弁護士ドットコムは5月1日、法曹界の性別による格差(ジェンダーギャップ)についての調査結果を発表した。調査は2024年4月21日~4月25日、弁護士ドットコムの弁護士会員400名(男性258名、女性141名、その他1名)を対象に行われた。

○約6割が法曹界で性別による格差を実感、女性弁護士では約8割

女性初の裁判官・三淵嘉子さんがモデルとなったドラマが始まり、1カ月が経った。男女不平等があたり前だった時代に、主人公が仲間の女性たちと共に法律を学び成長する姿が描かれており、弁護士界でも話題になっているという。今回同社では、ドラマにちなみ、法曹界のジェンダーギャップについての調査を実施した。

法曹界で性別による格差(ジェンダーギャップ)を感じることはあるかを尋ねたところ、「よくある」が18.8%、「ときどきある」が38.0%と、約6割が格差を実感していることがわかった。一方、「あまりない」「全くない」は29.3%と3割未満にとどまった。

男女別で見ると、「よくある」「ときどきある」と回答した男性が45.4%に対し、女性が78.0%と1.7倍にのぼった。
女性の意見からは「男性高齢弁護士から『女は怒るべきではない』と言われた」「飲み会の際、何気なくお酌担当にされる」など旧態依然とした実情も見えてくる。

一方で、男性からは「社外取締役の需要が増えており、女性だから採用される場面も多い」「(司法試験の合格者比率は7:3なのに)検察官の説明会で50%女性登用を目指すと機会の平等という意識の欠如にドン引きした」など、女性登用推進の動きが過度だと感じている意見もみられた。

○「同業者関係」と「報酬」における格差が男女間で20ポイント超

法曹界でジェンダーギャップを感じる人に、実際に格差を感じる場面を尋ねたところ、「依頼者との関係」が61.7%と最も多く、女性弁護士と男性弁護士で依頼者の態度が違うなど、一般の人からはいまだ弁護士=男性と捉えられている実態が見えてくる。次いで、「生活面(育児・介護など)や体力面に関すること」が59.5%、「採用・就職時の扱い」が40.1%、「弁護団や弁護士仲間など同業者との関係」が33.0%となった。

「依頼者は男性の方が威厳があるように捉える」「産後の復帰予定を伝えたら男性弁護士から『0歳から保育園に入れるなんて可哀そうだね』と言われた」「『女性は出産や育児で辞めるから採用したくない』と何度も言われた」「働きながら育児は難しい。解雇された友人もいた」など複数の女性弁護士の経験談からは、悔しい思いが浮かんでくる。


男女別で最も差が大きかったのは、「弁護団や弁護士仲間など同業者との関係」。男性が21.4%に対して女性が45.5%と24.1ポイントの開きがあった。次いで、差が大きかったのは、「報酬・給与面に関すること」。男性が11.1%に対して、女性が32.7%で、こちらも21.6ポイントの差が見えた。

女性からは「子どもの急病により委員から外された」「(報酬の高い)企業との顧問契約が結びにくい」「若いと中小企業の代表者からからナメられる」などの声が複数あがっている。一方で、男性からは弁護士同士の話や報酬について、ジェンダーギャップを理由にした不満の声は少なく、男女で認識の差があるようだ。


男女差が大きくなかったものとして、採用については、男性からもギャップによる不利益を訴える声があった。特に「検察官採用は明らかに女性が優遇されていた」「クオーター制度として女性会員を役職に就ける」などで、女性登用が数字ありきになっているとして、抵抗感を示す声も上がっている。

自由回答で、ジェンダーギャップを感じた具体的な場面について聞いたところ、「依頼者や相手方から若い女の子なのに偉いねと言われる(1年目)、弁護士の先輩からいくつ? 彼氏いる?などと聞かれる」(女性)、「男性依頼者がストーカー化しないよう無駄に気を遣う、女性の意見が必要などと委員会に引っ張りこまれる、など、いっぱいあります」(女性)、「裁判官(相手方代理人)は女性だからハズレた、女性には大局観がないなどの発言が常にある」(女性)、「裁判官に任官したが、その際、男性と同じ成績だったら間違いなく男性をとる、と明確に民裁教官に言われた。弁護士になって、相手方の代理人であるベテラン弁護士(男性)から『この女弁護士が!』と言われた」(女性)、「常日頃から上司が会議で『女性弁護士は力仕事(破産管財人を含む荒っぽい交渉)ではなく、銃後の守りをすべきだ』と繰り返していました」(女性)などの声が寄せられた。