分場を拡張
大栄環境によると、日本の産業廃棄物処理市場は12万社が存在する分散型市場となっており、市場規模はおよそ8兆6000億円という。
シェアの高い企業が存在せず、TREホールディングス<9247>、DOWAホールディングス<5714>(環境・リサイクル事業)、大栄環境、ダイセキ<9793>の上位4社によるシェアは4%弱に留まっているものの、今後はM&Aなどによって集約化が進むと分析する。
その背景には、廃棄物の再資源化で、再資源化した材料の由来や工程などの履歴を明確にするトレーサビリティや、CO₂排出量の見える化が求められるため、中小業者が対応しにくいことや、1970年代や1980年代に創業した企業で、後継者が不在のケースが多いことなどがあり、業界再編の機運は高いという。
そこで、これまで以上にM&Aを活発化することにしたもので、廃棄物の受入量拡大につながる収集、運搬、焼却、最終処分場などの領域で検討を進める。
とくに最終処分場の容量拡張につながる案件については注力する計画で、最終処分場の残容量を、2031年3月期に目指す1500万立法メートル(現在は900万立方メートル)に近づける。
現在、同社の最終処分場は関西に多いが、今後は最大の市場である関東エリアでの案件を中心に全国に広げ、各エリアで廃棄物の収集、運搬から、選別、破砕、焼却などの中間処理、再資源化、最終処分までを一貫して行うワンストップサービスの構築を目指す。
2025年はすでに3件のM&Aを実施
大栄環境は1980年に大阪府和泉市に最終処分場を開設して事業を始め、現在は主力事業である廃棄物処理のほかに土壌浄化、施設建設・運営管理、コンサルティング、エネルギー創造、森林保全など幅広い事業を展開している。
自社所有する最終処分場の規模が大きいのが強みで、これによって外部への委託に頼らずに済むため価格競争力を高めることができるほか、大口契約の獲得にも有利になるなどのメリットがある。
また同社では全工程を自社で行うワンストップサービスを提供しており、トレーサビリティに対する安心感が高いほか、自治体、メーカー、ゼネコン、医療機関などに幅広く顧客を有するのも優位性となっている。
M&Aに関しては、上場に向けて2022年3月期、2023年3月期の2年間は中断していたが、2022年12月に上場を達成したことから、2024年3月期からM&Aを再開。
2024年に適時したM&Aは5件で、廃棄物処理関連のほかに、ブランド価値と知名度の向上を狙いに女子プロサッカークラブ「INAC神戸レオネッサ」運営のアイナックフットボールクラブ(神戸市)の子会社化にも踏み切った。
2025年はすでに一般廃棄物収集運搬のクリーンテック名張(三重県名張市)、廃棄物処分事業の肥前環境(福岡市)、廃棄物収集運搬のWood Life Company(京都市)の3社を子会社化している。
業績は好調で、2025年3月期は売上高801億7800万円(前年度比9.8%増)、営業利益215億4800万円(同9.3%増)と2ケタ近い増収営業増益となっており、2026年3月期は4.6%の増収、1.2%の営業増益を見込む。
文:M&A Online記者 松本亮一
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