東京MXテレビの怠慢体質が、ようやく明るみになったようだ。昨年1月から全12回にわたってオンエアされたバラエティ番組『欲望の塊』で、看過できないトラブルが発生していたのだ。
「同番組は、歌舞伎町で働くホストたちがさまざまなゲームで対決するという内容で、優勝賞品は2000万円相当の高級外車ランボルギーニと紹介されていました。しかし、優勝した一陸斗さんのもとには放送から1年が経過しても賞品が届くことはなく、さらに、そのことについて企画会社の人間を問いただすと、何度も言い訳された挙げ句に連絡が取れなくなってしまったというのです。どうにもならなくなった陸斗さんがツイッターで『地上波のテレビ番組で詐欺にあいました』と告発し、事態が明るみに出ました」(芸能ライター)
東京MXテレビを糾弾する前に、まずは番組制作の過程について見てみよう。この番組を企画したのは「五行株式会社」というプロダクションで、同社は収録前に参加するホストたちから出演料として1人およそ150万円を集めていたという。いわば参加費を徴収していたわけだ。テレビ制作会社に勤務する人物に話を聞くと、以下のように証言してくれた。
「これは『番組に出られる』ということをエサに金を巻き上げる、悪意ある手法です。以前、健康食品の番組を手がけていたとき、老舗の飲食店や伝統工芸の職人に出演を依頼すると、『そう言って、お金を出せっていう番組じゃないだろうね』と警戒されたこともありました。つまり、テレビ業界では意外とよく流布している“手口”として知られています」
また、別のテレビ制作会社の人物はこう憤る。
「今回の一番の問題は、組織の中の一個人からお金をもらっていたということで、これは業界の慣例からしてもあり得ない。こんなことをされては、きちんと番組づくりをしている大多数の制作会社が誤解されたり風評被害を受けたりする可能性もありますよ。そういった観点から見ても、今回の問題は同業者にとっては迷惑千万です」
番組を企画した五行が最初から賞品を出さないつもりだったのかどうかは、今となってはわからない。
一方で、東京MXテレビは、この企画会社がホストたちから出演料を徴収していたことや賞品が届いていないことなどを把握していなかったという。問題が明るみになった後、東京MXテレビは公式サイトに見解を発表し、「放送責任は当社にある」としているが、番組づくりを外部に丸投げしていると見られても仕方ない状況だ。
東京MXの怠慢とテレビ業界の危険な体制20年にわたってバラエティ番組をつくっている放送作家は、東京MXテレビの怠慢を指摘する。
「私は以前、MXでバラエティに携わっていましたが、ギャランティは放送局からではなく、番組づくりに協力している制作会社から支払われていました。ただ、その会社自体が赤字続きだったようで、ギャラの支払いが1カ月遅れ、2カ月遅れていきました。こちらも何度も催促するわけにもいかず、かといって何も言わないのもナメられると思い、たまにメールしたりするのですが、そのたびに『来月支払うから』『月末には払う』などと言い逃れられていました。結局、番組も1年足らずで終わってしまいましたが、ギャラの支払いが完全に終わったのは、その半年後のことでした」
そうした事態が起きる背景には、テレビ業界特有の事情があるという。
「CSなどの放送局では、制作会社がスポンサードしてくれる企業を自ら連れてくるだけで番組がつくれてしまうと言われており、そこに局の厳しいチェックの目は働いていません。つまり、どの制作会社でも受け入れる自由闊達さがある一方で、怪しい会社にも平気で番組をつくらせてしまうという、極めて危険な番組づくりの温床になっているのです。その意味で言えばMXも同じで、管理が行き届かない、ただの『テレビを放送する箱』ということでしょう。MXは即刻、この番組の参加者全員ならびにMCを務めた山本圭壱らに謝罪し、誠意ある対応を取るべきでしょう」(前出の放送作家)
そんな山本は1月22日放送の『スッキリ』(日本テレビ系)の取材で、「(収録現場に)MXテレビ側のスタッフも1、2回現場には来ていた。
つまり、東京MXテレビは番組づくりを傍観していただけということであり、結果的に詐欺の片棒を担いだと思われても仕方がない事態を招いている。ちなみに、この問題が発覚した後も、世の中のニュースを忖度なく斬りまくる同局の看板番組『バラいろダンディ』では一切取り上げられていない。
(文=編集部)