ピン芸日本一を決める『R-1ぐらんぷり2019』(フジテレビ系)の決勝戦が3月10日に行われ、漫才コンビ・霜降り明星のツッコミ担当・粗品が優勝した。霜降り明星は昨年の『M-1グランプリ2018』でも優勝しており、粗品は史上初となるM-1、R-1の“2冠王者”となる。
「目下売り出し中の霜降り明星ですが、ツッコミの粗品が大きな結果を出したことで、全国区の人気コンビとなる道筋は完全に整ったといえるでしょう」(バラエティー番組関係者)
ここで重要なのは、ボケのせいやではなく、ツッコミの粗品が2冠を達成したことなのだという。
「全国区のバラエティー番組では、コンビのボケ担当よりも、ツッコミ担当のほうが先に売れやすい傾向があるんですよ。フットボールアワーの後藤輝基、千鳥のノブなどはまさにその典型。タカアンドトシのタカ、NON STYLEの井上裕介あたりもそうですね。ツッコミ担当がバラエティー番組で重宝されるようになることで、後を追うようにコンビが売れていくというパターンが多いんです」(前出・バラエティー番組関係者)
現時点では、ボケのせいやではなく、R-1王者となったツッコミの粗品に対する注目度が高いのはいうまでもない。つまり霜降り明星は、“ツッコミ先行”のパターンに見事当てはまっているのだ。
●若手では“ツッコミを雑にイジる”のが鉄則
では、そもそもどうして全国区のバラエティー番組ではツッコミが重宝されるのだろうか?
「ツッコミ担当をイジれば何かが返ってくるので、比較的簡単に笑いを生み出せる、ということがあるでしょうね。たとえば、バラエティー番組に売り出し中のコンビがゲストで出演した際、番組MCはとりあえず、ツッコミを“雑にイジる”のがセオリーなんですよ。ボケのほうに話を振って、変な返しがきたら、MCはどう対処していいかわからなくなることも多い。でもツッコミのほうをイジれば、絶対になにがしかはツッコんでくれるので、最低でもそれなりの笑いは起きる。キャラクターが浸透していない若手と絡む時は、“ツッコミイジり”をやっておくのが鉄則なんです」(放送作家)
確かに、『しゃべくり007』(日本テレビ系)に若手芸人がゲスト出演したようなケースでも、ツッコミ担当がレギュラー陣からイジられまくる……といった場面は、我々視聴者のよく目にするところではある。
「ツッコミにキャッチーなフレーズがあれば、なおよしですね。
この、「とりあえずツッコミを雑にイジる」というセオリーは、芸人ではないタレント、司会者なども多用している。
「ジャニーズ系のタレントがMCを務める番組なんかでよく見る光景です。たとえば『VS嵐』(フジテレビ系)に芸人が出演したときには、よくコンビのツッコミ担当を嵐のメンバーたちがイジっているじゃないですか。あと、終わってしまいましたが、『おじゃMAP!!』(フジテレビ系)なんかでは、普段はボケまくるあのザキヤマが、香取慎吾のイジりに対してツッコミを入れるという役回りになっていました。芸人ではないタレントがMCの場合、ツッコミに対するイジられ役の需要が特に高くなるんですよ。だから、若手コンビはツッコミのほうが番組ゲストとしては呼ばれやすくて、だからこそツッコミから売れていくんです」(前出・放送作家)
●粗品という強力なツッコミ
ちなみに、関西ローカルの番組では、必ずしもツッコミが重宝されるわけではないという。
「関西ローカルでは芸人がMCを務めることが多くて、MCがしっかりツッコんでくれますからね。だから、若手芸人のツッコミ担当に対する需要も、全国放送番組ほどには高くない。あと、関西はお笑いに対して意外に“保守的”な側面が強くて、“ボケがあってのツッコミ”という感覚が根強い。ボケに対するリスペクトが強いがゆえに、ボケのほうがフィーチャーされやすいという傾向が、関西には強くあると思いますね」(前出・放送作家)
今年4月から東京に拠点を移すという霜降り明星。
「粗品の独特な言い回しのツッコミは、すでにいろんな芸人が面白がって真似していますし、“粗品ツッコミ”みたいなものが、この勢いに乗ってはやる可能性もおおいにあると思います」(前出・放送作家)
粗品の“キャッチーなツッコミ”が先行する形で、霜降り明星が2019年のお笑い界を席巻することとなりそうだ。
(文=編集部)