闇営業に始まり、徳井義実(チュートリアル)の巨額申告漏れ、ミキのステマツイート疑惑など、たびたび不祥事が取り沙汰されている吉本興業。明石家さんまや松本人志(ダウンタウン)などの大物芸人を含め、同社所属の芸人たちは各々の立場を踏まえつつ慎重に言葉を選びながら意見を述べている。
そんななかで、「(闇営業をした芸人よりも)一番悪いのは詐欺グループ」「会社に責任(がある)。芸人を守ってくれると信じています」など、歯に衣着せぬ物言いで自身の思いの丈をぶつけているのが、“たむけん”ことたむらけんじだ。一部では「西のご意見番」ともいわれ、一見すると芸人側に寄り添った発言に聞こえるが、その裏にある“思惑”を指摘する声も聞こえてくる。
在阪のテレビ局関係者は、次のように語る。
「闇営業からの一連の騒動のなかで、テレビ局各社が吉本芸人への取材を試みたり、会社の内部事情を知りたがりました。当然、門前払いがほとんどのなか、たむけんが『俺が芸人や会社とメディアとの間を取りもってやる』と、仲介人のようなことを申し出たんです。近年、たむけんのメディア露出は関西でも減っています。局側からすれば、年齢を重ねたことでだんだん使いにくくなっているのが現状。勢いのある若手芸人のほうがウケも良いですし、そもそも好感度が高いわけでもないですからね。本人としては危機感もあり、今回の件で必死に局や会社に恩を売り、テレビの世界で返り咲きを狙ったのでしょう」
この関係者によれば、たむけんからの“情報提供”は的確だったという。たとえば、「この芸人はこんな考えを持っていて、こういうコメントを出してくれる」「誰々はスケジュール的に、ここにいる」「芸人に直接、俺が話をつけてやる」といった具合に、局側からすれば“おいしい情報”を受けることもあったという。
「吉本社内でも、『たむけんはさすがにやりすぎ』という声があったと聞いています。吉本側も、テレビ局との間に入っていたのはたむけんだと把握していたのでしょう。表立って会社批判もしていたので、それを面白く思っていない上層部もいるようです。動物的な勘と政治力でのし上がってきた人ですが、今回は悪手だったかもしれません。
最初はよかったのですが、次第に彼を敬遠する声も聞こえてきましたね。ただ、たむけんからすれば、涙ながらに後輩の救済を訴えたり、自分の所属事務所に対しても厳しい意見を述べたことで、世間的には株を上げ、メディアにも“貸し”ができた格好です。一連の騒動でもっとも得した芸人といえるかもしれません」
たむけんの会社が急速に傾き始めている公式な立場ではないにしろ、仲介というのはリスクのある行為ともとれるが、たむけんはなぜこのような立ち居振る舞いをしたのだろうか。
「たむけんの会社の飲食事業が急速に傾いているのが原因のひとつでしょう」
こう話すのは、たむけんの会社の元社員だ。「炭火焼肉たむら」をはじめ、過去にはカレー店やカフェを運営したほか、近年は飲食業のプロデュース業を行うなど、実業家としての顔を持つたむけんだが、これらの事業が軒並み厳しい状況に陥っているという。
「2006年に大阪城東区にオープンした焼肉たむらの1号店と新大阪のカレー店を除けば、継続的に利益を出していたお店はありません。
さらに追い打ちをかけるように、有望な人材が多数流出したことも業績悪化に拍車をかけた。この元社員によれば、多くの社員がより待遇の良い職やステップアップを求めて去っていったという。閉店が相次いで資金難に陥ったが、人材流出が大きな要因だった。
「『ここにいても先がない』と言って主要メンバーが続々と去っていきました。実際、店舗運営はほとんど社員が行ってきたにもかかわらず、なかなか待遇が良くなりませんでした。たむらさんは優しい人ですが、お金には関してはドライでした。通販のECサイトやイベント出店がうまくいって業績も悪くないときなど、さすがに『もっと給料を上げてほしい』と思ったこともあります。しかし、お金を出し渋る人だったので、ずっとついていきたいとは思えませんでした。ときどき、『芸人はいつ辞めてもいい』と言っていましたが、とても今の事業だけでうまくいくとは思えませんね」(同)
たむけんの発言に関して、次のような見方をするテレビ局関係者もいる。
「さまざまな問題に関して積極的に発言していたたむけんが、徳井の申告漏れに関しては何も発言していません。何か事情があるのかなと勘繰ってしまいますね」
自身の狙い通りか否かはさておき、一連の不祥事に乗じて一定の発言力を持ったたむけんが、今後どのような言葉で世間に訴えかけるのか注目したい。
(文=編集部)