ビートたけしの10年来の弟子で運転手だった石塚康介さんは、20日発売の「週刊新潮」(新潮社)の取材に応じ、たけしの愛人といわれるAさんと、たけしが代表取締役を務める「T.Nゴン」を相手取り、1000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴したと明かしている。石塚さんはAさんから日常的に監視されてパワハラを受け自律神経失調症を患ったと主張し、その被害の詳細を「新潮」で語っている。
また、昨年2月、前所属事務所のオフィス北野から不当に金を取られているというAさんの話を信じたたけしが、自宅にオフィス北野の森昌行社長(当時)を呼び出し、たけし軍団メンバーを含めた10人ほどで取り囲み、3時間にわたり糾弾したという。石塚さんによれば、たけしは森さんに向かい「なめてんじゃねーぞ、コノヤロー!」「(軍団)全員に何株かずつ返せよ。それで(株の)贈与税も全部テメエで払えよ」などと罵倒し、さらに「おい、刀出せ!」と言って“武器”を握り、森さんに殴りかかろうとして石塚さんらに羽交い締めにされたという。
「新潮」のウェブ版「デイリー新潮」には、そのときの様子を収めたとされる生々しい音声が公開されているが、こうしたたけしの行為は、法的に問題がないのであろうか。弁護士法人ALG&Associates執行役員の山岸純弁護士は次のような見解を示す。
「報道の内容が事実であれば、“軍団”で囲んで事実上帰れない状態にしている点において監禁罪(3月以上7年以下の懲役)や、身体の危険を感じる暴言を発している点において脅迫罪(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)などが科せられる可能性があります。
目撃者も多いようですし、音声データもあるのであれば、しっかりと事実関係を究明してほしいです。
また、“たけしの愛人”とされる人物の行動ですが、これも報道の内容が事実あれば、『職場』における典型的なパワハラではありませんが、“たけしの愛人”という優越的な地位を利用し、逆らえないような状況において侮辱や酷い暴言などがあれば『精神的侵害』として、また、到底できないような要求をするのであれば『過大な要求』として、いわゆるパワーハラスメントと認定され、損害賠償責任を負う可能性があります。ただし、これらを脅迫行為・強要行為と認定することは、なかなか難しいことから刑事事件として立件することは難しいでしょう」
孤立もし“芸能界の大御所”であるたけし以外のタレントであれば、こうした報道が出ただけで、今後の活動に多大なダメージを受けてもおかしくはないが、テレビ界はどのように受け止めているのだろうか。
「現在も多くのレギュラー番組を持っているため、世間一般的にはテレビ界で重宝されていると思われがちですが、そうしたイメージとは裏腹に、今ではどこの局にも、できればたけしとの縁を切りたいという空気が広まっているようです。その理由はシンプルで、たけしのギャラは番組1本当たり300万円以上が相場と高額にもかかわらず、視聴率が取れないから。かつてたけしと共に“お笑いBIG3”と呼ばれたタモリや明石家さんまが、一定の視聴率が見込めるため各局からオファーが絶えないのとは大きな違いです。
また、いまだに“現役感”あふれる2人とは対照的に、ここ数年のたけしは、番組内でのコメントも視聴者の感覚とのズレが目立つことも多く、そもそも滑舌が悪くて何を話しているのかよくわからない場面もあり、“切り際”を窺っている空気もある。そのため、今回の恫喝音声を都合よく材料に使おうと考える局が出てきても、おかしくはないでしょう」(テレビ局関係者)
そんなたけしの厳しい現状について、別のテレビ局関係者は語る。
「すでに報じられている通り、Aさんとの交際が始まって以降、森さんだけじゃなく、長年たけしに付いてきたマネージャーやスタイリスト、さらにはたけしを慕っていた芸人、さらには“北野組”といわれる映画スタッフなど、多くの人がたけしの下を去った。最近では、仕事の関係者ですら、Aさんを通してしか、たけしとやりとりができなくなり、“正しい情報がたけしに伝わっていないんじゃないか”という声まで聞こえてきます。
このままだと本当にたけしは孤立して、かなり危険な状態になるんじゃないかと噂されています。かつては頻繁に軍団や仕事関係者などと大勢で食事に行ったりしていましたが、最近ではそれもめっきり減っているようですしね」
石塚さんは前出「新潮」記事の最後で、こう言葉を絞り出している。
「殿、早く目を覚ましてください」
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)
●山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士 時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。弁護士法人ALG&Associates執行役員として法律事務所を経営し、また同法人によせられる離婚相談、相続問題、刑事問題を取り扱う民事・刑事事業部長として後輩の指導・育成も行っている。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。弁護士としては、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。