日本では年間30億着の洋服がつくられ、その半分にあたる15億着が売れ残りとなり廃棄されています。その過程で生まれる環境負荷は、世界的な問題となっています。
1. 衣服ロスって?
衣服ロスは、新品であったり、まだ使えたりするのにも関わらず捨てられてしまう洋服のことを指します。より多くの服を売るために過剰に作って在庫となってしまったり、業者同士の取引の過程で必要がなくなってしまったり、様々な事情から衣服ロスは生まれていきます。こうした在庫は、値段を下げて売ってしまうとブランド価値を下げることにつながるため、多くの場合は店頭に並ばずに焼却や埋め立てによって処分されます。
とはいえ、より多くの販売機会を作ることで売り上げを上げているアパレル業界が、苦しい現状の中で過剰在庫の現状を変えることは難しいもの。問題を認識していてもなかなか業界規模の変革が起きないのが現状です。
また、単に衣服がゴミになってしまうだけでなく、衣服の生産過程で環境負荷が生まれていることも大きな問題です。衣服を生産するには、原料であるコットンの栽培や染色などのために大量の水を使用しています。世界的に水不足となる中で、いずれ半分がゴミになってしまうもののために大量の水を使い、さらに汚染を引き起こしているのです。
近年ではファストファッションの台頭やSNSの影響により衣服の消費サイクルが早まっており、より問題が顕著になっています。
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2. 企業も対策に乗り出している ワールドの新業態、ユニクロのリサイクルボックスなど
こうした問題が叫ばれる中で、大手の企業も問題の解決に乗り出しています。
アパレル企業のワールドは、「アンドブリッジ(&BRIDGE)」という新業態をはじめています。この業態は「オフプライスストア」と呼ばれていて、さまざまなアパレルブランドの在庫を集めて、定価より安く販売するというものです。
また、ユニクロとジーユーでは、販売した全商品を対象にリサイクル活動を行っています。ユニクロやジーユーで購入し、不要になった衣服を店舗に持ち込むと、リサイクルしてくれるというサービスです。回収された衣服は、難民キャンプや被災地への緊急災害支援など、世界中の服を必要としている人たちに届けられるほか、燃料やリサイクル素材として活用されます。
3. 私たちにできることは?いらなくなった洋服の処分方法とは?
企業での取り組みが増えてきているなかで、私たち消費者にも環境のためにできることがあります。
(1)メルカリなどフリマアプリの利用
メルカリなどのフリマアプリが浸透したことによって、リサイクル・リユースの流れが一般的になってきましたよね。古着への抵抗感も減ってきていることでしょう。こうしたフリマアプリを積極的に利用することで、衣服ロスを防ぐことができます。興味がなくなってしまった服も、誰かにとって価値のある服であるかもしれません。積極的にフリマアプリを利用してみましょう。
(2)「古着deワクチン」などでの寄付
古着deワクチンとは、不要な衣類やバッグ・靴・服飾雑貨を送って世界の子どもにワクチンを贈ることができるサービスです。ネットで「古着deワクチン専用キット」を購入すると、衣類などを入れるための袋が届きます。送付した衣類は開発途上国に輸出され再利用されると同時に、キットの購入費用や古着の売上金からNPO法人を通じてワクチンが寄付される仕組みです。サービスの運営をするなかで障害者や発展途上国の人々の雇用にもつながっています。購入費用はかかりますが、一気に大量の古着を片付けることができると同時に、環境的にも社会的にも貢献することができます。
(3)衣服はしっかり検討して買う
買い物に行ったらなんとなく可愛いと思ったから買ってしまった、ネットで買ってみたけど思ったより自分には合わなかった...そうして着なくなってしまう服って誰にでもあるのではないでしょうか。こうした気軽な消費で多くのロスが生まれています。自分に必要な服か、長く着ることができるか、そうした検討をしっかりして必要な服を買うのも1つの手でしょう。
4. まとめ
衣服ロスに対して、私たち消費者にできることはさまざま。普段何気なく使っている服も、環境負荷をきちんと考えて着ることでもっと愛着が持てるかもしれません。過剰な消費スタイルは自分のお財布も苦しめることになりますから、一度衣服との関わり方を見直してみても良いかもしれませんね。