4月からオンエアが始まり、6月末より「第2章 反撃編」と謳う2クールめに突入したドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)。第1章のキャッチコピーが「毎週、死にます。」であったように、マンション内の住人がほぼ毎週殺され、その振り切った内容がネットを中心に話題となっている。

第1章のラストでは、ヒロイン役の原田知世までもが殺されてしまい、内縁の夫役である田中圭が主人公にスライドすることで第2章が開幕。このまさかの展開に注目度が上がり、第2章の初回は9.2%とシリーズ最高視聴率を記録した(関東地区、ビデオリサーチ調べ、以下同)。

 あるテレビ雑誌の記者は、本作の魅力を次のように語る。

「視聴率が取れないこの時代に、日曜22時30分という遅い時間のスタートながら9.2%は立派ですよ。ドラマが始まった当初は『なぜ2クールもやるのか?』『キャストが地味すぎないか?』との声が圧倒的で、視聴率的にも6%台を行ったり来たりしていましたが、さすがは企画・原案に秋元康が名を連ねているだけはありますね。きっと『主人公交代』がやりたくて、異例の“2クール連続放送”にこだわったのでしょう。この“主人公交代”というのは海外ドラマではたまに見かける設定ですが、1クール文化が根強い日本のドラマ界ではなかなか成立しづらい。にもかかわらずこの企画を通せたのは本当にすごいと思いますし、企画性の高さを物語っていますよね。第2章からは、現在大人気の若手イケメン俳優・横浜流星をキャスティングしているのもお見事です。

 ちなみに僕の犯人予想は、最初に死んだ管理人の竹中直人さん。アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』パターンだと踏んでいます(笑)」

無名俳優をうまく使った“キャスティングの妙”

 本作がオンエアされている日本テレビの「日曜ドラマ」枠では、前作の『3年A組―今から皆さんは、人質です―』が最終回で15.4%と高視聴率を記録し、前々作の『今日から俺は!!』も平均視聴率がプライム帯の他のドラマを圧倒して映画化まで決定。「この日曜ドラマこそが、いま一番攻めているドラマ枠でしょうね」と語るのは、ある制作会社のディレクターだ。

「今、事務所やスポンサーからも最も好評なのが、日本テレビの日曜ドラマ枠。派生版としてHuluでのチェーンストーリー展開も丁寧にやってるのでネット受けも良く、時代性をしっかり理解した作りに定評があります。今回の『あなたの番です』も第2章でさらに評価が上がっており、最新・第12話の視聴率も上々の仕上がり。このまま視聴率が安定的に2桁台に載れば合格でしょう。今は“攻めた作り”じゃないとネットでは絶対にバズらないので、そういう意味でも今の大衆心理をたくみにつかんでいる名ドラマだと思いますね。

 当初は『無名な俳優が出すぎ』『いくらなんでもキャスティングが地味すぎる』と叩かれていましたが、日本のミステリードラマでは俳優のネームバリューで『こいつが犯人だ』とバレてしまいがちなのを、無名なキャストを織り込むことでうまく犯人バレを防いでいます。このキャスティングがまた、非常に秀逸だと思いますね。

 ちなみに僕の犯人予想は、怪しすぎる住人役の安藤政信。あそこまで怪しすぎると犯人なわけがないのですが、その裏をかいて……ということを、このドラマならやってのけそうです(笑)」

あえての“シリアスコント”

 視聴者が抱いた当初の不安をことごとく打ち消すかのように、実はきわめて高い企画性に富んでいるという本作。あるテレビ局のドラマ班プロデューサーも、本作を次のように絶賛する。

「視聴率が取れないこの時代に、せつないラブストーリーとかマンガの実写版を丁寧に作ってもなかなか話題にはならない。その点『あなたの番です』は、ほぼ毎週誰かが殺されるという設定自体があり得ないうえに、その死因もかなり適当だし、正直ストーリーに穴が多いのも事実。

つまり、物語の信ぴょう性など度外視した、出来のよいシリアスコントなんですよね。でも、そこまで振り切ってるからこそネットでも話題になるし、穴だらけのストーリーにツッコミを入れつつ、それを視聴者が自発的に補完しようとする。あり得なさすぎる物語をリアルに描こうとするのではなく、シリアスコントぐらいの“温度感”で見事にまとめているのがすごいと思います。おそらく、日本のドラマ史に残るほどの名作になるでしょうね。

 ちなみに私の犯人予想は、第2章から主人公になった田中圭。最もあり得ないところに落とし込むのが本作の魅力なので、最もあり得ない犯人を選んでみました。おそらく双子や二重人格ネタも絡んできて、複数犯の可能性も視野に入れておきたいところ。たぶん、当たっていると思います(笑)」

 果たして、関係者からも大絶賛されるほどの本作は、どこに着地するのか。次の犯人予想はあなたの番です!

(文=藤原三星)

藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara>

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