“不良品”発言問題について、最後まで触れられることはなかった――。

 2日放送のテレビ番組『ワイドナショー』(フジテレビ系)内で、先月起きた神奈川・川崎の通り魔事件が報じるなかで、松本人志が「人間が生まれてくるなかで、どうしても不良品って何万個に1個、絶対に」「もう、その人たち同士でやりあってほしいですけどね」などと語り物議を醸している件について、7日のフジテレビ定例会見で石原隆取締役(編成担当)は「批判が出ていることは認識している」と言及。

「我々としては差別的な意味合いは含まれていないという判断で放送したが、そういった意図はなくても、そう受け取られる可能性があるということを受け止めて、今後の番組づくりに生かしていきたい」と釈明した。

 松本の発言をめぐっては、識者から以下のような厳しいコメントがあがっていた。

「共演者が『それはナチスの優生主義につながる考えですよ』と諭してあげればいいのに…」「この人、いつもこうなんだ」「人を『欠陥品』と呼んでモノ扱いするような共感性の欠如こそが人を簡単に殺す行為の根底にあるんですけど、その自覚がないようです」(映画評論家の町山智浩氏)

「これに至ってはもはや危険思想。生まれながらに不良品である人間などいない」(NPO法人ほっとプラス代表理事の藤田孝典氏)

「ワイドナショーって収録番組ですよね。こんな暴言垂れ流すフジテレビは『差別発言を擁護します』と宣言したも同然」(作家の盛田隆二氏)

 さらに一般の人々からも「不良品」という表現について批判的な声が多数みられていただけに、9日放送の『ワイドナショー』内で松本がどのような見解を述べるのかが注目されていたが、番組内で言及されることはなかった。これを受け、インターネット上では以下のような疑問の声があがっている。

まっちゃんの『不良品発言』に関して、徹底したスルー」

「完全無視ですか」

「全くコメントしないの?とも思っている」

「不良品発言について何も取り上げないのは何かもやもやするな」

「スルーされました、謝罪はしないけど上が身代わりになったし会見でいったみたいだしさ」

「入江さんの件をやるなら、是非、松本人志氏の『不良品』問題発言も取り上げて欲しいですね」

●難しい線引き

 テレビ局関係者は次のように語る。

「フジの幹部が会見で釈明するほど世間では議論が沸き起こるニュースになっていたのに、一切触れないというのは、『ワイドナショー』という番組の性質上、明らかに不自然です。『不良品』という発言の是非がどうかは置いておいて、松本も松本なりの考えを持って『不良品』という表現をしたのでしょうから、改めてその意図を説明するなり、間違っていたと考えるなら謝罪なりをすべきでした。

 番組としては、何を言っても再び炎上するのが目に見えているということで、スルーという判断に至ったのでしょうが、いくら番組の方針がそうなったとしても、松本ほどの大物が収録でこの件についてしゃべれば、局としても制止はできないはずですし、放送しないわけにはいかないでしょう。やっぱり松本には松本らしく、変に空気を読まずにきちんと発言してほしかったですね。そこがこの番組の良さだとも思いますし」

 また、別のテレビ局関係者は語る。


「松本は1月にも『ワイドナショー』内で指原莉乃に向かって『それは、お得意の体を使ってなんとかするとか……』などと言い批判を浴びましたが、今回の不良品発言もそうですが、ネット上では『もう、この人は社会問題を語るべきではない』という意見も出ているとおり、やはり松本は社会問題を扱う情報番組のコメンテーターとしては不適任だと思います。松本も世間の反応を意識して、問題提起をする意味でもあえてギリギリの発言を繰り出しているのでしょうが、それがギリギリではなくアウトになってしまっている。どこかズレていると感じます」

 フジの石原取締役は前出の会見で、「意見を言えなくなるのもナンセンスで、難しい舵取りではあるが、慎重にやっていくしかない」と語っていたが、放送において発言がどこまで許されるのかという線引きが、ますます難しい世の中になりつつあるようだ。
(文=編集部)

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