民間の賃貸住宅よりも家賃の安い「公営住宅」。家賃が高騰する昨今、「公営住宅が気になる」という方も多いのではないでしょうか。
しかし、公営住宅は入居に条件が設けられているため、注意が必要です。この記事では、公営住宅の家賃や入居条件、メリット・デメリットをご紹介します。

■公営住宅の入居条件とは

公営住宅とは、割安な賃料で利用できる低所得者向けの公的賃貸住宅です。都道府県や市区町村などの地方公共団体が提供しており、主なものとして県営住宅や都営住宅、市営住宅などがあります。

公営住宅の家賃は、建物や間取りで一律に決まっているわけではなく、入居者の収入や住宅の規模、立地によって異なります。また、公営住宅の募集に申し込む際は、収入などの条件をクリアしていなければなりません。
公営住宅の入居資格の主な例は、以下の通りです。

<単身者の場合>

・60歳以上の人、障害者手帳の交付を受けている人(等級による条件あり)、生活保護受給者など一定の条件を満たす人

・月収額が基準金額の15万8,000円以下

・住宅に困窮していること

<家族の場合>

・同居親族がいること

・月収額が下記の基準金額以下
 一般世帯: 政令月収15万8,000円以下
 裁量世帯: 政令月収21万4,000円以下

・住宅に困窮していること

裁量世帯とは、障害者手帳の交付を受けている人(等級による条件あり)、同居者に未就学児がいる世帯などが当てはまります。

また、政令月収は「(年間総所得額-控除額)÷12」で計算します。年間総所得額は、入居しようとする家族全員の1年分の所得の合計です。この時、年間総所得額から特定の控除額を引いて計算しますので、実際の収入額より低く算出されます。そのため、実際の月収が15万8,000円を超えても「政令月収15万8,000円以下」に当てはまるケースもありますので、注意が必要です。


公営住宅は基本的に、家族での入居を想定しています。単身者の場合、収入条件を満たしていても、高齢の人や障害のある人、特別な事情のある人でない限り、入居資格がありません。なお、公営住宅の入居条件は、自治体によって多少異なります。入居を検討している方は、各自治体のホームページなどで必ず詳細を確認しましょう。

■公営住宅の家賃はどのくらい?

では、公営住宅の家賃はどのくらいなのでしょうか。埼玉県川口市の「令和5年度市営住宅家賃表」を見てみると、最も家賃の低い物件は2UDK(Uは2~3畳の多目的スペース)で1万6,100円~2万9,800円となっており、その他の物件も、全て1万円台後半~3万円台からの家賃となっていました。
なお、同じ建物の同じ間取りでも、1~3階より4階以降の部屋の方が家賃は低めに設定されています。

また、東京都住宅政策本部によると、2人世帯で練馬区のある公営住宅のアパート(3DK・55㎡・昭和59年度建設)に住んだ場合の家賃は、所得によって以下のように設定されています(左が所得金額、右が家賃)。

・0~162万8,000円…3万300円
・162万8,001円~185万6,000円…3万6,800円
・185万6,001円~204万8,000円…4万3,500円
・204万8,001円~227万6,000円…5万200円
・227万6,001円~261万2,000円…5万8,000円
・261万2,001円~294万8,000円…6万6,600円

所得によって家賃には3万円以上の開きがありますが、安くて3万円台、高くても6万円台で都内の3DKに住めるのは、一般的に見て大変お得と言えるでしょう。
■公営住宅のメリット、デメリット

公営住宅は家賃が安いことが魅力ですが、その反面、デメリットもあります。公営住宅のメリットとデメリットを確認してみましょう。

<公営住宅のメリット>

公営住宅の一番のメリットは、面積や間取り、築年数などが同程度でも、周辺の家賃相場と比べてかなり安く住めるという点です。
たとえば、東京都が2023年4月に入居者を募集した表参道のアパートは、2DK(広さ42m2)で家賃6万2,000円でした(月額最大、世帯収入で変動)。近隣の民間の類似物件を見ると、家賃は18万円~19万円が相場ですので、今回の物件は相場のおよそ3分の1の家賃で住めることになります。

家賃がこれだけ抑えられれば、住居費の負担が大きく減り、子どもの教育費などにもお金をかけられるでしょう。また、自治体によっては、一定の所得以下の家庭に独自の給付を行っているところもあるため、家賃の安さとあわせて家計負担がかなり軽減する家庭も多いはずです。

公営住宅のもう一つのメリットとしては、世帯数の多い大規模な公営住宅の場合、敷地内に公園や庭園が整備されている、近隣にスーパーや学校、医療施設がそろっているなど、住環境に恵まれているところが多いという点です。さらに、民間の賃貸とは違い、入居の際の礼金や仲介手数料、保証人などが不要であるケースも多くみられます。


<公営住宅のデメリット>

公営住宅には築年数の古い物件もあり、5階建てにもかかわらずエレベーターのない建物も多く残っています。そのため、高齢者や幼児がいるなど、家族構成や年齢によっては住むのが難しい場合もあるかもしれません。

また、申し込み時には入居資格を満たしていても、住んでいるうちに収入基準を超えるなどして条件から外れた場合は、部屋の明け渡しを求められ、引っ越さなければならない可能性もあります。収入状況などによっては長く住み続けられないこともあるため、注意しておきましょう。
■公営住宅を希望する場合は入居資格を調べてみよう

公営住宅には入居資格があり、それをクリアしない場合は入居することができません。また、募集時期が限られているところも多く、そのタイミングに合わせて申し込みの準備をする必要があります。
さらに、応募が多い場合は抽選となり、倍率が非常に高くなることも珍しくありません。そのため、公営住宅は希望すれば必ず住めるものではありませんが、家賃負担を少しでも抑えたいという方は、入居資格を満たしているか一度調べてみることをおすすめします。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら