●芸能界を目指したきっかけと女優業への思い
ゲスの極み乙女のドラマー、ほな・いこかとしても活躍している女優のさとうほなみ。数々のドラマや映画に出演し、女優としても存在感を高めているが、11月10日にはヒロインを演じた映画『花腐し』が公開、さらに、主演舞台『剥愛』も同日に開幕を迎える。
さとうにインタビューし、芸能界を目指したきっかけから、女優業への思い、音楽活動との両立などについて話を聞いた。

○■ゲスの極み乙女のブレイクで「プロという自覚が芽生えた」

――芸能界を目指したきっかけを教えてください。

小学5年生ぐらいのときにテレビドラマを見ていて「私これに出たい!」思ったのがきっかけです。そこからどうしたらドラマに出られるんだろうと模索していろいろ応募し、ご縁があったところに入らせていただいき、エキストラのオーディションを受けたり、舞台に出演させてもらうようになりました。

――最初は音楽ではなく、女優になりたいという思いからだったんですね。

そうなんです。
中学の時に吹奏楽部に入り、そのときお芝居のお仕事もしていたので、希望していたサックスやトランペットは担当できずパーカッションに配属されたのですが、それがよかったなと。そこでリズムの基礎が学べたので。高校に入ってバンドかっこいいと思ったときに、最初はギターをやりたいと思ってやったのですが全然向いてなくて、ドラムの子とパートチェンジしたら「私、叩ける!」となり、吹奏楽の経験が生きていると思いました。

――高校時代はバンドに夢中に?

その頃、芝居が自分のやりたいことと違う方面の活動が多くなって、離れていた時期でもあって、自分の中の熱量が高いものがバンドに。気がついたらバンドにのめり込んでいました。

――芝居が自分のやりたいことと違う方面になっていたとはどういうことでしょうか。


舞台の後に握手会があったり、純粋に演じるというよりも交流がメインに。本格的にお芝居をしたいと思った時に、もっと違うフィールドがあるんじゃないかなと思うようになり、気がついたらバンドに対する思いのほうが大きくなっていました。

――そして音楽でデビューすることに。

ゲスの極み乙女の前から組んでいたバンドで、ライブハウスに出るにしても自分たちでお金を払わないと出られず、バイトをしないと生活が成り立たない状況だったので、その頃は生きるのに必死でした。寝る暇も惜しんでバイトして、練習して、バイトしてという生活で。ゲスの極み乙女が、組んでからメディアに出たりするのが早かったので、順風満帆だねと言ってもらえますが、もがいていた時期がありました。


――ゲスの極み乙女としてブレイクし、生活は大きく変わりましたか?

そうですね。バイトを辞めた時はプロという自覚が芽生え、中途半端にやったらダメだなという気持ちになりました。

○■「役を生きる」ことを学び、役との向き合い方が変化

――ゲスの極み乙女として活動する中でも、女優業への思いはずっとあったのでしょうか。

音楽の技量をつけるのに必死で芝居のことは考えられていない時期もありましたが、少し落ち着いて自分を見つめたら、やっぱり芝居もやりたいなと。ドラマが好きで自分も出たいと思っていた頃の気持ちを思い出し、またお芝居と向き合いたいと思うようになりました。

――2017年にさとうほなみさんとしてお芝居を再開されてから数々のドラマや映画に出演し、重要な役どころも任されるように。
今の状況をどのように感じていますか?

出会いにすごく恵まれているなと思います。バンドのときから今までずっと、すごくいい出会いをさせていただいていて、お芝居を再開してからも、キャストさんやスタッフさんがいろいろ教えてくれて、「ご一緒できてよかった」と毎回言っている気がします。

――女優業に対する思いは変わってきていますか?

いろいろな人を演じていく中で、役の気持ちになってつらくなることもありますが、そういうのもひっくるめて楽しいと感じています。作品を重ねても、ずっと楽しい。ドラマ好きだったからこそ、その世界に自分がいることがうれしいですし、見てくださった方から役名で呼んでもらえるのもすごくうれしいです。

――特に大きな経験になったと感じている出会いを教えてください。


お芝居を再開してから2度目の舞台『虎は狐と井の中に(仮)』は自分の中で大きかったです。小学生のときから芝居をやっていたものの何もわかっていない状態で再び戻ってきて、まっさらな状態のところに色付けしていただいたなと。演出の和田憲明さんは「芝居とは」というものがしっかりある方で、和田さんからいろいろ学ばせていただきました。

――具体的に和田さんからどんなことを学びましたか?

「役を生きる」ということを学ばせていただきました。一番大事なことを学んだなと感じていて、それ以降、役との向き合い方や意識が変わった気がします。

主演舞台に意気込み「一皮むけたらいいな」

――主演舞台『剥愛』が11月10日に開幕します。
とある片田舎の集落にある剥製師の工房を舞台に、現在の社会に垣間見える問題を反映し、愛情のゆがみ、欲望、人が過ちを犯していくまでを描く物語で、出戻り長女である主人公・菜月を演じられますが、本作への出演が決まったときの心境をお聞かせください。

プロットを読んだときに大きく心が動いて、菜月という人物が、境遇とか何かが似ているわけではないんですけど、自分のように見えてきて、ぜひやらせていただきたいという気持ちに。菜月という役ができないと次に進むのが難しくなりそうなくらい存在が大きくなって、今自分が向き合うべき作品だと感じました。

――菜月とご自身の重なった部分とは?

家族であっても友達であっても、どこかいびつなものはあると思っていて、このお話と同じ立場ではなくても、何か違和感やすれ違いはあると思うんです。うちも100%仲良しという家庭ではないので、ちょっとしたズレみたいなところが重なったのだと思います。

――ご自身にとってとても大切な舞台になりそうですが、演じ切ったときにどうなっていたらいいなと思いますか?

人としても役者としても一皮むけていたらいいなと。それぐらい自分にとって大事な作品になりそうな気がしています。

――女優業と音楽活動はこれからも二本柱でやっていきたいと考えていますか?

はい。どちらも本当に楽しくやらせていただいているので、これからも両方頑張っていけたらいいなと。ほかにやりたいものが出てきたらそれもやりたいと思いますが、音楽と芝居が軸というのは変わらないと思います。

――女優としてはどうなっていきたいと思い描いていますか?

いろんな方と出会いたいし、共演させていただきたい方もたくさんいますが、自分がどうなっていくかというのは全然わかりません。楽しんで芝居をされている方たちとの芝居を楽しんでいけたらうれしいです。

○■現状に満足せず「ハングリー精神を持ち続けていきたい」

――お話を伺っていると、「楽しむ」というのがさとうさんにとってとても大切なキーワードみたいですね。

すごい「楽しい」って言っていますよね(笑)。昔から「楽しい」を追い求めている気はします。面白いとか、心が動くとか、そういうことをやっていないと心が死んでしまう気がしているので、そこは大事にしたいと思っています。

――楽しいを追い求め続け、やりたかった女優業でも活躍されるように。

今回の『剥愛』のようにやりたいと思ったことをやらせていただけるようになってきていますが、満足してはいけないなと。ずっとハングリー精神を持った生き方をしてきたので、そこはこれからも変わらない気がしています。

――ハングリー精神は、バイトもしながら必死に生活していた下積み時代に培われたのでしょうか。

芝居という自分のやりたいことが出てきた時からずっとそうだった気がします。それまではふわふわ生きていましたが、芝居をやりたいと思ってからは貪欲に自分から動くように。そして、自分1人で動くのではなく、前を進んでくれる人が増えてきたことで見える世界が広がっていき、それによってやりたいことがさらに広がっているので、現状に満足することなくハングリー精神はこれからも持ち続けていきたいと思います。

■さとうほなみ
1989年8月22日生まれ、東京都出身。2017年にさとうほなみとして女優活動を開始。ゲスの極み乙女のドラマー、ほな・いこかとしても活動。近年の主な出演作品に『愛なのに』(22)、『恋い焦れ歌え』(22)、『銀平町シネマブルース』(23)、ドラマ『六本木クラス』(テレビ朝日/22)、『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ/23)、Netflix『今際の国のアリスSeason2』(22)、Amazon Prime Video『次元大介』(23)、舞台『カノン』(21)、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(22)など。11月10日に映画『花腐し』が公開予定。主演舞台『剥愛』が11月10日~19日に東京・シアタートラム、11月22日・23日に愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース、11月25日・26日に大阪・扇町ミュージアムキューブにて上演。