イギリスの実業家でヴァージン・グループ創始者・会長のリチャード・ブランソンが、ビジネスパーソンや起業家の質問に応えます。
Q:ハイ、リチャード。
A: 事業をおこす時は、投資家を説得するのはもちろん、顧客になってくれそうな人がいたら、すかさず話をしなければなりません。内気な人は骨が折れるでしょうが、僕は自身の経験から、乗り越えられない問題ではないといえます。講演に声がかかるようになったころは、舞台であがってしまい、自分の言いたいことがうまく伝えられませんでした。でも努力した甲斐あって、今では前の日の夜に眠れないようなことはなくなりました。
内向的で初対面の人と話すのが苦手ならば、練習あるのみです。でもそれは、自分自身でいることの練習です。威厳あるリーダーや一流の話し手になることは、誰もあなたに求めていません。単に自分のやっていることに対する情熱が伝われば、相手は興味を持つものです。
僕は十代の頃、友達と『Student』という雑誌を創刊しました。広告やインタビューをとるために、経験もないのにたくさん電話をかけなければなりませんでした。電話の相手に信頼してもらえるように、マーケティングディレクターやCFOのふりをして声色を変えたり、あるいは編集者や記者を名乗ったりしたものです。
自分の情熱を伝えるためには、ストーリーテリング(物語)の技術が必要です。興味をつかみ、コンセプトを説明し、なぜそういう事業を始めたのかをしっかり伝える。私が何らかのビジネスに投資する時は、製品と同時に、そのアイデアをもつ起業家に投資するのです。
ストーリーテリングの自信をつける方法として、オンラインでブログを書いたり、SNSで自分の考えを述べたりすることから始めるのもいいでしょう。私もVirgin.comで書いてきましたが、人々とつながる素晴らしい方法だと思います。
スマートフォンでかなりコミュニケーションができてしまうので、ともすると人と会うのが億劫になりますが、実際に顔をあわせるのは何よりも価値があることを、覚えておいてください。僕の会社でも、リーダーがスタッフや顧客と雑談する時間をとって彼らから学び、信頼関係を築くなかから、最高のアイデアがいくつも生まれてきました。テクノロジーは人に会うことの代わりを務めるのではなくて、もっとふれあいの機会を作るのです。それがテクノロジーの贈り物です。
自分の恐怖と向き合うのは、起業家であれば避けられないことです。投資家や取引先の説得、資金の心配、仕事を人に任せなければならない時の懸念など、怖くなるような問題は尽きません。
イギリスの実業家で、ヴァージン・グループの創設者・会長。ヴァージン・レコードを筆頭に、航空産業、携帯電話、出版、金融から、飲料水、宇宙旅行まで幅広い分野で事業を展開。気球で太平洋横断に挑戦するなど冒険家としても有名である。鋭い洞察力、ユーモアに富んだ発言と自由な生き方で世界中に根強いファンを持つ。
© 2016 Richard Branson, Distributed by The New York Times Syndicate
[原文: An Introverted Entrepreneur Can Become an Extrovert / 執筆:Richard Branson]
(抄訳:スマキ ミカ)
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