近年、大手企業がツイッターなどのSNS(ソーシャルネットワークサービス)を活用してPR活動をするケースが増えている。ともすれば、“炎上”するリスクも伴うが、堅苦しいイメージが付きがちな大手企業が軽妙なツイートすることで、消費者に好印象を与える効果も期待できる。
そんなツイッター活用の成功例ともいえるのが、体重計等の計測器メーカーとして知られるタニタだ。タニタのツイッターアカウントは、映画『天空の城ラピュタ』がテレビ放送される際、同映画のクライマックスで滅びの呪文「バルス」が叫ばれる瞬間に、ツイッター上でも「バルス」とツイートされるムーブメントがあることに絡め、「『タニタ!』が『バルス!』を超えられなかった場合、社名を1日『バルス』にする」と宣言して大きな話題になった。そして放送終了後、迅速にツイッターアカウント名などを「バルス」に変更するなど、遊び心を表に出した情報発信で、ネット上では高い支持を得ている。
そんなタニタが、シャープ、キングジム、セガとの共同企画として、ツイッター上で展開している旅企画がある。人気バラエティ番組『水曜どうでしょう』を模して、サイコロを振って行先を決める「タニタ式どうでしょう」という旅を行い、その模様をツイッター上で動画や写真で紹介するものだ。
この「タニタ式どうでしょう」の第4弾として、12月5~6日に「鳥取県編」がツイッター上で展開されたが、あるツイートが物議を醸すことになる。
それは「新大阪」から「相生」行きの切符の写真を写したものだが、これを見たひとりの鉄道ファンが「隠したつもりなんだろうけど、鉄道オタクにはバレてしまう(2-タ)発券。 君ら東京で予め行程組んでたんだろう?どうでしょう名乗るんならつまんない自作自演なんかしてないで正々堂々サイコロ振りなさいよ」と指摘。事前に旅程を決めたうえで旅に出ている“ヤラセ”ではないかとして、ネット上で波紋を広げている。
画像にある切符を見ると、「2-タ」という記号が印字されているが、この「2」はJR東日本管内で発券されたことを示し、「タ」はJRから他社線に乗り換えることを示すという。つまり、「新大阪」でサイコロを振って、次の行先が「相生」に決まったとするツイートが嘘だということが判明したわけだ。
サイコロは“演出”その真偽について、Business Journal編集部はタニタ広報部に問い合わせたところ、以下の回答を得た。
「『タニタ式どうでしょう』(12/5-6に実施)において、旅先でサイコロを振って旅先を決めていますが、これはエンターテインメント性を高めるための演出として行っているものです。目的地は事前に決まっており、切符を購入して準備していることを公開するツイートも事前に行っています。
■タニタヘルスリンク公式アカウントによる11/29のツイート
https://twitter.com/tanita_thl/status/1200374939733221376
弊社では、フォロワーの方を含め、ほとんどの利用者の方が弊社ツイッター公式アカウントの性格上“ネタ”であることを理解された上でお楽しみいただいているという認識でおります。しかしながら、Twitterの特性上、それまでの文脈をご存じなく、一部のツイートだけをご覧になられた方にとっては、誤解を招く過剰な演出であったと認識しております。誤解を受けられた方にはお詫び申し上げます。
今後はこうした誤解が生じないよう、企画を進めていきたいと考えています」
つまり、サイコロで行先を決めるというのは、あくまでも“演出”だったのだ。そもそも「タニタ式どうでしょう」は、「『タニタ健康プログラム』を導入いただいている自治体様・法人様の取り組みを応援するだけではなく、地域の皆さまとともに多様な魅力を発信し、地域活性化に貢献していきます」と目的を告げているように、「タニタ健康プログラム」を導入している自治体を訪れることが前提だ。今回の旅に関しても、鳥取県知事や湯梨浜町長に面会していることからも、事前にアポイントメントを入れていたと見るべきだろう。
タニタのツイッターアカウントは、フォロワーが30万人を超え、炎上しないことで知られていた。キングジムは35万人、セガは39万人、シャープに至っては60万人を超えるフォロワーを抱え、各社とも高い人気を誇る。そんな4社の合同企画が、思わぬかたちで炎上してしまった。
ちなみに、本家の『水曜どうでしょう』は、12月25日から北海道地区で6年ぶりの新作が放送されることが発表された。
(文=編集部)