集英社の人事部が東京都内の私立大学の業界説明会で「『週刊少年ジャンプ』の編集になるには、少年の心が必要」などと話したという投稿が、Twitter上で賛否両論を巻き起こしている。投稿した学生は「女に少年漫画は理解できないと集英社の代表者に言われたの一生引き摺るな」(原文ママ、以下同)と心情を吐露したのだが、これをリツイートしたユーザーが「性差別反対」と主張したことで、批判が殺到。
学生は3日、次のように投稿した。
「私の大学に集英社の人事が来た時、『女性はジャンプ漫画の編集にはなれませんか?』て質問したら『前例がないわけではありませんが週刊少年ジャンプの編集には少年の心が分かるひとでないと…』と返されたの絶対許せない」
学生の投稿に対し、性差別反対の立場から次のような意見が寄せられた。
「漫画に限らず、編集者に必要な属性や能力に性別は関係ない。集英社人事の回答は明らかにジェンダー差別。怒りを感じて当然です」
「この時代に、女性だからNGだと言う事は絶対に許されない。だから難しいという言葉で濁してるんだろうと思うけど、難しいという事は出来ないと逆手にとって、『少年の心』を持っていると主張しそれでダメなら『少年の心』は何かを説明させ、最終的に基準が女性だからでNGされたらコンプラ違反で勝てるよ」
「ジャンプの所謂“お色気シーン”って別に『少年の心』には溢れてないぞ???それって結局、『おっさんの願望』だぞ???『おっさんの願望』を今現在少年と呼ばれる年齢の男児に押し付けて、それが普通なんだぞ~、って刷り込みをしてるだけだぞ???」
「差別問題として拡大解釈するのは間違い」配属における差別に関する議論は、上述のような少年誌の「お色気シーン」の是非に発展。その結果、マンガの「表現の自由」を求める意見や、集英社の読者獲得戦略の正当性に言及する投稿が続出した。
「集英社の少年の心問題、この心を分かる女性もいるだろうし分からない男性もいるだろうから、結局は個人差の話だから性差別問題として拡大解釈するのは間違いでしょ 主語をデカくして社会問題にするな」
「集英社編集の言う『少年の心』というのは『女性でも編集長になれますか?』ではなく『女性でも編集長になってやる!』だと思うんよね。つまり性差別とかではなく、やんわりと『お断り』されただけなんじゃないかと」
「例の『ジャンプの編集になるには少年の心が必要、つまり女には無理だと差別された!』の人(略)営利企業何だと思ってんだ」
以上のように、「表現の自由」「配属における差別」など、非常にセンシティブなテーマを軸に議論が壮大なものに発展した。双方の議論はまったくかみ合わず、学生のアカウントは大混乱。学生は同人作品製作もしていたようだが、5日までにTwitterアカウントの閉鎖に追い込まれ、貴重な表現活動の場を一つ失った。
また、「そもそも説明会の存在自体が学生の妄想だった」との誤報も流れた。当サイトが大学関係者に確認を取ったところ、集英社が10月上旬に業界説明会に出席したことが確認された。
集英社の回答一連の騒動で「ジャンプの表現はどうあるべきなのか」「集英社人事のダイバーシティーはどうなっているのか」という大きな話題になってしまったが、本当にそういう話だったのか。
集英社広報部に事実関係を確認したところ、次のような回答を得た。
「弊社ではいくつかの大学で企業説明会に参加しており、その中でジャンプの女性編集者について、下記のように回答しております。
過去に前例がないわけではありません。『少年ジャンプ+』に女性が配属されていますし、ヤングジャンプなどで女性の編集者が配属されたこともあります。女性ファッション誌の編集部であれば、性別関係なく女性のおしゃれ心を理解できることが必要ですし、少年マンガであれば少年の心がわかることが大切でしょう」
学生が集英社の発言をどのように受け取ったのか定かではないが、企業説明会などで社員が話す内容が簡単にネット上に拡散されるリスクがあるということは、認識しておいたほうがよさそうだ。
(文=編集部)