近年競馬界を席捲してきた「パチンコ馬主」の勢いに限りが見られてきた。フィールズの山本氏やダイワの大城氏など、パチンコビジネスで財をなし、馬主資格を取得して国内外で派手な買い物をしてきた一部の馬主が苦境にあえいでいるという。



 競馬の馬券売上はここ数年好調だが、パチンコ産業にかつての勢いはなく、パチンコホールも年々減少していく有様。この状況にパチンコビジネスも大打撃を受けているのだ。

 天皇賞馬スピルバーグや6億円牝馬の購入で話題となった山本英俊氏は、パチンコ遊技機メーカー・フィールズの代表取締役。かつて潤沢な資金で競馬界、スポーツ界、格闘技界、芸能界を席捲したが、今やその勢いは天の彼方に飛んでいってしまったようだ。ハワイの別荘に格闘家や芸能人を集めてパーティーを繰り広げていた勢いは感じられず、所有馬の数も質も減少の一途をたどっている。

 山本氏は一口馬主クラブである東京サラブレッドクラブの実質オーナーでもあり、特に社台ファームと深い関係にある。これまで活躍した山本氏所有のスピルバーグ、東京サラブレッドクラブのレッドディザイアといったG1ホースは社台ファームの生産馬だ。

 その山本氏が代表を務めるフィールズが先月決算を発表。28年3月期は売上高944億円(前の期比5.1%減)、営業利益14億円(同70.4%減)、経常利益13億円(同74.9%減)、最終利益1億円(同96.1%減)と散々な内容だった。この衝撃は業界を駆け巡り、特に深い関係にある美浦の調教師は「預託料の支払いは大丈夫か?」と焦りを感じたという。

 しかしこの傾向は以前から見られていたようで、実際に山本氏の保有頭数は減少し続けており、馬主リーディング17位だった2010年頃は50頭を所有していたが今や20頭ほど。現3歳馬にいたってはわずか5頭と寂しい限りだ。
勝利数も2014年20勝→2015年5勝→2016年3勝と急降下。本人も「高い馬がまったく走らない」競馬にはうんざりしているようで、馬主業は継続していくようだが、以前のような派手な金遣いはもう見られないだろう。

 またダイワでお馴染みの大城敬三氏もパチンコ系の馬主。千葉の習志野市を中心にニュー後楽園などを展開する大和商事(OKグループ)の代表取締役会長の大城氏は、今やかなりの高齢だが、特に社台ファームの吉田照哉氏とはパーティーの場で出席者を前にキスをするほどの仲。しかしながらダイワスカーレットとダイワメジャーが国内のG1レースを勝ちまくっていたときが人生のピークだろう。本業のパチンコホールや副業の飲食事業も伸び悩んでいるという。

 実際にかつての勢いはおさまり、2007年は年間32勝、G1レースを5勝と大活躍だったが、今年はまだ3勝と絶不調。2007年は86頭を所有していたが、今年は26頭と大幅減。本人が所有していたダイワスカーレットの産駒も売りに出したとの話もあり、預託料の捻出に精一杯という状況なのだろうか。本人のご子息は競馬に興味がないようなので、今後ダイワの馬は減少していくことだろう。

 パチンコ系馬主といえばセガサミーの里見会長も有名だが、こちらは悲観するような状況ではなく、かなり将来性はありそうだ。なんといっても政治繋がりが強い。
娘は経済産業省のキャリア官僚に嫁ぎ、披露宴には安倍総理を筆頭に大物政治家がズラリ。韓国に共同出資でカジノホテルを作り、そこで将来日本で解禁されるカジノのノウハウを学ぶ周到の良さ。日本でカジノが始まれば、政治力でセガサミーが権利を持つことはほぼ確実視されており、そうなればさらに莫大な金がセガサミーに転がり込んでくるだろう。ここら辺の将来を見据えた戦略は他の馬主とは雲泥の差。愛馬の海外遠征はプライベートジェットに池江調教師親子とともに乗り付けるなどまさにセレブ馬主を満喫、今年のセレクトセールもサトノダイヤモンドのダービー次第で派手な買い物になるのは間違いなさそうだ。

 他にもサクラでおなじみのさくらコマースは、府中を中心に展開する「スパークル」というパチンコ店を経営。副業の飲食やレジャー施設もことごとく失敗し、かつてダービーを2勝するなどG1レースを勝ちまくった馬主ではあるものの、今やその勢いは見られない。かつて栄華を誇り日本競馬を席捲したパチンコ系馬主が、もはや虫の息といえる状況なのである。

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