○正々堂々の腰掛け銀
振り駒が行われた本局は先手番を得た郷田九段の誘導で角換わり腰掛け銀へ。4筋の位を取って持久戦を目指したのは趣向で、戦いが長引けば相手の駒組みに制約を与えつつ自陣の広さを主張することができる見通しです。対する後手の永瀬九段はこれにすぐさま反発しました。
4筋の歩をぶつけて銀を繰り出したのは部分的に定跡化された反撃の手法。永瀬九段はさらに差し出された歩を銀で食いちぎって4筋の勢力を逆転させます。
○手筋は幻に
受けの時間が続く郷田九段ですが辛抱強く指して決め手を与えません。自陣にベタっと金を打って飛車を捕獲したのは実戦的な好手。手にした飛車を敵陣に打ち込んで首尾よく攻め合いに持ち込むことに成功しました。互角の終盤戦の入り口に分岐点が待ち受けます。
永瀬九段が二枚角の威力で先手陣に狙いを定めた局面がそのポイント。
実戦で郷田九段が選んだのは端の香車を補充して駒得を主張する一手。これを緩手と見た永瀬九段はようやく反撃に出ます。
○永瀬九段が攻め切る
角切りで二枚換えを実現した永瀬九段は息もつかせぬ猛攻でリードを広げます。2筋に香を打って先手の飛車の働きを止めたのが攻防の決め手。
勝った永瀬九段はこれでベスト8に進出、次戦で菅井竜也八段と顔を合わせます。
水留啓(将棋情報局)