『夏目友人帳』の主人公「夏目貴志」は、やや内向的なところがあるものの本質的には心優しい性格の少年です。少し距離を置きながら他者と関わっていく姿勢は、彼女の祖母で人間嫌いの「夏目レイコ」とは隔たりがあると妖たちからも指摘されています。
今回はそんな「夏目貴志」についてご紹介いたします。

【※一部、ネタバレの内容を含む可能性が御座います。ご注意下さい。】

■愛情を受けずに育ってきた過去

 今でこそ、遠戚の藤原夫妻の元で平和に暮らしている夏目ですが、幼い頃に両親を亡くし親戚の間をたらい回しにされていた過去があります。彼の内向的な性格は、その過去により形成されたもので、傷つくことを恐れ他者に対し一歩引いた姿勢を取る事が多くなっています。

 田沼など、気の置けない友人たちにさえ、そのような接し方をする傾向がありますが、それは決して彼らを嫌っているわけではなく、寧ろ彼らを危険な目に遭わせたくないがゆえの、夏目なりの気遣いなのです。
しかし、ストーリーが進むにつれ、田沼や多岐などの仲間を頼ったり、弱音を吐いたりという一面も見せるようになります。

■人間も妖も嫌いになれない

 夏目が親戚中をたらい回しにされた理由のひとつに、「妖が見えるゆえの奇行」があります。しかし、夏目自身は妖の事を簡単に嫌いにはなりきれません。場合によっては、妖に強く感情移入してしまう一面もあり、自分から人が離れていく原因となったはずの妖に協力したり、その妖のために努力する姿勢を見せることも・・・。

 また、その感情移入っぷりは人に対しても強く表れ、時に他者を危険に晒している(または、晒してしまいそうになる)時の行動力は凄まじいものがあります。多少の無茶であれば構わずにやってのけてしまう様は、普段の大人しく内向的な姿からはおよそ検討もつきません。


■実は非常に寝相が悪い

 ニャンコ先生でさえ閉口する夏目の悪癖の一つに、「実は寝相はとても悪い」というのがあります。しかも、朝目覚めた時には元の位置に戻っているため、本人がその寝相の悪さを自覚していないというのも悪癖たる所以。まぁ、少しくらい夏目にも悪いところがある方が何だか親近感も芽生えてきますよね。

 夏目は心の優しさが何よりの長所です。大切な人に心配をかけたくなくてつい無茶をしてしまう、本当は大丈夫じゃないけどつい「大丈夫」と言ってしまう・・・。妖を見る能力があるがゆえに引き立つ「夏目貴志」のそんな「人間らしさ」こそ、彼のもっとも大きな魅力といえるのではないでしょうか。


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★記者:凛廻(キャラペディア公式ライター)

(C)緑川ゆき・白泉社/「夏目友人帳」製作委員会