慶應義塾大学の元・公認学生団体であり、「ミス慶應コンテスト」を企画・運営する「広告学研究会」(広研)の男子学生数名による女子暴行事件が10月、「週刊文春」(文藝春秋)などの報道により発覚した。
海の家を運営していた広研所属の学生たちが、神奈川県葉山町の合宿所に同大学の女子学生を呼び出してテキーラなどを強制的に飲ませたうえ、暴行を加え、さらにその様子をスマートフォンで撮影していたという。
有名大学生による女子暴行事件といえば、5月に「誕生日研究会」というサークルに所属していた東京大学の学生らが、酒に酔わせた女子大生に暴行をはたらいたとして逮捕された事件も記憶に新しい。
主犯格で強制わいせつや暴行の罪に問われていた23歳の東大大学院生の判決公判が10月25日に開かれ、懲役1年10月、執行猶予3年(求刑懲役2年)の有罪判決が下されたばかり。共犯として起訴されていた東大生2人にも執行猶予付き有罪判決が下されているが、こちらの事件もエリート大学生の常軌を逸した行為に注目が集まっていた。
同事件は飲み会後に男子東大生の自宅マンションに2人の女性を連れ込み、そのうちのひとりである被害女性に大量飲酒させ暴行を加えたというもの。女性に馬乗りになってのキス、体の一部にドライヤーの風を当てる、食べかけのカップラーメンをかけるといった行為が公判で明らかになっている。
くしくも今年、東京大学、慶應大学という日本が誇るエリート大学学生による女子暴行事件がたて続けに起こったわけだが、同様の事件はこれまでにもしばしば起こっている。いくつかの事件を振り返ってみたい。
●有名大学の事件簿
実は、慶應大学の学生が事件を起こしたのは初めてではない。ときは1999年までさかのぼるが、同大医学部の学生が今回の事件を彷彿とさせる集団暴行事件を起こしているのだ。
99年5月、慶應大医学部の5人の男子学生は、新宿の繁華街で催された他大学の女子大生との合コン後、新宿区内の男子学生の自宅マンションに2人の女性を連れ込み、そのうちひとりを複数人で暴行したという事件である。
逮捕後に男子学生5人と被害女性間で示談が成立し告訴が取り下げられたため、主犯格の男子学生は不起訴処分で釈放、残り4人は当時未成年であったため身柄を家庭裁判所に送られたのみとなったが、慶應大学側はこの5人を退学処分としている。
04年6月には、国士舘大学のサッカー部員も事件を起こしている。
少女を誘い出した主犯格の男子学生は児童福祉法違反で逮捕され、他のメンバーは淫行での立件となった。その後、15人全員が退学処分、有罪判決を受けている。
05年12月には、京都大学のアメリカンフットボール部の男子学生3名が、京都市内にある男子学生の自宅マンションに「鍋パーティー」と称して女性3人を呼び出し、うち2人に集団暴行をはたらいたという事件も。
「焼酎ルーレット」というゲームで被害女性たちにアルコール度数の強い酒を一気飲みさせて酩酊状態にし、「みんなでやったらええやん」などと語りながら暴行をはたらいたという。男子学生3名はいずれも集団準強姦罪で逮捕起訴され、主犯格の学生には懲役4年6カ月の実刑判決が下され、残る2人にも執行猶予付きの有罪判決が下されている。
そして、14年6月某日の深夜に、明治大学のテニスサークルの飲み会後に、新宿・歌舞伎町の路上で女子大生十数人が倒れ込んでいたという騒動が大きな話題となったことは、記憶に新しい。
この一件では、事件性はないと判断されたため逮捕者は出ていないが、多数の女子学生が下着もあらわになるような姿で新宿の汚い地面に横たわった姿は異様そのものであった。
●受験の抑圧から解放
このほかにも、03年に発覚した早稲田大学の元・公認サークル「スーパーフリー」のメンバーらが起こした組織的暴行事件は大きな話題となった。
早稲田大の学生以外にも東大、慶應大、明治大、法政大、学習院大、日大といった有名大学の男子大学生が計14人も準強姦罪で実刑判決を受けており、この大スキャンダルを契機に04年、集団強姦罪・集団強姦致死傷罪が新設されたほどだ。
なぜ、一流大学の男子学生たちが、こういった卑劣な集団暴行事件をたびたび起こすのだろうか。恋愛コラムニストの堺屋大地氏はこう分析する。
「高校時代にさほど恋愛経験がなく、女遊びをしてこなかったような“優等生”が、大学に入り受験という抑圧から解放されてハメを外すという構図です。もちろん、ここでいう“優等生”とは、親の言いつけを守ってひたすら勉学だけに励んできた、という意味の揶揄です。中学、高校時代にある程度の恋愛経験があるような“リア充”系の男子学生であれば、集団暴行のような方法で性欲を発散させようとはしないもの。女子を卑劣な手で泥酔させて複数人で暴行するという行為は、倫理的、法的にNGであるとの認識以前に、『カッコ悪い』『ダサすぎる』『モテない男の所業』と考えるからです」
努力して有名大学に入学しても、羽目をはずして犯罪者となってしまっては、元も子もない。
(文=編集部)