ROIDZ TECHは4月3日、3輪タイプの電動モビリティ「Raptor」を発表した。この製品の大きな特徴は、車体が上部(デザインユニット)と下部(ベースユニット)の2つのパーツに分かれており、分離/合体が可能なこと。
デザインユニットを交換すれば、形状や機能を自由に変えられるという。価格はまだ決まっていないが、年内の発売を目指す。

同社は、千葉工業大学・未来ロボット技術研究センター(fuRo)の古田貴之所長と、RDSの杉原行里社長が2人だけで設立したベンチャー企業。古田氏は長らく、fuRoでロボットの研究開発を率いてきたが、「そろそろ世に送り出すプロダクトを作りたいと思った」と、起業の動機を説明。そして最初に注目したのが、モビリティの分野だった。

Raptorのサイズは1,190mm/510mm/880mm(全長/全幅/全高)、重量は54kg(バッテリ込み)。
前輪は12インチ×2、後輪は10インチで、最高40km/hでの走行が可能だ。ハンドルの右手のグリップがアクセルで、左右両側にブレーキレバーを備える。3輪なので安定性が高く、誰でも簡単に操縦できるという。

通常、3輪だと安定する反面、小回りが難しいという課題があるが、Raptorは前輪にリーン(傾く)機構を実装。3輪を接地したまま、高速なコーナリングが可能だ。ちなみに“Raptor”とは猛禽類のことだが、車輪を傾けて急旋回するところがハヤブサのように見えたということから、そう名付けられたそうだ。


下部のベースユニットには、バッテリなど走行に必要なコア機能を集約。一方、上部のデザインユニットは、ハンドル、シート、各種メーターやボタンなど、実際に乗ったり操作したりする部分になる。上下のユニットは、独自の「連結ユニット」で接続。レバー操作だけで、簡単に分離/合体することが可能だ。

Raptorのユニークな点は、下部を共通プラットフォームとして、上部を自由に交換できることだ。たとえば、スポーティなスタイルで街乗りを楽しむのも良いし、大きなカゴが付いたスタイルなら買い物に便利だ。
また上部を完全に無人化し、自動配達ロボットとして活用することまで考えられるという。

一般的に、モビリティは用途や世代をある程度想定して製品化するが、Raptorは上部を交換可能とすることで、若者から高齢者まで、様々な世代の用途に対応できる。また、上部の仕様は公開し、サードパーティの参入を促進。技術的な難易度が高い下部は共通にして、安全性や信頼性を確保。自由度の高い上部を広く開放することで、活性化を狙う。

古田氏は、「街中で電動のキックボードやスクーターをいろいろ見かけるが、似たようなデザインが多く、知能化技術もあまり入っていない」と指摘。
「インターネットの世界では、クリエイターがサービスを作ることができる。モビリティの開発も、技術者以外に自由開放できればいい」と、その狙いを説明する。

しかし、上部と下部を分離可能にすると、難しいのはその間のインタフェースをどうするか、ということだ。簡単に分離できるような仕組みが望ましい反面、走行中は伝達するものを確実に伝達しなければならない。上下のやりとりが電気信号だけであればまだ分かりやすいが、ステアリングやブレーキレバーの動きもある。

Raptorは、ブレーキやステアリングの動きは電気を介さず、メカで伝達する方式を採用した。
たとえ電源が落ちても、ソフトウェアがハングアップしても、ハンドルを切れば向きを変えられるし、ブレーキレバーを握れば止まることができる。これは、安全性を最優先にした結果だ。

現在の機体はバージョン2で、次のバージョン3が製品版になる予定。これまで、テストコースで走行試験を繰り返してきたが、今後さらに完成度を上げてから発売するという。なお気になるのは価格だが、「10~20万円というわけにはいかないが、高級なバイク程度に抑えられるようにしたい」(杉原社長)ということだ。