デビュー作の映画『MOTHER マザー』(2020年)で日本アカデミー賞など新人賞を総なめにし、その後、数々の映画やドラマで活躍している奥平大兼。ディズニープラス「スター」で12月20日より独占配信される日本発オリジナルファンタジー・アドベンチャー『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』では中島セナとW主演を務めた。
奥平にインタビューし、本作の魅力や俳優業への思いなど話を聞いた。

○想像力を用いて主人公を演じた『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』

本作は、実写で描く現実世界「横須賀」と、アニメで描くドラゴンが棲む異世界「ウーパナンタ」の2つの世界が舞台。横須賀に住む空想好きな高校生・ナギ役を中島、ウーパナンタからやって来た落ちこぼれのドラゴン乗りの少年・タイム役を奥平が演じ、ナギの親友・ソン役をエマニエル由人、タイムが憧れるドラゴン乗りの英雄・アクタ役を新田真剣佑、謎のコンビニ店員・柴田/スペース役を森田剛が演じている。

実写とアニメで2つの世界を描く本作において、奥平は想像力が求められたと振り返る。

「CGが使われている作品なので、(タイムの相棒であるドラゴンの)ガフィンがいるものとして仮定しながら、タイムとナギとソンとガフィンという3人と1匹でお芝居をしないといけないというのは難しかったです。想像しながら演じるというのは、普段のお芝居とは違う脳を使うので」

そして、「日本でこういう作品を作ること自体すごく珍しいことで、今後もなかなかできることではないと思うので、あまり難しく考えずに楽しんでほしいなと。
アクションもあるし、画もきれいで、それを楽しんでいただくだけでもすごく魅力が詰まっている作品だと思います」と本作の魅力をアピール。「タイムから見習うところもあり、こういう子もいいんだなと思えるキャラクターなので、そういうところも見ていただきたいです」と語った。

演じたタイムについては「すごく正直で素直な子」と紹介する。

「見境なく人を信じる。人を全員平等に見ている子で、その感覚だと現代社会では生きていけないというか、どうしても人によって変わってくるところを、フラットに見られるのはすごいなと。違う世界の子なので、自分とはあまりにも似てないなと思いました」

○「いつまでも甘えられる立場じゃない」年下の俳優が多い現場で実感

デビューから3年。
今の俳優業への思いを尋ねると、「今できるお芝居を大事にしたい」という思いが芽生えたと明かす。

「どうしてかわかりませんが、以前出演した作品を見ると、今の自分と感覚が違うなと思ったんです。その当時も自分の感覚を信じて全力でやっているはずなので、1年前と今の自分の感覚が違うと思った時に、今の感覚で今しかできないお芝居をすることが大事なんだなと。あと5、6年したら高校生役もできなくなると思いますし、そういう意味でも、今できるお芝居を大事にしていきたいなと、今年を通じて思いました」

今年9月20日に20歳を迎えたが、あまり変化は感じてないという。

「お酒を飲むようになったぐらいで、あまり自分の中で変化はないです。正式に大人という類に入り、大人になったんだなというのは少しありますが、子供のままがいいなという思いもあります(笑)」

今年7月期には日本テレビ系ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』でキーパーソン・星崎透を演じ注目を集めたが、年下の俳優が多く出演していた本作で芽生えた思いがあったという。


「あんなに年下の子が多い現場は初めてで、だんだん年下の子が増えてくるんだなと感じ、いつまでも甘えられる立場じゃないなと思いました。若い世代の役者の一員としていさせていただいていますが、これから同世代の役者たちと切磋琢磨していけたらいいなと思います」

○俳優業の楽しさは「年々増しています」

俳優としてやっていく覚悟が固まった転機を尋ねると、「僕はデビュー作がそうでした」と『MOTHER マザー』を挙げた。

「あの時に初めてお芝居して、公開まで1年あったのですが、その1年間ずっとお芝居したくて。公開されやっとデビューした時に、ありがたいことにいろんなお仕事をいただき、俳優としてやっていきたいという思いはその時から変わっていません」

デビュー作にして演じる面白さを実感するも、「100%まだ味わえていない」と感じたそうで、「もっと楽しむ要素がたくさんあるんだろうなと思い、俳優って面白そうだな、やってみたいなと思いました」と振り返る。

そして、作品を重ねるたびに俳優業の楽しさは増しているという。

「年々増しています。
もちろん大変なことも増えますが、作品で出会う人たちが好きで、演者さんもそうですが、監督やスタッフさんも全員好きなので、そういう方々ともう一度お会いできるようにこれからも頑張っていきたいと思います」と笑顔で語った。

■奥平大兼
2003年9月20日生まれ、東京都出身。映画『MOTHER マザー』(20)で長澤まさみ演じる秋子の息子・周平役としてデビュー。同作にて第44回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、数々の新人賞を総なめにした。主な出演作に映画『マイスモールランド』(22)、『あつい胸さわぎ』(23)、『ヴィレッジ』(23)、『君は放課後インソムニア』(23)、ドラマ『恋する母たち』(20/TBS)、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(23/日本テレビ)など。主演映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』が2024年3月8日に公開予定。


スタイリスト:伊藤省吾(sitor) ヘアメイク:速水昭仁(CHUUNi Inc.)