トヨタ自動車が密かに開発していたレクサスの新型電気自動車(EV)モデルのスクープ試乗に成功した。実際にステアリングを握る機会を得たのだ。
ただし、極秘車両であるために、一切の撮影が禁止された。資料も得られない。詳細は、開発担当者への聞き込みだけである。したがって、ここで掲載した写真は新開発のEVではなく、後日、広州モーターショーで発表されたモデルであることをお許し願いたい。車名は「レクサスUX300e」だという。
レクサスがUXをベースにしたEVモデルを発売するのではないかという噂は、浮かんでは消えての繰り返しだった。というのも、アメリカと中国の施策に振り回されていたからである。
生誕の地であるアメリカマーケットをターゲットにするのであれば、エコを前面に押し出すよりも、内燃機関を搭載した大排気量SUV(スポーツ用多目的車)がいい。再選を願うドナルド・トランプ大統領が、票田を意識してパリ協定からの離脱を宣言した。それによって原油価格が下落、米国のエコ意識は低下すると予想できる。
しかも、レクサスが開発中の「UX300e」は小型コンパクトである。燃費規制がもっとも厳しいカリフォルニア州を例外とするならば、EV投入のタイミングではないと判断するのも道理。
一方で中国は、慢性的な環境汚染に悩まされている。世界第一の二酸化炭素排出国である。パリ協定遵守には否定的ではない。今春の全国人民代表大会(全人代)では、「中国の空を青くする」と環境汚染車輌の淘汰を宣言。環境汚染の激しい主要都市では、もっとも厳しい自動車排ガス規制「国6b」基準を適用した。もはや、EVを投入せずしてメーカーの存在はありえないのである。
そんな対象的な米中の施策を考慮すれば、結論を導き出すのに時間は必要ない。レクサスが開発を進めていた「UX300e」を投入するには、最適なタイミングなのである。
開発責任者の言葉によると、「UX300e」の販売の8割は中国仕様だという。中国でのハイブリッド比率は77%(2019年1~9月データ)。
実際にドライブした印象からすれば、今すぐにでも導入可能なほど完成度が高かった。開発は最終段階に突入していると想像できた。
53kWhのリチウンイオンバッテリーを搭載。モーターは150kWを発揮。最大トルクは300Nm。0-100km/h(時速100kmに到達するまでの時間)は約7秒。最高速度は160km/hに達するという。
印象的だったのは、走りのフィーリングが整っていたことだ。環境だけが「UX300e」の存在意義ではなく、コンパクトSUVとしての資質も備えているのである。
「UX300e」が北京や上海の街並みに溢れる様子を想像すると、晴れやかな気持ちになった。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)
●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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