NTT東日本 山梨支店およびNTT e-Drone Technologyは、山梨県企業局における水力発電設備の点検業務の効率化などをめざし、ネットワーク構築およびドローンの導入支援などを実施。それにあわせて、自動飛行・遠隔操縦ドローンを用いた水力発電設備の点検に関する取材会を開催した。


山梨県の県営水力発電事業においては、「設備の老朽化」「高齢化・人手不足」「災害の激甚化」といったリスクが顕在化。これらの課題を解決するために、これまでからデジタル技術を積極的に導入し、企業文化を変革させてきた。

まず第一に、ネットワークカメラを導入し、発電所の運転状況を見える化。そして、スマートグラスの導入によって、ベテラン職員による遠隔支援を実現。さらに、発電所の運用にAIを導入し、ダム流入量の予測などが行われている。

そして、令和5年度には、新たなDXの取り組みとして、水力発電所の保安管理に、「水圧鉄管点検ドローン」と「発電所点検ドローン」といった2種類のドローンを導入。
経済産業省の補助金を活用し、NTT東日本が通信環境整備、NTT e-Drone Technologyがドローン導入といった導入支援を行っている。

ドローンを導入する以前は、水圧鉄管路の設備点検を職員2名が月1回実施してきた。しかし、高低差が200~300mあり、1回の点検に半日を要するなど人的負担が大きく、老朽化による漏水や落石などが発生しており、安全で迅速かつ正確な状況把握が求められていた。そこで、設備点検に伴う転落リスクの回避や職員の負担軽減のために導入されたのが「水圧鉄管巡視ドローン」。

「水圧鉄管巡視ドローン」は、あらかじめ決められたルートの自律飛行が可能。安定的な運行を可能とするため、操縦機とドローンは、Wi-FiとLTE回線の2回線で接続されているという。


一方、発電所の設備点検が月2回行われているが、発電所の集中監視を行っている発電総合制御所から野呂川発電所までは片道2時間におよぶ時間がかかる。台風や土砂災害により、道路が崩壊するなど、移動に伴う危険が大きいという課題に対しては、移動に伴うリスクを回避するために、発電所内に「水力発電所巡視ドローン」が設置された。

「水力発電所巡視ドローン」は、インターネットを利用して、遠隔地から操作。あらかじめ決められたルートでの自律飛行により、設備点検が行われる。なお撮影データはクラウドに保存されるため、いつでも、どこでも動画閲覧が可能なのも大きな特長となっている。

「山梨県企業局では、山梨県の豊富な水、地形を活用して発電事業を行っており、電気を安全供給することで、多くの利益を生み出し、県民の福祉の向上に役立てている」と話す、山梨県企業局 電気課 課長の村松修一氏。
その中で、職員の高齢化、人手不足、そして災害の激甚化などの課題を解決する方法として、ドローンの導入に踏み切ったと振り返る。

ドローンによって、発電所の保安管理の高度化、さらに効率的な発電所の運用が可能になるという村松氏は、「効率的な運用を行うことで、電力の安定供給を続け、稼ぐ力を強化した水力発電事業を続けていきたい」と今後の展望を示した。山梨県企業局では、ドローン活用することで、地域資源を活用した水力発電事業を通じて、地域の活性化や、地域の減災に貢献する、地域共生型の再生可能エネルギー事業を目指していく。