京都市が、市の施策を地元出身の人気お笑いコンビ・ミキに2回にわたってツイッターでPRしてもらい、100万円を支払っていたと京都新聞が報じ、波紋を呼んでいる。

 もちろん、芸人が京都市をPRすること自体は、まったく問題ない。

ツイート1回につき50万円という報酬額については、高すぎるという批判が一部では出ているものの、議論の中心ではない。問題視されているのは、報酬が発生する「広告」でありながら、明確に広告であるとの記載がなかった点である。

 2012年に、複数の芸能人が報酬を受け取りながら、それを隠して宣伝をしていたことが大きな社会問題となった。その宣伝していた内容が、実態のないオークションサイトだったことから、「詐欺の片棒を担いだ」として、SNSなどで同サイトの広告をしていた芸能人たちが芸能活動の自粛などに追い込まれた。この事件をきっかけに、広告であることを隠して宣伝をするステルスマーケティング(ステマ)を排除しようという機運が高まった。

 ただし、法律などで規制されているわけではないため、広告業界やウェブ業界での自主規制でしかない。

 そのため、今回のミキによるツイートでの宣伝についても、京都市は「問題があるとは考えていない」「ツイートを市の委託だと理解できる人は少ないだろうが、隠そうという意図はない」「必ずしも(広告であることを)明記しなければいけないという意識はない」などと強弁しているのだ。20万人のフォロワーを持つミキの発信力に期待した広報活動であって、金額も手法も問題なしとのスタンスだ。

 ミキの2人は、それぞれが2回ずつ計4本、「大好きな京都の町並み!!京都を愛する人なら誰でも、京都市を応援できるんやって!」などとツイートし、「♯京都市ふるさと納税」などのハッシュタグを付けていた。京都市の広報は、ハッシュタグやリンクを付けているから広告だとわかると説明しているが、ハッシュタグは広告であることを知らせるものではなく、さらなる批判を浴びる結果となっている。

 多くの識者も、「ハッシュタグが付いていたとしても、報酬が発生しているとは思わないだろう」と指摘。また、自治体の広報として不適切だとの声も多い。

吉本興業の対応に批判が続出

 他方、ミキが所属する吉本興業に対する批判も続出している。特に、芸能界の中から、ミキを擁護しつつ、吉本を批判する声が上がっている。吉本は「市の事業なので答える立場にない」として、暗に事務所としては特に対応しない態度を示している。

 だが、吉本所属のお笑いタレント・加藤浩次は29日、自身がMCを務める情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)のなかで、この問題について言及し、以下のようにミキを擁護しつつ吉本の対応を批判した。

「ミキがかわいそうすぎる。ミキがやったみたいになっているけど、吉本興業から依頼された仕事でしょ? 吉本のマネージャーらが『これをツイートしてください』って言ったときに、『ハッシュタグPRを(付けるのを)忘れないでくださいね』って会社が言うべきじゃない? ミキに仕事をやらせているんだから。2人はなんにも悪くない」

 さらに、ほかの吉本所属芸人にも批判の声は飛び火している。ミキだけではなく、「吉本側の厚意で」ナダルコロコロチキチキペッパーズ)など4組がPR投稿をしたことが明らかになり、ナダルが「報酬は受け取っていない」などと釈明に追われた。

 田村淳ロンドンブーツ1号2号)も、個人的に好きな犬山城のことなどをSNSでPRしてきたことから、「おまえもそうだったのか!」などと辛辣なコメントが届いていると明かし、「僕は犬山市から金銭を受け取ったことはないです」と語り、疑惑を否定した。

 たむらけんじは「誤解を招くような仕事を取ってきた会社に責任があるんじゃないかと僕は思います」との見解を示し、続けて「芸人は会社に言われた仕事は信頼してやってます。そして、今回の案件に関して正しいかどうかは僕にはわかりません。会社が正しい判断をし、芸人を守ってくれると信じてます」と、吉本の今後の対応に期待を寄せた。

 ある若手芸人は、100万円の広告料が高いとの声があることに疑問を投げる。

「やはり、ミキは悪くないと思います。仕事の依頼が来て、それを受けただけなので。報道を見ていて気になるのは、ミキを悪者にしようとしている構成です。ツイート1回の広告料の相場を報道しないと、一般の方は『ミキに100万は高い』と思ってしまいますよね。金額は一般的な取引価格なので、問題はないと思います。

 芸人たちの意見としては、『ほかにもそういう仕事はあるし、何がいけないのかわからない』『みんなやっている』『タレントとして普通の仕事』『(相場を知らずに)高すぎると言っている人の感覚に合わせてはいられない』などという声が出ています」

 外部の有識者などを中心として、金額や手法が妥当なものであるか否か客観的に検証し、それを京都市も吉本も受け止める態勢をつくらなければ、批判はしばらく収まらないかもしれない。

(文=編集部)

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