NVIDIAのクラウドゲーミングサービス「GeForce NOW」。これまでKDDIとSoftBank経由でサービスを展開していたが、2024年4月4日からNVIDIA直営でもサービスがスタートした。
最大の特徴は、海外で提供されていた「Ultimateメンバーシップ」が選べるようになったこと。今回試用する機会を得たので、GeForce NOWの使い方、どこまで快適にプレイできるかなどを含めてレビューをお届けしたい。

ついにNVIDIA直営、Ultimateプラン提供開始の「GeForce NOW」

「GeForce NOW」について、改めて紹介しておこう。これは自分が所有しているゲームをクラウド経由でプレイできるサービスだ。Windows、macOS、ChromeOS、iOS、Android、スマートテレビ、Android TVなどをサポートしており、高速なインターネット回線さえあれば、デバイスを選ばず好きなゲームをプレイできるのが最大の特徴と言える。

対応するゲーム配信サービスはSteam、Ubisoft、Epic Games、Xboxだ。
これらサービスで配信しているゲームなら何でもプレイできるわけではないが、現在のところ1,800タイトル以上が対応とかなりの数だ。毎週木曜日に新作が追加される。

インターネット要件は720p/60fpsで15Mbps、フルHD/60fpsで25Mbps、フルHD/240fpsで35Mbps、4K/120fpsで45Mbps以上の速度が必要としている。光など、高速回線を導入している環境なら問題ないだろう。**

システム要件については多岐に渡るため詳しくはNVIDIAのWebサイトで確認してほしいが、Windowsのハードウェア環境は、2.0GHz以上のデュアルコアx86-64 CPU、4GB以上のメモリ、DirectX 11以上をサポートするGPUでNVIDIA GeForce 600シリーズ以降、AMD Radeon HD 3000シリーズ以上、Intel HD Graphics 2000シリーズ以上となっている。

2012年以降のWindows PCなら、デスクトップ、ノート問わず多くが対応に入るだろう。
3D性能の低いノートPCでも最新ゲームが遊べるのは大きな強みと言える。プランは無料、Priority、Ultimateの3種類。違いは下の表にまとめたので確認してほしい。1日だけのプランもあるので試しに使ってみるのもよいだろう。

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フルHD/240fps、4K/120fpsやHDR、VRRも可能なUltimateメンバーシップ

Ultimateだけが受けられる恩恵は非常に多い。まず、「GeForce RTX 4080 SuperPOD」に独占アクセスできること。
これによってアップスケーラー、フレーム生成、レイの再構成を組み合わせて描画負荷を大きく軽減してフレームレートを向上させるDLSS 3.5に対応できるほか、フルHDでは240fps、4Kでは120fpsの高フレームレートでのプレイが可能、可変リフレッシュレート(VRR)のG-SYNC、明暗をより際立たせるHDRもサポート。VRRやHDR対応で高リフレッシュレートのゲーミングモニターの性能をフルに活かせる環境が用意されている。

このほか、GeForce RTX 4080 SuperPODのパワーによってローカルでプレイするXbox Series Xよりも低遅延を実現しているという。ここでの低遅延とは、ボタンを押してから実際のゲーム側で実行されるまでのシステムレイテンシーのこと。シビアな撃ち合いとなるFPS/TPSでは特に重要なポイントだ。

また、3,840×1,600ドット、3,840x1,080ドット, 3,440x×1,440ドット、2,560×1,080ドットとウルトラワイドの解像度もサポート。
それぞれ120fpsでのプレイも可能になっている。ただし、フルHD/240fps、4K/120fps、ウルトラワイド解像度はそれぞれ一部のゲームだけが対応。どのゲームでも利用できるわけではない点は覚えておきたい。
プレイするまでの流れを紹介。専用アプリで手軽に使える

ここからは、実際にGeForce Nowでゲームをプレイするまでの手順を紹介しよう。ここではNVIDIAアカウントでUltimateメンバーシップに加入した場合とする。
なお、支払い方法はGoogle Pay、PayPal、デビット/クレジットカードが選択できた。

今回はWindows 11 Pro(23H2)環境でGeForce Now専用アプリを使用している。ハードウェアはCore i9-14900KとGeForce RTX 4080の組み合わせ。GeForce Nowと通常でプレイとの差を体感しやすいようにハイスペック構成にした。

実際のプレイではどうなのか。筆者の仕事場はケーブルテレビの下り600Mbps、上り90Mbpsのプランを利用している。
下りは実測でほとんどの時間帯で400~500Mbps出ているそこそこの高速回線だ。自分のインターネット回線がGeForce Nowに適しているかは、アプリの設定にある「ネットワークをテストする」を実行することで確認できる。

実際にApex Legends(フルHD/240fps設定)やCall of Duty Modern Warfare 3(4K/120fps/HDR設定)、サイバーパンク2077(4K/120fps/HDR設定)でプレイしてみた。反射神経の衰えを隠せない40代後半のおっさんゲーマーであることを差し引いても、ローカルでプレイするのと変わらない変わらない感覚だ。フレームロスやパケットロスが発生することもあるが、プレイ中に気になるレベルではない。

ちなみにゲームにおける画質設定はユーザーが自由に変更できるが、標準ではGeForce Nowでのプレイに適した設定が適用されているようだ。筆者がサイバーパンク2077で4K解像度かつ、プリセットの最上位設定である「レイトレーシング:オーバードライブ」に設定してプレイしようとしたところ、描画負荷が高すぎるのか何度やっても通信が途切れてしまった。基本的にはデフォルト設定でプレイするのがよさそうだ。
○Core i3のノートPCやAndroidタブレットでも快適プレイ

ほかのデバイスでも試してみた。ひとつはレノボのIdeaPad Slim 550iだ。14型のフルHD液晶(60Hz)でCPUはCore i3-1115G4、メモリはDDR4-3200が8GB、グラフィック機能はCPU内蔵のUHD Graphicsとゲームプレイには向かないビジネス向けのノートPCだ。ワイヤレス機能はIEEE 802.11ac/a/b/g/nといわゆるWi-Fi 5までとなる。

それでも、GeForce Nowをワイヤレス接続でまったく問題なくプレイできた。Core i3のノートPCでサイバーパンク2077でレイトレーシングを有効にして快適に遊べるには、ちょっと感動するレベルだ。

もう一つは、AndroidタブレットのXiaomi Pad 5だ。11型で2,560×1,600ドット(120Hz)の解像度、Snapdradon 860を搭載とスペックはそこそこ高い。ワイヤレス機能はIEEE 802.11ac/a/b/g/nとWi-Fi 5までだ。Android用のGeForce Nowを使ってプレイしたが、まったく問題なくプレイできた。

コントローラを別途用意したほうがもちろん快適だが、フォートナイトなどタッチ操作用のインタフェースを備えたゲームも一部ある。ちなみに、Xiaomi Pad 5では2,560×1,600ドットで120fpsの設定まで選べた。

クラウドで動作していることを忘れさせるUltimate

GeForce NowのUltimateは、DLSS 3.5、高フレームレート描画、VRRやHDRにも対応とクラウドゲーミングだからとゲームの快適さや表現で妥協が必要な部分がほとんどない。高速な回線さえあれば、描画負荷が高く、ハイスペックなゲーミングPCを求めるサイバーパンク2077やドラゴンズドグマ2といった重量級ゲームをデバイスを選ばず楽しめる。ビジネス向けのノートPCでも遊べるのは素晴らしいことだ。

その一方で、Ultimateは月額3,580円と決して安くはない価格だ。RTX 4080サーバーを使えるということを考えると仕方のない部分はあるが、これでプレイできるゲームは自分が所有しているものに限られる。Steamなどで購入したはいいが放置している、いわゆる“積みゲー”が大量にある人がそれを解消すべく、どのデバイスでもプレイできる環境を手に入れたい……というニーズにもっともマッチするのではないだろうか。

ともあれ、回線速度さえ十分なら驚くほど快適にプレイできるのは間違いない。1日だけのプランもあるので、気になった人は気軽に試してみるとよいだろう。