子ども服専門店「motherways」を運営するマザウェイズ・ジャパンと関連会社の2社が破産した。マザウェイズは首都圏を中心として全国のショッピングセンターなどに約100店を展開。

ベビー服や子ども向け衣料品などを企画し、SPA(製造小売り)モデルによって低価格で販売してきた。店舗の営業はしばらく続けるという。

 マザウェイズが破産したのは、少子化に伴う同業他社との競争激化により業績が悪化したことが要因とみられる。全国に約1000店の子ども服店を展開する西松屋チェーンなどが立ちはだかった。マザウェイズは業績を伸ばせず、破綻に至った。

 中小の子ども服店は、どこも厳しい状況にある。2013年には、ベビー向け高級ブランド「CELEC(セレク)」 やライセンスブランドを扱う製造卸企業のフーセンウサギが破産した。同社は全国のショッピングセンターなどに出店していた。しかし、マザウェイズと同じく、少子化に伴う競争激化に耐えられず、業績が悪化し破産に追い込まれた。

業界最大手・西松屋の成長に陰り

 経営体力のない中小チェーンは厳しい状況に置かれているが、大手といえども安泰ではない。業界最大手の西松屋も、成長に陰りが見えている。

 西松屋の19年2月期単独決算は、売上高が前期比0.6%増の1381億円と微増にとどまった。

本業のもうけを示す営業利益は、47.5%減の36億円と大きく減少した。プライベートブランド(PB)商品の売り上げが順調に伸びたものの、値下げ販売の増加により売上総利益が減少したことで、営業利益が大幅に低下した。

 積極的な出店で店舗数は増えている。19年2月期末時点の店舗数は1004店で、1年前からは53店も増えた。期初から5%超増えており、近年ではまれに見る増加数だ。しかし、全社売上高は微増にとどまった。

 全社売上高が伸び悩んだのは、既存店の客数が減ったことで既存店売上高が低迷したためだ。19 年2月期の客数は前期比3.3%減だった。客単価も低下したため、既存店売上高は4.2%減と大きく落ち込んだ。客数減は深刻で、確認できる12年2月期から19年2月期までの8期は前年割れとなっている。既存店売上高は19年2月期まで2期連続で前年割れした。

 西松屋は競争の激化で苦しんでいる。

競争相手の筆頭格は、「ユニクロ」を運営するファーストリテイリング、「ファッションセンターしまむら」を展開するしまむらといったファストファッション企業だ。ファストリやしまむらは大人向けがメインだが、近年は子ども服の販売に力を入れてきている。

 少子化で厳しい状況が続く一方で、親や祖父母が1人の子どもにかける服の費用は増えているとされる。両親と双方の祖父母、計6つの財布から金が流れる「シックスポケット」が市場を下支えしている。アパレル不況が続くなか、子ども服業界は有望市場とみなされている。市場規模は関連商材を含めて約2兆円に上るとされる。各社はこの市場を狙って販売を強化してきている。

 ユニクロ(国内)の「子ども服・ベビー服」の販売は伸びている。18年8月期の売上高は前期比11%増の672億円だった。全体の伸びが6%増だったことと比べると、子ども服・ベビー服の伸びのほどがわかる。今後の伸びが期待できるため、さらなる販売強化を図っている。

 しまむらも子ども服・ベビー服の販売は悪くない。

19年2月期の売上高は309億円で前期とほぼ同じだったが、全体が5%減だったので、相対的に健闘したといえるだろう。

 しまむらは主力のファッションセンターしまむらのほかに、子ども服専門店「バースデイ」を展開している。19年2月期末時点の店舗数は、1年前から23店増えて284店となった。19年2月期の売上高は、前期比5.0%増の539億円だった。主力のしまむらは苦戦が続いているが、バースデイは好調だ。

 西松屋は、こうした子ども服を扱うファストファッション企業との競争が激化している。西松屋は最大手とはいえ、今後については予断を許さない。

徹底したローコスト経営で成長

 西松屋は徹底したローコストオペレーションからくる圧倒的な低価格販売が強みだ。500円に満たないTシャツや1000円に満たないワンピースなど、1000円未満で買えるものが大半となっている。

 西松屋は本部主導で画一的な店舗運営を行って多店舗化を図る「チェーンストア理論」を徹底していることで知られている。「金太郎アメ」のように、ほとんど形を変えない店舗を人口集中地域を中心に出店してきた。こうして店舗の標準化を図って効率性を高め、ローコスト運営を実現している。

 ドミナント出店も特徴だ。1店舗の商圏人口を10万人に設定し、商圏を隣接させて出店している。これにより効率的な配送や店舗運営を実現している。また、ドラッグストアやホームセンターなどの跡地にある居抜き物件に積極的に出店しているのも特徴だ。こうした効率的な店舗展開を行うことも、ローコスト運営につながっている。

 なお、西松屋は店舗が常時混雑するようになると、近隣に新規出店して自社競合をあえて生じさせて混雑の解消を図る出店戦略を採用している。客数が減っているのは、このことも影響しているだろう。

 店舗運営でも徹底したコスト削減を行っている。ハンガー陳列を多くしたりワゴンを置かないようにするなど、商品整理の手間を省いている。販促につながらないとしてBGMを流していないことも、結果として経費削減につながっている。

 2~5店舗ほどを1人の店長が統括することがあるのも西松屋ならではだ。これにより人件費を削減している。

1店あたりの店長の業務量が多いと多店舗管理は難しいが、西松屋では商品の配分や売り場レイアウトの策定といった業務を本部主導で行うなどして店長の負担を減らし、店長1人でも多店舗管理ができるようにしている。

 こうしたローコスト運営で低価格を実現し、総合スーパー(GMS)などから顧客を奪って成長を遂げてきた。

国内市場は頭打ち傾向

 ローコスト運営のほかでは、PB(プライベートブランド)商品が充実してきていることが大きい。

 商品開発のノウハウに乏しかった西松屋は09年ごろから、大手電機メーカーを辞めた技術者を積極的に採用するようになった。彼らのものづくり力を生かして、機能性の高い子ども服のPB商品を開発してきた。抱っこひも「ダッコール」は電機メーカーで業務用の小型プリンターの開発者だった人が開発しているという。

 ほかに、ベビーカー「バギーfan」や、しゃがんでも背中が見えにくい「ストレッチパンツ」、継ぎ足して使うことができるクッション性マット「くみあわせマット」、「座れるおもちゃ箱」など数多くのヒット商品を生み出している。

 西松屋はこうしたPB商品やローコスト運営を武器に店舗網を拡大してきた。しかし、競争の激化やコスト高で収益性は厳しくなっている。06年2月期や07年2月期に10%を超えていた売上高営業利益率は徐々に低下していき、19年2月期には2.6%まで落ち込んだ。これまでのやり方を踏襲するだけでは、収益を上げることが難しくなっており、生き残ることは難しい。

 今後は、店舗網の拡大やPB商品の強化に加え、インターネット販売と海外向け販売の強化が必須だ。

西松屋は他社運営のサイトでネット販売しており、昨年11月に国内2カ所目となるネット販売専用の配送センターを開設するなど販売体制を強化している。だが、中長期的な収益を考えると、自社サイトの立ち上げが欠かせないだろう。また、国内では出店余地が限られてきており、海外向け販売を加速させる必要もありそうだ。

 最大手の西松屋といえども安泰ではなく、マザウェイズの二の舞にならないとも限らない。さらなる成長に向けた施策を講じ続ける必要がありそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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