軟弱な男たちの姿に見かねて、あの先生が立ち上がった!
杉作J太郎先生の「男の偏差値がぐんとアップする美しさ勉強講座」
14時限目・今回の教材は伴直弥の『処女監禁』です「貧乏暇なし」という状態がそれほど悪いものではないと。つまりはそういうことなんだが。
はっきりさせておかなければならないのはだから貧乏が素晴らしい、一生貧乏で居続けるべきだ、ということではないんだね。
世の中は思うようにはいかない。
ということなんだ。
タンクローリーが横転して炎に包まれた。そのときにまばゆい光に包まれてウルトラマンになれるわけではないんだね。
関本郁夫監督の『処女監禁』という東映映画がある。
主演は伴直弥。連続特撮テレビ映画『人造人間キカイダー』に主演してた人だね。カメラマンのアシスタントかなんかの役だったと思うが、要するに貧乏な若者の役だった。
その若者に好きな女性ができた。三崎奈美が演じていたね。かわいい女優さんだった。
『処女監禁』ではまっぷたつにはならないんだが、伴直弥に好かれるんだね。この三崎奈美のことを伴直弥は清純な女性と信じているんだが、実はつきあってる男がいて、妻子持ちなんだ。
すこし前になるけど、千葉真一さんがカップラーメン食べてるというのがニュースになったの覚えてるかな。石立鉄男、伊藤雄之助、風間杜夫、シュワルツェネッガー、いろんな人がカップラーメンのコマーシャルやってたけど、実際に食べたらニュースになるのかとちょっと驚いたけどね。なんだかんだ言ってカップラーメン食べてたら貧乏ということなんだと思ったな。
「頑張ってる人はいつの時代もお金がないんです」
やっぱり千葉ちゃんはいい先輩だと思った。
そこを責めてもお金にならないところに近寄ってはいけないと教える人と、お金じゃないんだ、やりたいことやってダメだったらその時だよと教える人がいて。千葉ちゃんはその後者なんだね。俺もそうなんだと思う。これもギャンブルだからうまく行けばお金もちになることは可能なんだが、その結果を目指してるわけではないんだね。
でもそれは俺ら男から見た場合のことで、女性から見たらまったくなんの魅力もないんだね。この映画でも三崎奈美は、貧乏な伴直弥のことを男として見てなかったな。
で、伴直弥は悔しくてやりきれないもんだから、ふらふらと男のマンションに向かったんじゃないかな。幸せそうなファミリーの笑い声が聞こえてくるわけだ。
見た目は『人造人間キカイダー』のジローそのものだからね。これが『人造人間キカイダー』の劇中だったら、
「チェンジ! キカイダー、ワン、ツー、スリー!」
キカイダーに変身して、そうすればマンションの屋上にだってジャンプ一発だから軽々とベランダに乗り込み、
「デンジエンド!」
必殺技で男を倒すことができるわけだが現実は厳しい。『人造人間キカイダー』ではなく『処女監禁』だからね。いや、『処女監禁』も映画ではあるんだけど特撮ものではないからね。東映のポルノ映画だから。特撮もののようにうまく行かないわけなんだね。ポルノの世界で変身能力を奪われた伴直弥にできることはエア弓矢。弓を持ってるつもりで矢をキリキリ引いたまねをして、ぴゅんぴゅんと次から次に弓を射るアクションをした。なんにも持ってないわけだから人から見たらおかしい人なんだね。たぶん涙も流しながらなので。
以下、次回。
(つづく)
<隔週金曜連載>
【杉作J太郎:プロフィール】
すぎさく・じぇいたろう
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める男の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
おすすめ本:宇宙刑事ダイナミックガイドブック(杉作J太郎・編)(徳間書店ハイパームック)
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おすすめ本:東映スピード・アクション浪漫アルバム (杉作J太郎、 植地毅)(徳間書店)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13334829/
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