そんなパワースポットの一つである神社や寺院を訪れ、御朱印を集める「御朱印ガール」が急増している。
御朱印とは、神社や寺院が実施している参拝者向けの押印といえる。僧侶や神職が寺院・神社やご本尊の名称・日付などを墨書することが多く、それを収集する女性が増えているというのだ。神社や寺院に行くと「御朱印はこちら」といった看板を立てているところもあり、目にしたことがある人も多いだろう。
一説によれば、本来、御朱印は納経した証しとして頂くものだったといわれているが、現在では無料もしくは300円ほどで書いてもらえる気軽さもあり、「御朱印帳」を持ち歩いて集めている人が増えているのだ。実際、多くの寺社では10年前に比べて御朱印を求める女性が5~10倍に増えているという。●NHKで取り上げると、ネット上で大反響
そんな御朱印ガールを、朝の情報番組『あさイチ』(NHK)が8月4日に紹介したところ、インターネット上で賛否両論が巻き起こり、大きな話題となった。
番組内で登場した御朱印ガールたちが、週末ごとに御朱印を集めて回る姿や、「御朱印事務局」なる同好会のような集まりをつくっていることを見た人たちからは、「スタンプラリー感覚で集めているのは、いかがなものかと思う」「お参りではなく御朱印集めを目的にするのは本末転倒ではないか」などと批判する声が多く見られた。
また、すでに御朱印を集めている人たちからは「御朱印ガールなどと騒ぎ立てられると、ブームに乗って集めているように思われてしまう」「一時のブームで集めている人は、神社の本当の良さを理解してないのではないか」「純粋にお寺や神社をめぐるのが好きなだけなのに、今後御朱印をもらいにくい」などと、単なる一時のブームで気軽に集めていると思われることを危惧する声が上がった。
ほかにも「テレビで御朱印ガールがはやっているなんて取り上げられると、困る寺や神社は多いのではないか」など、ブームに乗って急激に参拝者が増えることで神社や寺院に迷惑がかかることを懸念する意見もあった。
実際の神社や寺院は、どう思っているのだろうか?
香川・琴平町の金刀比羅宮は、御朱印ガールを意識してカラフルなオリジナル御朱印帳を作成した。金刀比羅宮では、これまでも御朱印を授与してきたが、独自の御朱印帳はなかった。ところが最近、御朱印を求める人が急増したことで、御朱印帳の作成を思い立ったという。
ほかにも、派手な飾りのついたものや、オリジナルキャラクターをあしらったもの、きれいな刺繍が入ったものなど、独自の御朱印帳を作成する神社や寺院も増えており、積極的に御朱印ガールを取り込もうとしているようだ。
東京都内のある神社の宮司は、「かつては社務所に若い女性が立ち寄ってくれることはありませんでした。しかし、御朱印を求めて神主を訪ねてくる女性が多くなりました。若い世代の女性が神社に興味を持つきっかけになってくれれば、うれしく思います。初詣やお宮参り、受験の祈祷などの特別な時だけでなく、気軽に参拝してもらえるようになればと期待しています。身近に感じてもらえる存在でありたいです」と語り、たとえブームだったとしても、今までめったに参拝しなかった層にとって神社を訪れるきっかけになることを歓迎する姿勢を見せた。
ネット上でも、批判的な意見だけではなく、「参拝して御朱印もらって、周辺でおいしいものを食べて帰る。これだけでも楽しそう」「御朱印ガールというネーミングは嫌だけど、御朱印集めは楽しそう」「御利益ありそうだし、御朱印集めやってみよう」など、好意的な意見も少なくない。
きっかけはどうあれ、普段は敬遠しがちな寺院や神社に対して興味を持つようになり、そこで厳かな空気を肌で感じれば、考え方は変わるのかもしれない。
(文=西山雄基/マーケティングコンサルタント)