2017年6月13日(火曜日)、そんな気持ちにさせられる2つの出来事があった。
配車アプリ大手Uberの役員が、「女はしゃべりすぎる」と趣味の悪いジョークを飛ばす一方、米上院公聴会では、民主党の女性議員が同僚の男性議員にいきなり話を遮られた。しかも二度も。どちらのケースも、ネット上には非難の声が渦巻いた。しかし、こうした"炎上"は、さして珍しい話ではない。
学術研究や数えきれないほどの実例を持ち出すまでもなく、発言を邪魔されたり、話に割って入られたり、強引に黙らされたり、あるいは、主張することを禁じられるというのは、男社会で働くあらゆる女性が経験することだ。
発言を封じられる女性たち実際に女性の格差問題は、Uber1社やシリコンバレーを超えた問題であることを、数字が少なからずも示している。
2016年のフォーチュン収益ランキングトップ500社のうち、女性CEOは6.4%、2017年のアメリカ合衆国議会における女性議員は19.4%。コンサルティング会社「デロイト」と「アリアンス・フォー・ボード・ダイバシティ」が行った調査によると、フォーチュン500の企業の取締役会で女性が占める割合は、全体の5分の1となっている。
Uberの取締役の一人であるアリアンナ・ハフィングトンが、取締役会における女性の数を増やす重要性を述べたのに対し、デイビッド・ボンダーマン取締役は「おしゃべりに費やされる時間が長くなるだけ」とコメント。その後まもなく、ボンダーマン取締役は辞任した。
Uberのような男尊的企業風土で悪名高い企業じゃなくとも、女性は耳を傾けてもらうために様々な苦労をしており、数字にも明らかな通り、会社トップに上り詰めることには困難を伴う。
「何らかの責任ある地位にいる女性も、そうじゃない女性も、カマラ・ハリス上院議員が経験したこと、そして、どんな気持ちがするかということを理解できます」と、ニューヨーク・パブリック・ラジオのローラ・R・ウォーカー社長は語る。「自分の職務を果たそうとしたら、切り捨てられるか、無視されるんです」。
セッションズ司法長官に対する米上院情報委員会の公聴会では、鋭い質問を続ける元検察官のハリス上院議員をマケイン上院議員が遮って、セッションズ司法長官に答えさせるようにとたしなめ、さらには、委員長のリチャード・バー上院議員が、時間切れと称してハリス上院議員の質問を打ち切ったのだ。
この一件を踏まえ、「あなた自身の経験をシェアしてください」というニューヨーク・タイムズのフェイスブックでの呼びかけに応え、様々な業界の働く女性たちがポストした。
ある女性は「男性に話を遮られる女性を見た回数なんて数えきれない。しかも、そいつときたら、後になって、彼女が言おうとしたことをそっくりそのまま繰り返しているのよ。そんなことが少なくとも週に2~3回はある」と証言。
また、別の女性は「女性の上司が言うには、会議で意見を述べるときは、男性一人ずつに4回は話の邪魔をさせてから抗議するんですって。それ以上ひんぱんに抗議したら、面倒なことになるからって」。
蒸留酒製造業を営んで3ヶ月という女性は、必要な材料を受け取りに行くたびに相手先スタッフは、何が欲しいのかと毎回毎回、彼女の夫に尋ねると書いた。
数の上で劣る状況が問題の一つ膨大な数の研究データもこうした女性たちの証言を裏付ける。一貫して明らかなのは、企業でも、タウンホールミーティングでも、学区の教育委員会でも、もちろん上院議会でも、男性が発言権と決定権を持ち、会議の場を支配しているということ、そして、女性の発言の方がより多く遮られるという事実だ。
イエール大学経営大学院のヴィクトリア・L・ブレスコール准教授が2012年発表した論文によると、上院議会では有力な男性議員ほど発言が多いが、同じことは女性議員には当てはまらないという。また、別な論文は、男性は怒った方が結果的に報われるが、怒りをあらわにする女性は無能で、職場のリーダーにはふさわしくないとみなされてしまうと結論づけている。
まさにその通りと言えるかもしれない。トランプ大統領の元選挙参謀でCNNコメンテーターのジェイソン・ミラーは、ハリス議員が公聴会で「ヒステリックに」叫びながら質問していたと評したが、実際は、ハリス議員がセッションズ司法長官の発言を遮った場面でも、口調は平静なものだった。
このような出来事もまた、フェイスブックに投稿した女性たちが「あるある」とうなずいて、共感するところだ。
「文句を言おうものなら、締め出されます」と、ある企業の取締役会で唯一人の女性取締役は語る。「3人の取締役の交替を考えていた時期だったので、非公式な席で会長に対し、もう1人か2人、取締役会に女性を入れてはどうかと尋ねてみました。
会長は、私が重要な社のメンバーであるのは疑いの余地もないが、女性は人材としてふさわしくなく、私は例外なのだと答えました。さらに続けて言うことには、私にこの話をするのは、私が男性のように背が高く強いからで、普通の女性のように物事を混同したりしないからだと。全くもって、あっけにとられました」。
プリンストン大学で政治学を教えるタリ・メンデルバーグ教授は共著作の中で、決定権を持つグループにより多くの女性が加わったらどうなるかを、様々な研究データを組み合わせることで明らかにしてみせた。
その結果、学区の教育委員会の会議では女性が80%を占めるまで、男性と女性は話し合わず、数で劣ると男性はあまり発言しなくなるのがわかった。
「女性は数の上で劣る状況に置かれ、性別に基づくステレオタイプの偏見に直面させられているのです」と、ビジネスにおける女性のキャリアアップを支援する企業「カタリスト」のデボラ・ギリス社長を話す。
「女性はハードすぎるか、ソフトすぎるとみられ、正しいバランスという中間は決してないのです。つまり、有能か、好ましいと思われることはあっても、"有能で、なおかつ、好ましい"というのはありえないのです」
状況を変えようとする女性CEOの試みある女性たちは、この数の不公平を覆すために頑張っている。
ニューヨーク・パブリック・ラジオのウォーカー社長は、多くの女性に役職や取締役会のメンバーになるよう迫っている。「私たちの会社で女性の権限を高めることは、より良いディスカッションができることにもつながります」と語り、同社のポッドキャストのホストにも女性を増やしている。
コロラド州に本拠を置き、トロントのライトレールやロンドンのオリンピック関連施設のプロジェクトで実績を持つエンジニアリング企業「CH2M Hill」のジャクリーン・ヒンマン会長兼CEOは、伝統的に女性が稀な業界でビジネスをしている。しかも、同社は現在では、取締役の30~40%を女性が占め、会社を代表する地位についているのだ。
ここに至るまでにはそれなりに時間がかかったが、外的要因として顧客からの要望も大きかったという。多様性のあるエンジニアリングチームを求める女性担当者が増えたのだ。
どれだけの数の女性やマイノリティが活躍しているかは、顧客が会社を選ぶ際の判断材料になりうると、ヒンマン会長は部下に対して明言している。「競合他社から転職してきた男性は、そこら中にたくさんの女性がいることにまず驚きます」。
そして、とヒンマン会長は付け加える。
© 2017 The New York Times News Service
[原文:The Universal Phenomenon of Men Interrupting Women/執筆:Susan Chira]
(翻訳:十河亜矢子)