現在、SNSなどにおける個人の発信と芸能人とのかかわりが問題となりつつある。
5月には、SNS上を中心とした誹謗中傷を理由として、リアリティショー『テラスハウス』(フジテレビ系)出演者であった女子プロレスラー・木村花さんが自死。
きっかけは、ゴールデンボンバーの公式サイトにアップされた「SNSへの写真・動画掲載について、ゴールデンボンバーからのお願い」のアナウンス。これが、あるTwitterユーザーが9月30日に行ったつぶやきによってまたたく間に拡散、10月1日時点で4万4000以上のリツイート、8万6000以上の「いいね」を集めているのだ。
当該ツイートの内容は、以下のようなもの。
「先日ゴールデンボンバーが出した『SNSへの写真・動画掲載のガイドライン』があまりに良く出来ていて、今後のインターネットの世界標準になっていいレベルだし、個人や団体がコミュティーやwebサービス運営する上でもルールづくりにめちゃくちゃ参考になるから感動ポイントメモしといた……」
このコメントが、ゴールデンボンバーが制定したという「SNSへの写真・動画掲載のガイドライン」のスクリーンショットを付した状態で拡散され、「とてもわかりやすい」「こういうガイドラインを掲示してくれることは素晴らしい」などといった声が上がっているのである。
ボーイズラブ等の二次創作についても、「各界隈のルールに従ってお楽しみください」ゴールデンボンバーが公式サイトに上げた「SNSへの写真・動画掲載について、ゴールデンボンバーからのお願い」は、9月9日にボーカルの鬼龍院翔がLINE LIVEで行った配信のなかで明かした「ルール」を文字に起こしたもので、さらにさかのぼれば、もともと2017年にバンドが独自に定めたルールに改良を加え、同17日にアップされたものだという。
このガイドラインでは結論として、「アーティスト(事務所)の仕事を邪魔する(収入が減る)かどうか アーティスト(事務所)が不快になるか、傷付かないかどうか を考えてSNS投稿を利用してください」と明示。
続いて、SNSやブログなどに掲載してOKなものの例として、無料で見られるメンバーブログやSNSに掲載された写真、CDジャケット、ポスター、看板などのほか、投稿者自身が描いたメンバーのイラストに加え、フリーライブや公開生放送などの無料イベントでの画像や動画、歌詞や歌ってみたの音声や動画などを挙げている。
なお、ボーイズラブなど含む同人誌などの世界における二次創作についても、「各界隈のルールに従ってお楽しみください」との一文があり、ファンへのこうした“配慮”も、この“ガイドライン”が話題を集める一因となったようだ。
また、逆に掲載してはいけないものとして、インターネット上に無料で公開されているゴールデンボンバー、あるいは事務所が製作したミュージックビデオなどの動画、本人が不快になる加工やコラージュの写真、有料のコンテンツ、なりすまし行為による発言、メンバーのプライベートな情報などが挙げられている。
さらに、個人が発信するSNSの本人アイコンに、メンバーの顔が写った写真などを使用することも避けてほしい、などの一文があるのも特徴だろう。
EXILEを擁する大手芸能プロダクションLDHは、SNSの「メンバーアイコン」はOKゴールデンボンバー側はこのルールについて、“あくまでもゴールデンボンバーに限って適用されるもの”との認識のようだ。
なおこうした“ガイドライン”を発表したアーティストは過去にも存在する。そのひとつが、EXILEを擁する大手芸能プロダクションLDHが発表したルールだろう。
同プロは2017年、「SNSを利用されている皆さんにお願い」とのアナウンスを公式ホームページに公開。ここではSNS上でアーティスト写真を取り扱う上でのルールが解説されており、今回のゴールデンボンバー同様「わかりやすい」と評判を呼んだ。
なお、LDHはゴールデンボンバーとは異なり、個人のSNSの本人アイコンにアーティストの写真を使用することは、「アーティストを好意的に応援している場合はOK」との判断をくだしているのも興味深い点だろう。
事後的な対応のみならず、予防的なガイドラインを事前にアナウンスすることの重要性テレビ番組を録画した動画が、放送当日にアップされSNS上で拡散してしまうような状況下にあっては、こうした動画や画像のすべてをメディア側、そしてアーティストや所属プロダクション側が取り締まることなど事実上不可能に近い。こうした現状に囲まれてきた若いファンなどは、そうした行為に違法性、問題性があることさえ認識していないケースも多いという。
そうしたなか、ユーモアを交えながら“ガイドライン”をみずから策定し、公開してみせたゴールデンボンバー。問題のある書き込みなどが発見されたあとに事後的に訴訟などで対応するのみならず、こうした予防的な対応策も、これからのアーティストには求められてくるのかもしれない。
(文=編集部)