厚生労働省が「人生会議」の普及・啓発のために、お笑い芸人の小籔千豊を起用して作成したPRポスターは、内容に対する批判が殺到した。さらに、行政と吉本興業の蜜月ぶりが判明して波紋を広げている。
問題のポスターは、小籔が患者に扮し、ベッドに横たわった姿を配したデザイン。「まてまてまて 俺の人生ここで終わり? 大事なこと何にも伝えてなかったわ」「あーあ、もっと早く言うといたら良かった! こうなる前に、みんな『人生会議』しとこ」といった文言や、「命の危機が迫った時、想いは正しく伝わらない」というコピーが添えられ、「人生会議」の重要さを説く。
厚労省に抗議文を提出した「卵巣がん体験者の会 スマイリー」では、公式サイトで「これを目にする治療に苦慮する患者さんや残された時間がそう長くないと感じている患者さんの気持ちを考えましたか?」「もっと患者と話をすれば良かったと深い悲しみにあるご遺族のお気持ちを考えましたか?」と批判。またインターネット上でも、「危機意識を煽りすぎていて、当事者家族が見たら余計つらいと思う」「お笑い芸人を起用している時点で、命について真剣に考えたのか疑問」など、厳しい声が噴出している。
さらに、参議院議員・田島麻衣子氏(立憲民主党)はツイッターで「厚労省が吉本興業に一括委託するために計上した予算は何と4070万円。これも全て国民の税金です」とコメント。この報告を受けて怒りの声が続出し、「税金から4070万円も使っておいて即掲載中止。本当にしっかりしてほしい」「畑違いの吉本興業に一括委託した理由を知りたい」と、新たな火種になっている。
行政と吉本興業のつながりといえば、今年4月に安倍晋三首相(自民党)が「吉本新喜劇」のステージにサプライズ登場。「G20大阪サミット2019」をPRして話題を呼ぶ一方、「お笑いを政治アピールに利用しないでほしい」などと批判を招くことになった。
また10月にも、京都市PRツイートを投稿していた漫才コンビ・ミキにステルスマーケティング疑惑が浮上。京都市が吉本興業に対し、1ツイートにつき50万円支払う契約を結んでいたと京都新聞が報じて問題が表面化した。
今回のPRポスター炎上騒動で、再び浮き彫りになった行政と吉本興業の近すぎる距離。厚労省には、国民が納得できる真っ当な説明をしてほしいところだ。
(文=編集部)