●「力を抜いてカッコ悪くてもいいから自分らしく」
2013年にモデルとして活動を開始し、2015年に「前髪切りすぎた」でアーティストデビュー、現在は女優としても活躍している三戸なつめ。今年芸能活動10周年を迎え、初のフォトエッセイ『なつめろん』(宝島社)を8月12日に発売した。
同書は、三戸にとって思い出の地である台湾にて、若手映画監督として注目されている枝優花氏が撮影。エッセイでは、30代になった三戸の仕事論や結婚観、洋服とメイクの話など、三戸直筆のイラストとともに自身の言葉で語っている。三戸にインタビューし、10周年を振り返るとともに、同エッセイについて話を聞いた。

○■初のフォトエッセイに喜び「好きなことを仕事にできている」

――まず、10周年を迎えた心境をお聞かせください。

あまり気にしてなかったのですが、マネージャーさんと「10周年だから何かしましょう」と話していたときに「あ、10周年か」と思いました。そして、フォトエッセイを作っているときに、本当に私は好きなことを仕事にできているなと思ったんです。
ラジオ番組に出させてもらったりすると肩書きが多すぎてごめんなさいという気持ちになるぐらい本当にいろんなことやらせてもらっていて、マネージャーさんをはじめ周りの人たちがサポートしてくれたおかげだなと改めて感じました。

――『なつめろん』の発売が決まったときのお気持ちを教えてください。

10周年の記念として何かやりたいと思っていて、フォトエッセイを出したいという思いもあったので、叶えることができてよかったなと。やりたいと言い続けてよかったです(笑)

――タイトルの『なつめろん』はどのように決めたのでしょうか。

エッセイを書くということで、私なつめの論=なつめろん。メロンみたいでかわいいねという話になってこれに決まりました!

――制作において特にこだわったことを教えてください。


デザインなどに自分の感性を入れさせてもらい、エッセイも自分に嘘をつかないように、そのままの気持ちをそのまましゃべっているみたいにしたいと思って語り口調で書きました。

――三戸さんの思いがそのまま伝わる文章でした。

そうなればいいなと思っていたのでうれしいです。20代の頃に背伸びをしてしまうことが多く、こんなの自分じゃないなと思いながらどんどん自滅していったので、もっと力を抜いてカッコ悪くてもいいから自分らしく、ということを今回のエッセイでも意識しました。

○■演技の先生の言葉をきっかけに「本当の自分を思い出した」

――20代の頃に背伸びをしてしまったということですが、そこからどうやって力を抜けるようになったのでしょうか。

演技を始めたときに、演技レッスンで先生が「三戸なつめが台本を読んでどう思うかというのをもっと表現したほうが、あなたの魅力になるから」と言ってくださって、それが自分と向き合うきっかけにもなって、本当の自分ってこんな感じだったなというのを思い出し、だいぶ力を抜いて生きられるようになりました。


――背伸びをしてしまったのは、どうしてだったと思いますか?

デビューしてバラエティ番組にたくさん呼んでいただくようになってから、「こう言ったほうがその場の空気が悪くならないかな」「変なことを言ってMCさんを困らせないようにしなきゃ」といったことを考えて模範解答みたいな発言をしてしまうところがありました。例えば、結婚について聞かれたときに、結婚願望ないのに「いつかできたらいいですよね」と答えたらうまく回るかなと考えてしまい、そういうのが積もってしんどくなって自滅したのだと思います。

――抜け出せたのは何歳頃ですか?

26歳ぐらいで演技を始めたのですが、レッスンを受けてすぐ変われたわけではなく徐々に変わっていき、力を抜けられるようになったのは30代になってからだと思います。

――もう今はバラエティに出ても本音で話せますか?

そうですね。どこかで無理してしまうときはありますが、できるだけ自分のありのままでおしゃべりしようと思いながら出ています。だからバラエティが一番緊張します(笑)

――本当の自分をずっと偽っていたら心が苦しくなっていたと思うので、抜け出せてよかったですね。


本当によかったなと思います。基本的に自分のことは好きですが、悩む時期もあって。でもやっぱり自分が好きだってちゃんと思えるようになりました。

○■自分の好きなところは「開き直れるところ(笑)」

――ちなみに自分の好きなところは?

開き直れるところです(笑)。基本的にネガティブですが、あるとき開き直るんです。冷静な自分が「悲劇のヒロインぶってんじゃないよ!」ってツッコんで、「そうだよな。
こんな自分カッコ悪いわ!」って。「自分って開き直れるんだ!」と認識したのは30代になってからです。自分のことを分析するのが好きで、自分と対話していく中で徐々に気づいていきました。

――開き直れるかどうかというのも、生きていく上で大事なことですよね。

大事ですよね! マネージャーさんとしゃべっているときに、「なんとかなる」みたいなことを言ったら、「ポジティブ!」と言ってくれて、そこでも気づきがありました。「なんとかなる」は口癖です。
いい方向に変えるぞ! みたいな魔法の言葉だなと思います。

――ポジティブマインドになりたい人にアドバイスを送るとしたらどのような言葉をかけたいですか?

みんなそれぞれいろんな壁を乗り越えて今があって、確実に強くなっているんだよということを伝えられたら。いろいろ乗り越えて今生きている自分がいるわけだから、自分をしっかり認めてあげてほしいです。

ファンへの思いが原動力に「生きる活力になれたら」

――エッセイの中で、芸能界を辞めたいと思ったこともあったと書かれていましたが、それは背伸びしていた頃のことでしょうか?

そうですね。背伸びして本当の自分と離れてしまったときに、「嘘ばかりついて楽しくないなら辞めたほうが楽なのかな」と思ってしまって。でも、「今辞めたらテレビやエンタメが見られなくなる」と思い、後悔している自分が安易に想像できたので、耐えようと思って耐えていたときに演技に出会い、自分が出せるようになりました。そのときに、「私なんで芸能界にいるんだろう」ということも考えて、ファンの人たちの日常の活力やエネルギーになれたらいいなと思いました。

――すべての活動において、ファンの方への思いが原動力に。

はい。自分が小さいときに歌番組を見て元気になったり、漫画を読んでいろんなことを学んだり、そういうことで救われていたので、ファンの方にとって生きる活力になれたらうれしいです。

――SNSを通じてファンの方の声が届くと、活力になれているなと感じられそうですね。

コメント欄やDMなどで反応をもらえると良かったなと思います。自分が活動している姿を見て元気になりましたといったメッセージをもらうと、自分もすごく活力になります。これからもずっとファンの人たちとお互いがパワーになる関係でいたいです。

フォトエッセイ撮影地の台湾で「不思議な感覚に」


――フォトエッセイの撮影についても質問させていただきます。撮影地に台湾を選んだ理由を教えてください。

今の事務所に入ってから台湾でのお仕事が年に1、2回あって、台湾のカラフルな感じやゆるい感じが自分にすごく合っていて大好きになったので、ロケ地の希望を聞かれて真っ先に「台湾がいいです!」と伝えました。プライベートでも行っていて、今回の撮影が3年ぶりの台湾で、コロナが落ち着いて初めての海外でした。

――希望された台湾での撮影はいかがでした?

久しぶりに行ったのですごくテンション上がってしまって、仕事なのかプライベートなのか判断がつかないぐらい楽しみながら撮影をしました(笑)。その楽しさが写真にめちゃめちゃ出ていると思います。

――特に印象に残っている場所を教えてください。

台南の村「老塘湖藝術村」を訪れたときに、すごく懐かしい感じがして、昔ここにいたかもしれないという不思議な感覚に陥ったんです。(編集の)吉原さんにも「前世ここにいたんじゃない?」と言ってもらって、本当にそれが納得できる感じがしました。いつも台湾は「楽しい!」というのが大きいですが、初めて懐かしい、若干切ないエモーショナルな気持ちに。芸術家さんが芸術として作った新しめの村で、懐かしさを感じるっておかしな話ですが、故郷に帰って来たみたいな感じがしました。このフォトエッセイを作るときに幼少期や学生時代のことも振り返っていたので、リンクしたのかなと。

――「老塘湖藝術村」での撮影は、三戸さん自身がリクエストされたのでしょうか?

私が希望しました。コロナ禍で台湾に行きたいと思っていたときに、インスタでこの村を載せている人がいて、行ってみたいと思っていました。そのときは特別なものは感じてなかったのですが、行ったら不思議な感覚になって、忘れられない居場所に。また行きたいです。

結婚に興味はあるが「家庭を持つ自信はない」

――活動の幅が本当に広いですが、今後特に力を入れたいと持っていることを教えてください。

すごく大きく言うと、自分を表現することに力を入れたいと思っています。女優業においても、すべてにおいて自分を表現していきたいなと。イラストを描くのも自分の表現だと思っていて、自分をしっかり表現していくことが課題だと思っています。

――いつ頃から自分を表現することが課題に?

背伸びしてしまっているときに自分を上手に表現できなくて、徐々に自分を出せるようになってきたらすごく楽しくて、それを意識するようになってきたのかなと思います。

――今33歳ですが、どんな30代にしたいですか?

30代どうなるんでしょう!? 「結婚するのかな」「子供どうするんだろう」とか、30代が一番考える時期なのかなと。結婚願望はないですが、興味はあるんです。でも、家庭を持つ自信がなく、怖いなと思ってしまって。30代はずっとそういうことに悩んでそうです。悩んで、「別にいいじゃん、自分は自分じゃん!」と開き直って、その繰り返しな気がします(笑)

――興味はあるということなので、いい方と巡り合えたら結婚の可能性もあるわけですね。

その可能性もありますが、子供を育てられる自信が今はないですし、ずっと仕事はしていたいので、仕事と家庭を両立できるのか不安です。結婚したらびっくりしてください! 私にとって相当なことだと思うので(笑)
○■個展に意欲「これからも好きなことをやっていけたら」

――これから挑戦してみたいことがありましたら教えてください。

個展をやってみたいです。まだやったことがなくて、いつかできたらいいなと思います。

――ちなみに、今肩書きを聞かれたらどう答えますか?

今は「女優・モデル」かなと。これまでもその時々でやりたいことをやらせてもらってきたので、これからも好きなことをずっとやっていけたらいいなと思います。

――最後にファンの方にメッセージをお願いします。

『なつめろん』は枝さんが撮ってくれた写真がすごく素敵なので見ていただきたいです。そして、エッセイはしゃべり口調で書いているので、三戸なつめと読んでくれているあなたとの2人だと思いながら読んでもらえたらうれしいなと思います!

■三戸なつめ(みと・なつめ)
2013年にモデルとして活動を開始し、2015年に中田ヤスタカプロデュースによる「前髪切りすぎた」でアーティストデビュー。2018年より女優としても本格的に活動を開始し、2020年にNHK連続テレビ小説『おちょやん』、2022年にドラマ『ユーチューバーに娘はやらん!』や、タクフェス第10弾の舞台『ぴえろ』などに出演。数多くの映画、ドラマ、舞台など幅広いジャンルで活躍し、2023年で芸能活動10周年を迎えた。8月12日にフォトエッセイ『なつめろん』(宝島社)を発売。出版記念サイン会を8月26日に大阪、9月2日に東京にて開催。

スタイリング:藤原かよ ヘアメイク:桂川あずさ(CANNA)