今クールのフジテレビ系連続テレビドラマ、“月9”『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』第1話が8日、放送された。
医師免許を持ち放射線科医の世界的権威からも実力を認められながら、医師ではなく放射線技師として働く五十嵐唯織(窪田正孝)は、天才的な技術を持つ一方で協調性のなさから、いつも浮いた存在になってしまう。
失意のうちに職場であるラジエーションハウスに行くと、そこには放射線技師長の小野寺俊夫(遠藤憲一)をはじめ、黒羽たまき(山口紗弥加)、軒下吾郎(浜野謙太)、威能圭(丸山智己)ら個性が強くヤル気のなさそうな技師たちが集っている。そんな彼らは、常に自分たちに対して“上から目線”で命令する甘春ら医師たちを心底嫌っていた。
五十嵐は同期となる新人技師の広瀬裕乃(広瀬アリス)とともに甘春総合病院で働き始め、数日たったある日、激しい頭痛で倒れた世界的カメラマン・菊島亨(イッセー尾形)が運ばれくるが、菊島が数年前に行った脳動脈瘤の手術の影響で、頭部MRI画像の左上が大きく欠損してしまい、患部の状況が見えないため、病気の原因を特定できない。
すると診療部長の鏑木安富(浅野和之)は、もし著名人である菊島がこのまま亡くなれば、病院の評判が落ちかねないと危惧し、菊島が脳動脈瘤の手術をした大きな大学病院へ転院させる手はずを整える。しかし、搬送中に脳動脈瘤の再破裂が起こる危険があるとして、甘春はこの病院で病気の原因を特定して治療すべきだと訴え、脳外科医たちの反対を押し切って、造影剤を使った血管造影検査を行うと主張。だが菊島には造影剤アレルギーがあり、最悪死に至る可能性があるため、もしものことがあれば甘春が個人で責任を取ることを条件に、甘春が血管造影検査を行うことになる。
そして検査直前、五十嵐は勝手に菊島のMRI検査を始めるも、鏑木らに見つかってしまい怒られるが、甘春らによる血管造影検査と並行して五十嵐は、通常MRI検査で使われる強度画像の裏に隠れて捨てられるだけの位相画像を逆算して掛け合わせることで、菊島のMRI画像で欠損していた部分の復元に成功。頭痛の原因が寄生虫であることをつかんだ五十嵐らは、血管造影検査を造影剤投入直前でストップさせることに成功し、事なきを得た。そんなラジエーションハウスの面々の働きぶりを目の当たりにした広瀬は、放射線技師という仕事の大切さを改めて実感するところまでが放送された。
●『アンナチュラル』との共通点
連ドラでは毎クール、多くの医療モノが放送されており、「もうお腹いっぱい」と感じている人も多いなか、本作は医師よりも放射線技師にクローズアップしており、一般の人々にとってはあまり馴染みのない放射線技師というお仕事や、その視点から描く医療の現場には新鮮味があり、これまでの医療ドラマとは一味違った仕上がりになっている。
特に番組後半、五十嵐がMRI画像で欠損していた部分を復元していく場面は、専門的な用語が連発されるものの、「こんな世界があるのか」と見入ってしまい、並行して進められる甘春による血管造影検査との時間的争いはなんともスリリング。
本作を見る前は「また医療モノか」とまったく期待していなかったのだが、これまでにはない異色の医療ドラマとなっており、さらには「医師の甘春と放射線技師の威能が、何やら“深い関係”?」「もしかして、甘春は五十嵐のことを覚えているんじゃない?」「広瀬が五十嵐に恋心を抱き始めた?」「小野寺と黒羽の“本当の関係”って?」などなど、勘繰りたくなるような場面も散見され、人間模様も気になる要素盛りだくさんなのも見所だ(随所に出てくる、MRI画像に熱心に見入る本田翼や広瀬アリス、そして遠藤憲一のカメラ目線の表情もカワイくて癒されるしね)。
ただ、残念な点を挙げるとすれば、全体的に間延びしている感が強く、無駄にハートウォーミング的な効果を狙った場面が挿入され過ぎてしまい、テンポが悪いという印象は否めない。同じく異色の医療ドラマ(?)としては、昨年放送されて大好評を博した『アンナチュラル』(TBS系)が思い浮かぶが、『アンナチュラル』にあった圧倒的な疾走感が欠けているのは致命的だ(そういえば、今回主演の窪田は『アンナチュラル』にも出ていたね)。
逆に本作と『アンナチュラル』の共通点といえば、特殊な分野の専門的な知識や情報が随所に散りばめられ、それがストーリーにきちんと生かされ、謎解きのカギになっているという点だろう。本作もそのあたりを『アンナチュラル』並みにうまくできれば、視聴率的に大化けする可能性も十分にあるのではないだろうか。
『ラジエーションハウス』のヒットに期待したい。そして、なんだか急に『アンナチュラル』をもう一回見たくなってきた。
(文=米倉奈津子/ライター)