今クールの連続テレビドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)第1話が16日、放送された。



 ウェブ制作会社で働く東山結衣(吉高由里子)は、きっちりとやるべき仕事をこなしつつ、毎日定時で帰り、有給もすべて消化することをモットーにしている。

 そんな結衣を“要領が良く自分のことしか考えない女”だと敵視する同じ部の三谷佳菜子(シシド・カフカ)は、深夜残業も厭わず一度も会社を休んだことがないという“仕事命の女”。三谷はある重要な案件のプレゼンのリーダーを買って出るが、女子新入社員への指導が厳し過ぎたため恨まれ、プレゼン4日前にその社員が三谷のPCのパスワードを勝手に変更して、会社を辞めてしまう。

 それを部長の福永清次(ユースケ・サンタマリア)から責められた三谷は、なぜ自分が悪いのか理解ができず、さらに手社員の来栖泰斗(泉澤祐希)からやり方が古いと言われたことに腹を立てて職場を飛び出し、翌日、無断欠勤してしまう。福永が、誰か三谷の自宅を訪問して様子をみてくるよう言うが、みんなが嫌がるため、結衣が行くことに。三谷は自宅でベッドの上で布団にくるまったまま、自分は会社を休まないことだけが取り柄で、職場でも仕事の要領が悪い人間だと思われていると語る。

 それを受け結衣は、自分が新卒で入社した前の会社が超激務なのに加えて常に怒鳴られる“ブラック企業”で、あまりの忙しさのため入社半年のときに勤務中、階段から転倒して意識不明の重体に陥った経験から、他人にどう思われようと無理をせずに残業をしないことを心に誓い、実行していると明かした。

 さらに結衣は、副部長の種田晃太郎(向井理)が三谷の作成したプレゼン資料を褒めていたと告げ、さらに結衣が買ってきたおかゆを食べさせると、三谷は涙を流す。そして、無事に三谷が職場復帰するところまでが放送された。

●視聴者の関心は高い?

 結衣と種田は元恋人同士で、会社のエース社員でワーカホリックでもある種田が結衣の部署に異動になってくるという設定なのだが、第1話内では2人が交際中に結衣の前で種田が過労で倒れて結衣が泣き叫ぶシーンも流れたため、結衣が毎日定時で帰ることを徹底している背景には、重い経験に基づく確固たる信念があることがうかがえる。

 このように、ドラマとしてはしっかりとした芯があり、突然会社を辞めた女子新入社員がワガママ過ぎたり、三谷のパワハラ上司ぶりがあり得ないレベルだったりなど、ややデフォルメが強過ぎると感じる部分があるものの、ドラマ全体としては“悪くはない”というのが率直な感想だ。

 また、結衣と種田は今ではお互いに男女としてはまったく意識していないものの、心の奥底で人間として認め合っている様子がうかがえる描写も好感できるし、何やら部長の福永がかなりの曲者で、今後波乱の目になりそうなところも興味深い。


 そして今、現実に日本では多くの会社で「働き方改革」が進むなかで、本作が問う“定時で帰る”“人手不足”“若手社員と上の社員の価値観の違い”“残業をめぐる認識の齟齬”といったテーマが、早くも視聴者の間で議論を呼んでいるようだ。

 たとえば、結衣の価値観に肯定的な意見として、インターネット上では次のようなコメントが見られる。

「残業してなんぼの時代は15年くらい前に終わったと思う」

「定時で帰ることを悪い事だって思う上司は辛い」

「過労死はマジでバカげてる。俺が休んでも代わりはいくらでもおるでくらいで休もうぜ」

「定時で帰るからこそ業務を効率化がマスト。けどその業務を終わらせるために、『何をするのか』が重要」

 一方、自身の若手社員時代の経験をもとに、部下のことを思うからこそ厳しく接する三谷に共感する以下のような声もみられる。

「ミタニさん、言い方がちとキツイが間違ったことは言ってない」

「今の子達は叱られなれていないから大変」

「新人を辞めないように、過保護にするのも違うような」

「新人は権利を主張するなら義務を果たせよ。給料貰うんだから。自分の思う通りにやりたいのなら自分で会社を起こせばいい」

「私も新人の時先輩に朝は30分早く来て掃除しろだの、仕事しろだの言われたなぁ。
意味があったのかはわからないけど、経験としては良かったと思っている」

「お父さん達が社蓄と呼ばれても作った社会でユルク働いてるのが 今の働き方改革の時代子達」

 このほかにも、「古臭い残業ありきの世代となるべく定時で帰りたい世代がぶつかるのはあるあるですね」「今時こんなことやったら、大変なことになる」と自分の職場と重ね合わせてみる視聴者も多いようだ。

 ちなみに私が会社員の知人数名に聞いたところ、次のような感想もあった。

「働き方改革とかいって、組合員の若手社員に残業させられないから、結果的に非組合員の管理職がその分残業をする羽目になっている。結局、働き方改革なんてデタラメ」(40代男性)

「今の若手は、やらなきゃいけない仕事があっても、そのまま残して平気で帰ろうとするのは、ちょっと理解できない。
結局、上の世代にそのしわ寄せがきている」(40代男性)

「残業が良くないのはわかるけど、若手が仕事で無理をする修羅場を経験する機会がなくなってしまい、成長するチャンスがない。この子たちは将来大丈夫なのかと、本気で心配になる」(40代女性)

「残業することを評価する空気は皆無。5年前では考えられないほど変わったけど、やっぱり昔のほうが異常だった」(30代女性)

 このドラマ、想像以上に大きな議論を呼びそうだ。
(文=倉奈津子/ライター)

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