「社長や芸人たちを巻き込んだ大ごとのはずなのに、私たち社員にとっては完全に他人事で、ゴタゴタを冷めた目で見ていますよ。というか、みんな、あまり関心がない。
反社会的勢力への闇営業問題で吉本興業からマネジメント契約を解消された宮迫博之(雨上がり決死隊)と、謹慎処分を受けている田村亮(ロンドンブーツ1号2号)が20日に会見を行ったことを受け、吉本の岡本昭彦社長は22日、会見を行った。
まず、宮迫らとの面談中に岡本社長が「お前らテープを回してないやろうな」「俺にはお前ら全員クビにする力がある」などと発言したことについて、岡本社長は「冗談と言いますか和ませると言いますか……」と釈明。
また、「何よりも宮迫くんと亮くんにああいう会見をさせて、深くお詫び申し上げる。処分を撤回し、いつの日か戻ってくる日があるのなら、全力でサポートしたい」として、宮迫との契約解消を取り消す意向を示す一方、自身の社長辞任は否定。さらに「岡本さんが社長を続けなければならない理由は?」「岡本社長にしかできないこととは?」との質問に対し、「みんなに、あとで聞いておきます」と無責任とも受け取れる発言もみられた。
岡本社長が会見を行うに至った背景には、吉本所属の松本人志(ダウンタウン)の動きがあった。松本は21日放送のテレビ番組『ワイドナショー』(フジテレビ系)に出演し、宮迫の会見が行われた当日夜に吉本の東京本社に赴き、大崎洋会長、岡本社長と会談を行い、岡本社長に記者会見を行うよう要請したと明かし、次のようにコメントしていた。
「(吉本が所属芸人を)ここまで追い込んだら、信頼関係がなくなる。吉本興業は潰れるんじゃないかと危機感を持っている」
「会社が変わらなければいけない。岡本社長に会見させなければ、この会社がダメになる」
「僕は大崎洋とずっとやってきたので、大崎が『進退も考えなくちゃ』と言ったのを止めた。兄貴なんで、大崎会長がいなかったら僕も辞める」
だが、この会見が裏目に出た。岡本社長の会見での言動に、世間のみならず吉本芸人からも一斉に批判が上がる事態となり、騒動の鎮静化を図るばかりか、まったくの逆効果となってしまった。
吉本芸人のなかでも批判の急先鋒である加藤浩次は、22日放送のテレビ番組『スッキリ』(日本テレビ系)内で、
「芸人も社員も大崎会長や岡本社長のことを恐れている。これでお笑いなんてできるのか。変わらなきゃダメだ。こんな取締役の体制が続くなら、僕は吉本を辞める」
と断言。さらに松本の「大崎さんがいなくなったら、僕は(吉本を)辞めます」という発言についても触れ、次のように語っていた。
「松本さんの気持ちは、すごいわかる。でも松本さん、後輩ながら言わせていただきますけど、(大崎会長は)会社のトップなんです。みんなつらい思いをしてて会社のトップが責任を取れない会社って、機能してるのかな」
「そういう松本さんに意見するのは本当に辛くて、しんどいですけど、松本さんのマネジャーではなく会社のトップで、社員の家族もいる、若手芸人の家族、そして生活があるんです。そうしたら経営側は絶対変わらないとダメ。その状況が行われないなら、僕は退社します」
また、同じく吉本所属の友近も23日放送のテレビ番組『ゴゴスマ』(TBS系)内で、松本がツイッターで「寝不足芸人がいっぱいやろな~でもプロ根性で乗り越えましょう」と投稿していた件について触れ、次のように持論を展開した。
「大崎会長と岡本社長と絆の強い松本さんが、“これから、がんばっていこう”と後輩芸人たちに呼び掛けたものだと思うけど、私はそこまでは思えない。まだ、芸人と社長の信頼関係が成り立っていない。
「会社vs.所属芸人」という対立構造が出来上がりつつあるかにみえるが、吉本社員は語る。
「大崎さんや岡本さんはじめ、今の経営幹部はダウンタウンの元マネージャーで固められており、社員たちも“ダウンタウン一派”が経営している会社という意識。別段それに違和感を感じてはいません。そもそも長時間のサービス残業や安月給、下の社員たちへのパワハラ的な言動などが常態化しており、すべてひっくるめて“吉本はそういう会社”という感覚で働いている社員ばかり。加藤浩次なんかが熱くなって会社を批判していますが、みんな冷めた目で見ていますよ」
また、対立軸という意味では、前述した芸人たちの発言からも読み取れるように、芸人の間でも経営陣に対する姿勢に違いがみられる。テレビ局関係者は語る。
「松本としては純粋に吉本という会社を正常化したいという思いから、自ら動いて情報も発信しているというのは理解できますが、松本にとって大崎会長含めた今の経営陣は“仲間”であり、あくまで大崎会長らが残って会社を変えていくという考えです。そして当然ながら、松本と公私ともに交流が深い今田耕司、東野幸治、千原ジュニア、ケンドーコバヤシをはじめとする松本派の芸人たちも、その考えに従うでしょう。
一方、加藤や友近をはじめとする、“大崎会長=松本ライン”ではない芸人たちからすれば、大前提として現経営陣こそが元凶であり、その経営陣の刷新なくして改革はあり得ないという考え。そこが松本らのスタンスと根本的に違う。
今、吉本芸人たちがテレビやSNSで積極的に自分の考えを表明して議論が沸いていますが、今後、スタンスの違いから“松本派vs.それ以外の芸人”という対立構造が生まれかねない様相です。
闇営業をめぐる宮迫の嘘から始まった今回の騒動、収まる気配はみえない。
(文=編集部)