今クールの連続テレビドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)第1話が14日、放送された。
新婚夫婦の手塚菜奈(原田知世)と翔太(田中圭)は、思い切って購入したマンションへ引っ越した当日、菜奈が一人で部屋で荷ほどきをしていると、管理人の床島比呂志(竹中直人)が汚い恰好で断りもなく部屋に入ってきて、勝手にパシャパシャと写真撮影をし始め、さらに乱暴かつ失礼な言葉を吐き、手づくりの表札を無理やり菜奈に渡して去っていく。
菜奈と翔太は同じ階の住民たちへ挨拶回りをしていると、住民たちが皆どこか少し様子が変であることに気づくも、お隣の301号室の尾野幹葉(奈緒)から、午後に住民会があると言われ、菜奈が出席することに。住民会では相変わらず床島が出席者たちに失礼な発言を繰り返し、明らかに皆から嫌われている様子だ。
そして住民会では、ごみ置き場の清掃係を投票で決めることになり、欠席していた401号室の木下あかね(山田真歩)が選ばれる。住民会が終わると、出席者全員による恒例の懇談会が行われ、会話はなぜか「誰か殺したい人はいるか?」という話題に。ミステリー小説好きの菜奈は、殺人事件の犯人のほとんどは被害者の知り合いなので、警察はまず被害者の交友関係を捜査すると説明。すると、殺したい人がいる人同士が手を組み、片方がもう片方の殺したい相手を殺すという“交換殺人”を行えば、実行犯は被害者と知り合いではないため、逮捕される可能性は低くなるのではないかという話に展開する。
すると久住譲(袴田吉彦)の提案で、各人が紙に殺したい人の名前を書いて折り畳み、それを箱に入れて全員で回していき、一人1枚を引いてその名前を見るというゲームをすることに。菜奈は自身が引いた紙に書かれた「こうのたかふみ」という名前を見て、「この人は、今、自分が誰かから『殺したい』と思われているなんて、きっと、知らないままだろう」と複雑な気持ちになる。
その夜、部屋で菜奈と翔太が夕食を終えると、ソファーの下に鍵が落ちていることに気がつき、昼間に来た管理人の床島が落としたものだと考えた菜奈は、翔太に入居マニュアルに書かれた床島の連絡先へ電話をさせる。するとなぜか、リビングの窓の外から携帯電話の着信音が聞こえてきて、カーテンを開けると、なんとそこには縄で縛られ宙ぶらりん状態の床島の姿が――。そのまま床島は地上に落下して死亡するところまでが放送された。
●ひたすら“じとーっ”
本作は、あるマンションの住民たちが次々と交換殺人をしていくという設定だが、番組冒頭から、視聴者はかなり暗い気持ちにさせられる。
オープニング。真っ暗ななか、黒のスーツに身を包んだ竹中直人の顔のアップで始まり、いきなり「あなたには、殺したい人はいますか?」「いっそのこと、死んでくれたらいいのに、できることなら殺したいなんて人が、一人くらいはいるものです」とカメラ目線で語りかける。次に、ある職場で上司に詰められた会社員がPCでその上司を殴り殺すVTRが流れ、竹中は拍手し「すっきりしました」「では、どうして誰も(殺人を)やらないのか。一番大きな理由は、捕まりたくないから」と語る。
続けて、日本で起きる殺人事件の犯人の9割が被害者の知り合いであると説明し、「つまり、もしも誰かにあなたが殺されるとしたら、90%の確率で、あなたの家族か、恋人か、友人か、職場の関係者に殺されます」「あなたにAという殺したい人がいて、Aとの交友関係さえなければ、殺しても、捕まる可能性はゼロに近づくということです」と言う。
そこからマンションの前で楽しそうに引っ越し作業をする翔太たちの場面に切り替わり、ドラマはスタートするのだが、前述のようなストーリー展開ゆえに、ドラマ全体が“じとーっ”としたムードに包まれ、とにかく見ていて気分が重くなり、苦しくなってくる。ただでさえ仕事が始まる月曜を控えて気分が乗らない人も多いだろうに、なぜ、わざわざ日曜の夜にこんなに視聴者を暗い気持ちにさせるドラマを放送するのかは、ちょっと理解に苦しむところではある。
ただ、話が進むうちに、どこか謎を抱えた住民たちが次々出てきたり、怪しい人々が怪しい行動を見せたりして、“何が起こりそうな雰囲気”が徐々に高まり、ドラマに引き込まれていくし、登場人物たちの会話劇や人間関係などもそれなりに興味深くて楽しめるのは事実だ。ラストで床島が死に、今後どうなっていくのかと気になったのも認めたい。
それでも、やっぱりこの“じとーっ”感が充満した暗さというか、見ているときの苦しさのほうが大きすぎて、第2話以降も見るかと聞かれれば、ちょっと微妙かな……。
そして何より気になるのは、第1話では全体的に“交換殺人をすれば、捕まる可能性はゼロに近づく”ということが強調されているのだが、結果として世の中の交換殺人を助長することにつながってしまわないかが、非常に気になるところではある。これはテレビ的には大丈夫なのだろうか……。
本作は2クールにわたって放送されるということなので、この“じとーっ”感100%のままで梅雨のシーズンをまたいで半年間も続けるというのは、かなりの冒険といえるだろう。視聴率的には、まったく予想がつかないのだが、今後サスペンス的な要素が盛り上がっていけば、ヒットの可能性もあるのではないだろうか。
いずれにしても、異色かつチャレンジングなドラマであることは間違いなく、1度見てみる価値は十分にあるといえるだろう(原田知世も相変わらず可愛いしね)。
(文=米倉奈津子/ライター)