お笑い芸人は体が資本。毎日のジム通いを武器に『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「ゴールドジム芸人」といった企画に出演を果たした者もいれば、『炎の体育会TV』(TBS系)でボディビルダーとして開眼したオードリー春日や、同番組の企画でレスリング全日本マスターズ選手権に出場し優勝まで成し遂げたジャングルポケット太田まで、体を武器に芸人としてのステージを上げることに成功した者もいる。



「石を投げれば芸人に当たる」といわれるほど飽和状態にあるお笑い界の中で、筋肉や身体能力を芸にまで昇華し番組出演を勝ち取るというのは、ある意味で芸人らしいスタンスともいえよう。実際、無名の若手芸人たちでも、バイトをして貯めたお金でジム通いをし、ボディに磨きをかけているという者もいるというから、芸人のジム通いはいまやスタンダードになりつつあるのかもしれない。芸人事情に詳しい某放送作家は次のように語る。

「やはり芸人、誰しもが松本人志さんに憧れるなどしてこの世界に入ってきているので、いまだに『マッチョになれば松本さんのように面白くなれる』と真剣に信じている若手芸人がいてもおかしくはありません。ただ、松本さんは50歳を過ぎて135kgのベンチプレスを持ち上げられたり、胸筋を鍛えすぎて乳首が年々下がってるなど、ちょっとマッチョが過ぎるというか……最近ではむしろいじられてますけどね(笑)。そもそも芸人なんて、人よりもモテたくてこの世界に入ってきた人間が大半なので、体を絞ったり筋肉をつけて芸よりも先にボディに磨きをかけたがるような人種であることは間違いない。まあでも、筋肉芸人もすでに飽和状態ですし、何かの大会で優勝するなどして相当頑張らないと、仕事につながる可能性は低いと思います」

●暇を持てあまして筋トレアピール

 一方で、暇を持てあました中堅芸人がジム通いに目覚め、筋トレに励んでいる姿もよく話題になる昨今。インスタなどでその自慢のボディをアピールする光景ももはやお馴染みとなっているが、「それが業界内で『痛々しい』と鼻で笑われてるんです」と語るのは、前出の某放送作家だ。

「一時は売れたけど今は仕事が減ってパッとしない芸人に多いのですが、インスタなどで筋トレ風景をアピールするのがはやってるようです。いわずもがなですが、単に仕事が激減して時間を持てあましているだけなので、相当痛々しいんですよね。まあ、それが『アメトーーク!』などでイジられて笑いになれば、まだ仕事にもつながるんでしょうが、それよりも『芸人としても株を下げてる』といわれるほうが多いように思います。インスタなんかでアピールしなければまた別なんでしょうが、仕事激減芸人にとって、インスタで情報を発信することはもはや仕事みたいなもんですからね。
負のスパイラルというか、今後も痛々しさの垂れ流しを続けていくのではないでしょうか」

 そんな“痛々しい中堅筋肉芸人”をピックアップし、業界人の声をもとにランキング化。その結果が以下の通りである。

【痛々しい中堅筋肉芸人 第3位】
品川祐品川庄司

ゴールドジムに通うだけでは飽き足らず、ブラジリアン柔術も始め、昨年6月には公式戦に出場して46歳で格闘家デビュー。しかし、トレーニング中に右手の甲を骨折。本人曰く「休養中のようなスケジュールだったため仕事には支障がなかった」とか。そもそも相方の庄司がマッチョ芸人として名を馳せているにもかかわらず、そんなのお構いなしにマッチョかぶせを強行。パンプアップするほどに嫌われ度が上昇するため、堂々の第3位にランクイン。

【痛々しい中堅筋肉芸人 第2位】
河本準一次長課長

一時は売れっ子芸人として活躍していたが、2012年に報じられた「母親の生活保護不正受給問題」で失速。2015年には急性膵炎で倒れ、断酒を決意。それを機に肉体改造を始めたようだが、インスタを見る限りではやや中途半端な仕上がり。しかし、昨年は「吉本坂46」のメンバーにも選ばれ、復活の狼煙を上げたばかり。人知れず肉体改造に励むも現段階ではさして話題になっておらず、鼻で笑われるのもいたしかたないが、今後のさらなる肉体改造と第一線復帰を期待して、第2位にランクイン。


【痛々しい中堅筋肉芸人 第1位】
木下隆行(TKO

誰もが認める巨漢デブの彼だが、インスタによると2016年ごろから肉体改造を始め、トータル・ワークアウトで筋トレに励んでいた模様。今年1月、バカンス中の半裸写真をアップし、意外にもパンプアップされた肉体美を披露。「デブ卒業」と自らコメントを書き込んでいたが、「デブはデブ」「気持ち悪い」「アイコラ?」など強めのコメントでバッシングを受けることに。そもそも『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ)で「特番でも全然しゃべらなかったし、とにかく面白くない」と後輩からクレームを入れられていた直後だっただけに、「肉体改造よりも芸風を改造しろ」といったところか。満を持してインスタにアップした写真のロケーションが海、おまけに横顔アングルなど、とにかくイラッとさせる写真だったことも考慮し、満場一致の第1位となった。

 以上、かなりの独断と偏見も込みでお送りした今回のランキング。痛々しい中堅筋肉芸人には、鼻で笑われず腹を抱えて笑ってもらえるような活躍を期待したい。

(文=藤原三星)

●藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara>

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