6月4日に発売された漫画『ONE PIECE』(集英社)89巻で、表紙カバーに掲載されている作者・尾田栄一郎氏のコメントが物議を醸している。『ONE PIECE』が連載されている「週刊少年ジャンプ」(集英社)の編集部が14日に謝罪文を発表するなど、大きな騒動になっている。



 問題となったコメントは、故人である横井庄一さんをネタにしたもの。「みんなでごはん食べる時最後に一つ大皿にぽつんと残ってるからあげとかあるよね。あいつに名前をつける事にしました。横井軍曹と。『横井軍曹残ってるよ! 誰か戦争を終わらせて!』的な。わからないちびっ子は調べてね。」とつづり、最後に「恥ずかしながら!! 89巻、始まります!!!」と締めている。

 横井軍曹(横井庄一さん)とは、太平洋戦争の終戦を知らずに1972年までグアム島で潜伏生活を送っていた元日本兵。日本に帰国した際に放った「恥ずかしながら生きて帰ってまいりました」という言葉は流行語にもなり、一躍時の人となった。その後、97年に82歳で死去している。

 この尾田氏のコメントがインターネット上で拡散し、「さすがにデリカシーがなさすぎる」「実在の人物だし、遺族の方々もいるんだからさ。残り物なんかにたとえられてどう感じるか、考えなかったのかな」「表現の自由はあるけど、履き違えている気がする。故人を茶化すのはマズいでしょ」「もうちょっと違うかたちでネタにすればよかったのに」といった批判の声が続出。


 また、コメントの上には日本兵らしきイラストが描かれているが、そのイラストはフィリピンに戦後29年間潜伏していた元陸軍少尉・小野田寛郎さんに似ており、それについても「横井さんと小野田さんの両名をバカにしている」と波紋が広がっている。

 こうした声を受けて、「ジャンプ」編集部は公式サイトに「『ONE PIECE』89巻の作者コメント欄において、配慮を欠いた表現がありました。編集部、作者共々反省しております。今後は、より一層表現に留意して参ります」と謝罪文を掲載した。

 一方で「過剰に問題視しすぎ」「そこまでバカにしているようには思えなかった」という見方もある。「何かしら理由をつけて有名人に謝罪させようって流れになってるよね」「本当に、みんなそんなに怒ってるの?」「遺族が怒るならまだしも、赤の他人が不謹慎不謹慎っておかしいだろ」「不謹慎の押し売り」といった声もあがっているのだ。

 元零戦搭乗員への取材も行う写真家の神立尚紀氏は、ツイッターで「なんで、誰に謝罪してるんだろう。クレーマー? 息苦しい世の中だ。横井さんが帰って来た当時は、『恥ずかしながら』は、それこそ流行語になったし、コントのネタにもされていたものだけどね。趣味がいいとは思わないが、出版社が謝罪するほどのことなのかな」と苦言を呈している。

 果たして、『ONE PIECE』90巻ではどんなコメントが掲載されるのだろうか。
(文=編集部)

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