一度は乗ってみたい車「ポルシェ」。憧れの車を手に入れて、なおかつ不自由のない生活を送るには、年収はいくらあれば可能なのかを試算してみたいと思います。
条件として東京都内在住というのも加えましょう。

ちょっと頑張れば手に入れられる世界なのか、それともとんでもない富裕層の話なのか、車の値段、維持費、住居など、さまざまな視点から試算してみたいと思います。

ポルシェはいくらで買える?

ポルシェと一言でいっても、たくさんのラインアップがあり、値段もさまざまです。ここでは、一般的にポルシェといって思い浮かぶ「ポルシェ911」を例にしたいと思います。

ポルシェ公式ページの"911 Carrera & Targa Models"をみると一番安い「911 Carrera」が1,620万円、「911 Carrera GTS」が2,059万円、「911 Carrera 4 GTS Cabriolet」と「911 Targa 4 GTS」が2,390万円、一番高い「911 Edition 50Years Porsche Design」が2,700万円とされています。

これらの価格は本体価格であり、実際はこの価格にオプションなどをつけるので、さらに金額は上がります。
ポルシェは標準装備が最小限であることが多く、オプションを多くつける必要がある車種です。オプションは程度にもよりますが、プラス300万円で考えてみます。

試算するにあたって、ポルシェの購入価格を出さなければなりません。ここでは最低ラインとして、「911 Carrera」の1,620万円を基準とします。そこにオプション300万円と諸費用などを加えて「2,000万円」をポルシェの購入価格として試算していきたいと思います。
ポルシェの維持費はどのくらい?

ポルシェの維持費を考える前に、一般的に車を所有するとかかってくる1年あたりの維持費をみてみましょう。


自動車税・重量税
・自賠責・任意保険料
・ガソリン代
・駐車場代
・整備・メンテナンス費用

車種によって維持費は大きく変わります。ポルシェ911 Carreraの場合はどうでしょうか。
○自動車税・重量税

自動車税は、排気量3リットル以下なので年額5万円、重量税は1.5~2トンになるので2年で3万2,800円、1年にすると1万6,400円です。自動車税・重量税を合わせると年間6万6,400円です。
○自賠責・任意保険料

自賠責保険は年間1万1,500円です。任意保険は保険会社やその人が求める補償内容によって違いがあるので、一概にいくらとはいえませんが、年間4万円~8万円程度になるでしょう。

○ガソリン代

燃費10km/L、年間1万km走行と仮定して計算します。全国のガソリン平均価格(2024年1月29日時点)のハイオクガソリン価格185.8円をもとに計算すると、年間で18万5800円です。
○駐車場代

駐車場は、自宅の敷地内にある以外は使用料を払って借りることがほとんどです。その場合はその土地の地価が参考になります。しかし、ポルシェの場合、平置きや青空駐車場、マンションによく設置してある機械式の立体駐車場は高級車であることから利用しないとここでは仮定します(自走式の地下駐車場はありかと思いますが)。今回は、駐車場付きの家に住んでいることを前提にしたいと思います。

○整備・メンテナンス費用

ポルシェに乗る人が、最もお金をかけるのが整備・メンテナンス費用ではないでしょうか。ここには車検代も含みます。消耗交換品であるオイルやタイヤは、ポルシェ指定のハイパフォーマンスなものが求められ、高いコストがかかる傾向に。こうした費用はかけようと思えば際限なくかけられるので、相場というものはありませんが、少なく見積もっても年間で15万円~20万円程度はかかるでしょう。

以上を総括して、ポルシェの維持費は年間で50万円以上はかかると考えられます。人によっては年間100万円以上かける場合もあるようですが……、ここでは50万円としましょう。

都内の駐車場付きの家はいくら?

次に都内で駐車場付きの家を買うにはいくら必要かを考えていきましょう。当然ながら、東京都下と東京23区では土地の値段が大きく違います。ここでは、都内と言った時にイメージする東京23区内の駐車場付きの新築戸建ての価格を参考にしてみましょう。

東京カンテイが発表した「新築一戸建て住宅平均価格」によると、東京23区の新築一戸建ての平均価格(2023年12月)は8,293万円、平均土地面積は113.7平方メートルです。ガレージ付きの戸建てと考えるとある程度の広さが必要なので、土地面積は最低でも120平方メートル以上は必要でしょう。また、シャッター付きのビルトインガレージは建築費用もかかるので、少なく見積もっても1億円以上と考えていいのではないでしょうか。

年収いくらあれば実現できる?

1億円の住宅に住み、2,000万円のポルシェを買って、年間の車の維持費を50万円以上かけながら、無理なく生活できる年収を試算してみましょう。

まずは、住宅ローンから考えてみましょう。
一般的に、住宅ローンを組んで物件を購入する際に、望ましいとされる条件は次の二つです。

・物件価格の20%の頭金を用意する
・月々の返済額を手取り収入の25%以内にする

ただし、物件価格が1億円なので、手取り収入の30%まで割合を増やして計算してみます。

<1億円の物件を購入>
頭金(20%): 2,000万円
借入金: 8,000万円
※金利2%(固定金利・元利均等返済)、借入期間30年で計算
※月々の返済額は手取り収入の30%とする

この条件で1億円の物件を無理なく買える年収を導き出してみましょう。

月々の返済額:29万6,000円

この金額を手取りの30%にすると、手取り収入(額面の80%)は以下になります。

98万6,667円(額面123万3,334円)

年収に換算すると約1,480万円(額面)です。

ここまでは、物件価格から毎月の返済額を出して年収を求める方法でしたが、さらにポルシェの代金と維持費がかかってきます。

ポルシェの購入方法は、300万円を頭金として支払い、残りの1,700万円をオートローンで購入するとします。60回払い、金利2.9%で計算すると、月々の支払いは約30万円になります。加えて、車の維持費を月5万円(年間60万円)とすると、35万円は手取りを増やさなければなりません。

前出の手取り額98万6,667円に35万円を加えると133万6,667 円となり、額面にすると約167万円、年収に換算すると約2,000万円です。

年収2,000万円、月収167万円あれば、住宅ローンと自動車関連の費用を支出しても生活費として約69万円が残ります。一般的に考えると豊かな暮らしができるレベルですが、例えば都内で子ども2人を私立の学校に通わせるケースを考えるとそれほど余裕はありません。

今回の試算の結論は、年収2,000万円が都内でポルシェに乗るための最低年収と考えられます。

年収2,000万円はどのくらいいる?

厚生労働省の「2022年 国民生活基礎調査の概況」によると、世帯年収が2,000万円以上の世帯の割合は1.4%です。この1.4%の世帯の最多所得者(世帯の中で前年の所得が一番多かった者)の職業分類をみてみると、最も多いのが、「管理的職業従事者」で約34%、次に多いのが「専門的・技術的職業従事者」で約28%、その次が「サービス職業従事者」約7%となっています。

「管理的職業従事者」というのは、一般の会社であれば、会社役員や管理職員など経営に近い位置にいる人たちのことです。「専門的・技術的職業従事者」は、その分野で特化した専門的知識や高い技術を持つ職務に従事している者で、研究者や開発技術者、医師や弁護士などもここに分類されます。

このデータからもわかるように、年収2,000万円以上を普通の会社員が実現するのは容易ではなさそうですね。
まとめ

都内在住でポルシェに乗るには年収はいくら必要かというテーマで、車の価格、維持費、住宅価格をもとに検証した結果、最低でも年収2,000万円は必要という結論になりました。

ただし、ポルシェにもさまざまなランクがあり、車にかける費用も人それぞれなので、ここから大きく外れることもあります。あくまでも目安として考えてください。今回の試算では都内在住という条件があったため、特に高所得である必要がありましたが、地方であれば、そこまで年収が高くなくても実現可能となるかもしれません。お金の使い方は人それぞれ、人生を豊かにする使い方ができるといいですね。

石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中! この著者の記事一覧はこちら