おもに女性タレントへの「劣化」という中傷。若さやそれに伴う美しさだけを崇拝する風潮にNOと反論する女性タレントも徐々に増えつつあるが、「劣化」をあげつらうネットニュースが未だ定番のコンテンツであることに変わりはない。

12月1日には、歌手の浜崎あゆみがInstagramにアップした写真に対して、「劣化した」との声が集まっているという内容のネットニュースが話題となっていた。

 その写真は先月28日に投稿されたもので、コンサートのリハーサルをする浜崎がまっすぐと前を見つめているバストアップショット。この胸部分について、「鎖骨が見えない、胸が下に垂れているように見える」から「劣化」だというネット民のコメントを取り上げる内容だ。また<明らかに豊胸した胸が下がってますね><低身長のため、体重が増えると一気に“おばさん化”が顕著になってしまうのです>といった“芸能記者”の言葉も。

 「劣化」とは、芸能人の加齢による容姿の変化をあざ笑うネットスラングだ。浜崎は全盛期とされる20代と現在の体型や歌声を比較され、劣化と誹謗中傷を受け続けてきた。特に、『2018 FNSうたの夏まつり』(フジテレビ系)に浜崎が出演した際は、「太った」「老けた」と散々な言われようだった。

浜崎あゆみ<全部本当のわたしだよ>

 昨年3月にInstagramとLINE LIVEでライブを生配信し、視聴者から「太りすぎ」などネガティブな感想が噴出した際は、浜崎が反応を見せた。ネットの中傷はスタッフや浜崎本人に届いていたそうだ。ファンクラブ会員向けのブログで浜崎は、当日は体調管理が行き届かず浮腫んでいた、として<全部本当のわたしだよ>と綴った。

<翌日に生放送があるのがわかっていたんだから、きちんと睡眠もとって休息もとってスッキリした浜崎あゆみでみんなに会うべきだった。ごめんなさい>
<残念ながらなんでこんな日に限ってって時に大切な日がぶつかっちゃうこと、みんなもないかな?>
<4時にLINEライブやったわたしも、9時半にインスタライブやったわたしも、11時半に帰宅して自撮りしたわたしも、全部本当のわたしだよ>

 「本当のわたし」というフレーズは、動画での彼女と写真での彼女が別人のようだと言われるためだろう。

たしかに浜崎あゆみがSNSに投稿する写真は、ツルツルの肌やスレンダーで背が高く見えるスタイルなど、まるで絵のような一枚も多い。しかし芸能人に限らず、今や一般のユーザーであっても、ネットに写真を投稿するにあたって何かしらの“加工”はしているだろう。写真=ありのままの姿を映し出すものではないし、そうでなければ嘘つきだというわけでもない。

 そんな浜崎あゆみも今年で41歳になった。20代のころと同じ肌や体型で居続ける40代など世界のどこにもいないだろう。この「変化」をあえて「劣化」と呼ぶ理由がどこにあるだろうか。

「劣化」は人間に対して使う言葉じゃない

 「劣化」という言葉はネット上で根強く生き残っている。ただ冒頭記したように、「劣化」と揶揄されてきた芸能人たちが違和感を表明し、「老けは普通のこと」「歳をとることは劣化ではない」と声をあげている。

 女優の仲里依紗は今年1月、InstagramのストーリーズにUPした動画で、「老けない人なんているの?」と、疑義を呈した。

<なんかよくさ、“劣化した”っていうネットニュースを目撃するんだけど>
<そもそも劣化って何? よく分かんない、その日本語>
<老けたってこと?>
<だってさ生きてるんだもん。そりゃ老けるよね>
<えっ、老けない人なんているの? それって、ギネスブックに載ったほうがいいんじゃない?>

 “劣化”は必ずしも女性芸能人にだけ向けられる言葉ではない。ミュージシャンのGACKTも、“劣化”について2015年のブログで「歳を取ること=劣化じゃない」と述べている。

<そりゃ、歳は取ってるわけだから、昔に比べりゃシワだって増えたさ>
<でもな。歳を取ること=劣化じゃない>

 また、爆笑問題田中裕二は2015年放送のラジオ『JUNK 爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)で、<機械とか家、壁とかに使え! 人間の顔が劣化したというのは全然分かってない!>と、強く申し立てていた。たしかに「劣化」という言葉は人間に対して使うものではない。

 「若いことに価値がある」「シミやシワがある肌は汚い」といった画一的な美意識は、私たちの文化に根付いてしまっている。美容関連産業の規模もあまりに大きい。若く美しくあろうとすることに罪はないが、「そうでなければ無価値だ」と脅すような社会であってはならないだろう。要するに“人間”をどう扱うか、という問題だ。

(文=WEZZY編集部)

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