5月28日朝に発生し、20人の死傷者を出した神奈川・川崎の通り魔事件。6月2日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)では、ひきこもり傾向にあったとされ、事件後に自殺した岩崎隆一容疑者についての松本人志のコメントに賛否が飛び交っている。
同事件で巻き起こった「死ぬならひとりで死ぬべき」という議論について、松本は神妙な面持ちで「人間が生まれてくるなかでどうしても不良品ていうのは、何万個に1個、絶対これはしょうがないと思う」「それを何十万個、何百万個にひとつぐらいに減らすことはできるのかなっていう。みんなの努力で」「こういう人たちは絶対いますから、絶対数、もうその人たち同士でやり合ってほしいですけどね」と語気を強めた。
松本の持論を受け、「超クリティカルなポイント」と続けたのがコメンテーターの堀潤氏だ。堀氏はアメリカの捜査体制を例にして「心に負担が強いられている状況で起きるものに関しては、じゃあ事前にリストアップして踏みこんで、でも何もやってない状況で未然に逮捕するのかと。それは極めて人権を侵害する行い」と説明。「じゃあどうすればいいんだっていうのは、恐れず議論していくべき」と促している。
しかし、松本の「不良品」発言に批判の声が殺到。映画評論家の町山智浩氏はツイッターで「共演者が『それはナチスの優生主義につながる考えですよ』と諭してあげればいいのに…」と苦言。過去に起きた大量殺人事件でも松本が「不良品」と発言したニュースを引用した上で、「この人、いつもこうなんだ」「人を『欠陥品』と呼んでモノ扱いするような共感性の欠如こそが人を簡単に殺す行為の根底にあるんですけど、その自覚がないようです」と批判している。
また、女優の東ちづるは「私たちは人間。『良品』も『不良品』もない」とツイート。作家の盛田隆二氏もツイッターで「ワイドナショーって収録番組ですよね。
インターネット上でも、「やり合えって“殺り合え”ってこと? 差別主義者の極論にしか聞こえない」「フジは編集でカットすることもできたはずなのに、なぜ流したのか? その感覚を疑う」「松本もフジも『体使って』発言での炎上から何も学んでない」といった批判が多く見られた。
一方で、松本の持論に同調する声があることも事実だ。医師の高須克弥氏はツイッターで「松本人志さんのおっしゃるとおりだと思います。サイコパス遺伝子を持った個体ができるのは人間以外の生物でも見られます。突然仲間を殺傷し始めます」と投稿。ネット上でも「“不良品”という表現、松本さんは批判を恐れずよく言ったと思う」「表現は過激かもしれないけど、心の中にある本音としては松本さんと同意見」「前後の文脈から判断すれば問題視されるような発言ではない。無意味な言葉狩りはやめるべき」との声が上がっている。
松本は番組放送後に「凶悪犯罪者は人として不良品。ひきこもりが不良品? 誰の意見?」とツイートしているが、議論は過熱するばかりだ。
『ワイドナショー』放送前日の1日には、東京・練馬で元農林水産省事務次官の熊澤英昭容疑者が44歳の長男を包丁で刺して殺害する事件が発生した。死亡した長男にはひきこもりと家庭内暴力の傾向があったといい、熊澤容疑者は「川崎の事件を見ていて、自分の息子もまわりに危害を加えるかもしれないと不安に思った」などと供述していることから、中高年のひきこもりに対する処遇が社会問題になりつつある。
そんななかで、賛否両論を呼ぶことになった松本の発言。社会的課題の解決につながる、意義のある議論に発展してほしい。
(文=編集部)